猫の室内飼い 室内猫 が喜ぶ家づくり 一級建築士が推奨するペット共棲住宅とは
2025年05月27日
猫と共に暮らす住宅を考える際、最も大切なのは「猫の習性」を正しく理解することです。
インターネット上では猫の飼い方に関する情報があふれていますが、住環境との関係性については断片的な記述にとどまることが多く、科学的な根拠に基づいた住宅設計はまだ十分に普及していません。
今回は猫の行動特性を建築的にどう活かすかを考え、住宅設計のポイントをまとめました。
本ブログが、愛猫との毎日をより快適に、そして安全に過ごすきっかけになれば幸いです。
※今回のブログは一頭飼いを前提とした住宅設計を中心に記載していますが、多頭飼いの視点も適宜盛り込んでいます。必要に応じて、目を通していただけたらと思います。
※犬に関しては下記のURLで解説していますので、そちらをぜひ参考にしていただけたらと思います。
https://nojima-k.jp/staff-blog/post-16306/
目次
0.猫の習性を理解することが家づくりの第一歩
0-1.上下運動が好き、狭くて静かな場所を好む
猫は平面移動よりも「上下運動」を好む動物です。
これは本能的に高所を縄張りや休息場所として使う習性によるものです。
キャットタワーやキャットウォークといった設備は、この上下運動を実現するために有効ですが、住まい全体に「登る・見渡す・逃げる」という行動が自然にできる構造を取り入れることが理想的です。
猫は「狭く」「暗く」「静かな」空間を好みます。
これは敵から身を隠し、安心して休める環境を求める本能からくるもので、開放的でにぎやかな空間よりも、壁に囲まれた隠れ家のようなスペースの方が落ち着く傾向があります。
当社のペット共棲住宅の展示場でも、この習性をふまえ、スキップフロアやカウンターを利用して、猫がくつろげる「隠れスペース」を随所に設けています。飼い主と過ごす時間と、ひとりで落ち着ける時間の両方を確保できる間取りが、猫にとって理想的な環境です。

猫の習性を知る事が共棲の第一歩
0-2.多頭飼いを前提にした空間設計の重要性
猫は単独行動を好む反面、家庭内で多頭飼いをされるケースも非常に多いです。
特に2匹以上の猫を迎えるご家庭では、上下関係などによる「逃げ場」の設計が重要となります。
多頭飼いの時に猫同士がストレスなく過ごすには、立体的な空間が欠かせません。
カウンターや梁の上、棚の隅といった高低差のある通路を複数設けることで、猫同士が適度な距離感を保ち、ストレスを軽減することができます。
当社モデルハウスでは、あえてキャットウォークのカウンターを多く設けたり、ニッチスペースなど猫の逃げ場を確保しており、将来的な増匹にも対応しやすい構造としています。
トイレの数も重要な要素です。
「猫の数+1個以上のトイレ」を準備することが理想的とされており、そのためには最初からトイレスペースを確保した間取り計画が欠かせません。
またトイレスペースを準備することは、換気計画も同時にする必要があり、家づくりの際に考えておきたいことになります。
1匹の猫に最適化した設計が悪いわけではありませんが、将来を見越して空間の余裕を持たせておくことが、飼い主にも猫にも優しい選択になります。
1. 室内での安全性と快適性
猫はもともと野生では単独で生活し、上下の移動を通じて行動範囲を確保してきた動物です。そのため、室内飼育が主流となった今でも、上下運動が自然にできる構造や、静かに落ち着けるスペースが非常に重要となります。
この章では、「猫の安全」と「猫の快適」を両立するために、設計上で意識しておきたいポイントを具体的にご紹介します。
実際に展示場で採用した実例を交えながら解説いたします。

猫に上下関係があっても住みやすい家を目指したいものです
1-1. キャットステップやキャットウォークの配置方法
キャットステップやキャットウォークは、猫が自由に上下運動を行えるだけでなく、ストレスの発散や運動不足解消にもつながります。
しかしただ取り付ければ良いわけではなく、重要なのは「動線」と「回避経路」の確保です。
特に多頭飼いの場合は1本道のような通路ではなく、すれ違える幅や迂回できる配置が求められます。当社の展示場では、ステップの間隔や高さ、素材の踏み心地にもこだわり、猫が一方通行にならずに移動できる設計としています。
壁面に後付けできるキャットステップも、柱や構造壁の位置を最初から想定することで、強度のある取り付けが可能です。こうした設計の工夫が、後悔のない猫との住まいづくりには不可欠です。
またキャットステップは先付にしてしまうと古くなったり模様替えをしたい時に交換しにくいデメリットがあります。そのためこのような後々に交換が必要なものは、後付けできるように準備しておく方が望ましいと言えます。
それとガラスの様なキャットウォークも、たまに雑誌などで見かけます。これは下から見たら、肉球が見えると好きな人には好きな作りです。
しかしこの透明なキャットウォークは猫が不安になるもので、あまりお勧めできないと獣医師の先生より指摘がありました。どうしても作りたいのであれば、ほんの一部にしておいたり、二つある橋の一つは透明なものにするなどの配慮が必要かもしれません。

猫だけの特別な場所
1-2.柱や手すりの素材と爪とぎ対策
猫は本能的に「爪とぎ」を行いますが、これは単なるストレス発散だけではなく、縄張りマーキングや古い爪の除去という役割も担っています。
そのため、爪とぎは完全にやめさせるのではなく、「して良い場所」「してはいけない場所」を明確に分ける設計が大切です。
当社の展示場では、2階の柱に麻ロープを巻いて、意図的に爪とぎ可能なスペースを設けています。場所が特定されるので、家具や壁を守る効果もあります。
一方で、手すりや壁紙などには傷が付きにくい素材を使用し、「やってほしくない場所」の保護も同時に行っています。このように「許容する場所」と「守るべき場所」をバランスよく設計することが、住宅の美観と猫の行動本能の両立につながります。
1-3.隠れられるスペースの確保
猫は本能的に「狭く・暗く・静かな場所」を好みます。これは外敵から身を守り、安心して休むための行動です。そのため家の中に意図的に「隠れられるスペース」を設けることは、精神的な安定につながります。
当社の展示場では、スキップフロア付近に猫専用スペースを確保しており、視線や音の刺激を最小限に抑える構造としています。
また多頭飼いの際にすれ違う場所としても有効な場所としても活躍します。
このような場所があると、来客時や掃除中、他のペットとの距離を取りたい時にも猫が安心して身を寄せられる空間になります。

多頭飼いは苦労がいっぱい
1-4.高低差のある空間設計
猫にとって「高低差があること」は、単なる遊びではなく「安心して生活するための必須条件」です。
高い位置に登ることで周囲を見渡し、自分の縄張りを把握しながらリラックスすることができるからです。
そのため、スキップフロアや段違いの棚、吹き抜けの梁など、垂直方向に移動できる工夫を盛り込むことが有効です。
展示場では、階段の踊り場や中2階を活用して、猫が好きなタイミングで高所に上がれるような工夫を取り入れています。
またベランダは視線の抜けと逃亡防止を考慮し、猫が登った場所から外を見られるよう工夫してあります。外の動くものを眺めることは猫にとって大きな楽しみのひとつであり、ストレス軽減にも効果的です。
2.生活動線と居住空間の分離
猫は非常に繊細で、自分のテリトリーを大切にする動物です。人間の生活空間と猫の居住空間が混在していると、ストレスを感じたり、予期せぬトラブルが起きることもあります。そのため、家づくりにおいては「立ち入り可能な空間」と「制限する空間」を明確にし、生活動線と猫の居住空間を上手に分けることが重要です。
ここでは、具体的な建具の工夫や間取り上の設計配慮をご紹介します。
2-1.立ち入り制限をする部屋とは
猫が立ち入ってほしくない場所の代表例が、キッチンやサンルームです。
キッチンには誤食や火傷、刃物などの危険が多く潜み、またサンルームでは衣服に毛が付着してしまうこと、洗剤など猫にとって有害なものの誤飲などが懸念されます。
2-2.侵入防止と建具の工夫
猫の中には、ドアノブにジャンプして前足で開けてしまう子もいます。とくにレバー式の取手は“押して回す”動作がしやすいため、意外にも猫の力で開けられてしまうことがあります。
展示場では猫や犬でも開けられにくい「握り玉タイプ」のドアノブを、立ち入り禁止エリアに採用しています。
ドアノブ一つに至るまで配慮することが、快適で安心できる猫との暮らしに直結します。
ドアの種類も「引き戸」か「開き戸」かで利便性が変わるため、通りやすさや安全性、将来の介護動線も見越して建具を選ぶことが重要です。
もちろん入ってい良い部屋などには、ペット用のくぐり戸を付けています。
今回はパナソニックの建具を使用していますが、ペットのくぐり戸を簡単に外せる特徴があります。
これは「ここは通れる場所」であると猫に認知をしてもらうまでくぐり戸を外しておき、その後「くぐり戸を設置」することができる優れものです。

デザイン性も高く使い勝手も良い建具 パナソニック製
2-3.トイレ設置数と配置計画 「猫の数+1」のルール
猫は非常にきれい好きな動物であり、トイレに関しては「数」と「場所」に強いこだわりを持っています。
一般的に推奨されているのが「猫の数+1」のルール。たとえば2匹の猫を飼っている場合、最低でも3ヶ所にトイレを設けるのが理想です。
これは「縄張り意識」や「相性の違い」などによって、同じトイレを使いたがらない猫が多いためです。
また老猫になると、トイレを我慢できる時間も短くなるため、動線上に複数のトイレがあることが粗相の防止にもつながります。
展示場では猫の生活動線に自然に溶け込む場所にトイレスペースを設けており、将来的な頭数の増加も想定したレイアウトとしています。
またトイレ砂などの買い置き商品も必要になりますので、ウェルネスハウスの展示場ではそのような収納を十分に設けた間取りになっています。
2-4.来客時や他ペットとの分離
来客時や、犬など他のペットと共棲しているご家庭では、「一時的に猫を隔離したい」という場面が多々あります。
そのためには、猫の生活スペースを複数に分け、必要に応じて仕切れる構造が望ましいです。

猫と犬は、常に仲良く生活できるとは限りません
2-5.何にでも飛び乗ってしまう習性
猫は人間から見たら、信じられない箇所に飛び乗ろうとジャンプすることがあります。
例えばエアコンの上とか、天井からぶら下がっている照明とかです。
このような場所は、猫の荷重に支える事を想定していないので、落下したり感電したりする可能性があります。
そのためそもそもでそこに飛び移れないようにすること(エアコンと天井の隙間をほぼ無くす・照明をダウンライトにする等)が求められる場合があります。
3.清潔を保つ素材と構造
猫と室内で暮らすうえで、常に気を配りたいのが「清潔さの維持」です。とくに猫は嘔吐(吐き戻し)や粗相をすることが少なくないため、住宅の設計や素材選びには衛生面での配慮が欠かせません。
猫との暮らしにおいて「掃除がしやすく」「汚れが溜まりにくい」家づくりの工夫をご紹介します。
3-1. 吐き戻しや粗相対策としてのカウンター・壁構造
猫はグルーミングで毛を飲み込む習性があるため、毛玉を吐く“吐き戻し”が日常的に起こります。その際、家具の裏や壁との隙間に嘔吐物が入り込むと掃除が困難になり、不衛生な環境を招く恐れがあります。
またコンセント周りで嘔吐してしまうと、感電などの可能性も出てしまいます。
当社の展示場では、一般的な住宅とは異なり棚板や巾木の取り付け方にひと手間を加えています。
一般的な施工では「カウンターを先に設置し、その上から壁材を貼る」ため、どうしてもカウンターと壁の間に隙間が生じやすくなります。
しかし当社の展示場では「壁を先に仕上げた後にカウンターを金具で固定」する方式を採用しています。これは仮に上で猫が嘔吐しても、液体がふき取る事ができない裏側まで入り込むことなく、サッと拭き取れる構造になっています。
これは見た目には分かりづらい工夫ですが、愛玩動物と長く暮らすうえでは大きな差になると確信しています。

ふき取れない場所に液体が侵入するとカビなどの原因にもつながります
3-2.掃除しやすい床材・隙間がない設計
猫が暮らす空間では、床材選びも重要なポイントです。特に多頭飼いになると、粗相や吐き戻しの頻度が上がる傾向があるため、汚れても清掃しやすい素材と構造が求められます。
当社の展示場では、ペット対応のクッションフロアや、滑りにくいタイルカーペット(カットパイル型)を採用しています。
特にタイルカーペットは万が一の汚れにも対応しやすく、部分的に交換・洗浄が可能なため、日々の掃除の負担を大幅に軽減します。
壁と床の取り合い(接合部)に関しては、汚れが入り込まないように床材を立ち上げて巻き上げるドッグランと同様の仕上げを取り入れています。これにより、猫が粗相をしても液体が壁内部へ侵入する心配がなく、カビや悪臭の発生を防ぎます。
3-3.換気計画と排気口の位置配慮
猫は嗅覚が鋭く、空気のよどみや匂いの変化にも敏感で、換気は床面近くからの排気が理想とされます。弊社では、床面に近い位置に排気口を設けたSUMIKAシステム(オプション工事)や、家じゅうの空気を動かすAIR LOOP SYSTEMを導入することで、猫にとって最も空気環境が悪化しやすい床付近の空気を効率的に排出します。
AIR LOOP SYSTEMは、室内に風を生じさせることなく空気を循環させるため、猫の被毛を必要以上に舞い上げず、毛の飛散やハウスダストの再浮遊を抑えます。音や風を嫌う猫にとってもストレスが少なく、室内の空気環境を快適に保つことができます。
4.外の景色を眺められる空間の演出
猫にとって「外を眺める時間」は、狩猟本能を刺激される大切な行動です。室内で飼う場合でも、外の景色を眺められる場所があることで、ストレスを軽減し、充実した室内生活につながります。ここでは、猫の“観察好き”な特性を活かすために、住宅設計で工夫したポイントをご紹介します。

高窓は猫の好奇心を満足させます
4-1.窓まわりの設計と動線
猫が外を眺めるために最も利用するのが「窓際」です。
ペット共棲住宅の展示場では、自然に「ビューポイント」へアクセスできるよう設計しています。
窓まわりの安全性にも配慮し、猫が飛び乗っても落ちないよう格子入りのベランダや、ペット用網戸などを採用しています。
また猫のプライベートスペースを保ちつつ、猫が見たいときだけ外を眺められるようにするなど、空間ごとにメリハリをつけた設計も特徴の一つです。
4-2.ベランダや高窓で猫が満足する理由
猫は本来、木に登って周囲を観察する生き物です。高所からの見晴らしは安心感にもつながりますし、縄張り意識を満たすことにも役立ちます。
当社の展示場では、ベランダの腰壁を高く設定し、転落防止のために目隠し格子を設置しています。これにより、猫が安全に腰掛けて外の景色を眺めることが可能です。
また展示場には、キャットウォークを使わないと行けない高窓を複数設置しています。
高窓も猫にとって魅力的な存在です。陽射しを取り込みつつ、外の鳥や木々を眺められる高窓は、長時間の“見張りタイム”に最適で、猫の精神的な満足度を高めてくれます。
4-3.日光浴できる場所の確保
猫にとって日光浴は、体温調整だけでなく、ストレスの軽減や骨の健康維持にも効果があるとされています。そのため、日当たりの良い窓辺やベランダに“猫がゆっくりくつろげるスペース”を確保することが重要です。
あとはカーテンを使わなくても大丈夫な間取りにしておくことも、地味ではありますが結構重要です。
そもそもでカーテンがある事で問題行動が発生しやすいですし、猫が行きたいところの邪魔をすることもあります。
しかし人間としては目線を遮る事は重要ですし、明るさも重要です。
外部からの目線カットと、明るさの確保、カーテンを使わない間取りを組み合わせる事は、猫が喜ぶ家づくりの大事なポイントといえそうです。
5.災害時の備えと在宅避難の重要性
地震や水害、停電などの災害が起きたとき、人間と同じように、猫も大きなストレスを抱えることになります。
そのうえ猫は警戒心が強く、環境が急変すると脱走やパニック行動を起こしやすい動物です。
飼い主と猫が安心して避難生活を送るために、「在宅避難ができる家づくり」のことを知っていただきたいと思います。

猫の避難は困難を極めます
5-1.猫は脱走後、再会が難しい現実
猫が地震などでパニック状態に陥ると、わずかな隙間からでも脱走してしまう可能性があります。
そして一度外に出てしまうと、猫は「見知らぬ環境では身を潜めて動かなくなる」という習性があるため、保護や再会が極めて困難になります。
猫は名前を呼んでも反応しにくいため、犬のように発見・保護の可能性が高いとは言えません。
それと普段からクレートで寝ていればまだ一緒に避難できますが、ほとんどはクレートには入ってくれず、避難すらできません。もちろん車中泊などもかなりの困難を伴います。
こうした特性から、そもそも避難所ではなく自宅で避難生活を送れるようにしておくことが重要です。言い換えると、在宅避難を前提に住宅を設計することが、猫と暮らす家庭には必要不可欠です。
5-2.収納計画(フードや砂の備蓄)と小屋裏利用
在宅避難を成立させるためには、一定期間分のフード・水・猫砂・時には薬などの備蓄が欠かせません。
特に猫砂は「代用品がきかない物資」であり、救援物資には含まれないものなので、2週間程度の余裕を持った備蓄を心がけたいところです。
トイレの環境については、少し砂の種類が変わってしまうだけでも、それまで問題なくトイレで排泄ができていた猫も排泄が困難になり、膀胱炎や腎臓病などの原因となってしまうことがあります。
フードも代用が効かない可能性(アレルギーもちで支給のフードが食べられない、しょくにこだわりを持つ子が多いので配給のフードがあっても食べられないことも)その子の食べられる、好みのフードをストックしておきたいところです。
特に水が十分に確保できない環境下が想定されるので、ドライフードより水分を含んだパウチや缶詰タイプの備蓄が望ましいと言えます。
当社の住宅では、小屋裏収納や階段下収納などに備蓄専用の収納スペースを確保してあります。
こうした空間には、ペットフードや猫砂のほか、飼い主自身の飲料水や非常食、懐中電灯などの防災グッズもまとめて収納できるようにしています。
5-3.猫と避難するための住まいの備えと心構え
在宅避難を見据えた住宅づくりでは、「耐震性」や「断熱・気密性」「電源の確保」など、家そのものが災害に強いことが大前提となります。
具体的には、以下のような備えが推奨されます:
・地震対策としての制振装置の採用や、耐震等級2や3の取得
・停電時にも安心な蓄電池やV2Hの導入
・断水に備えた生活用水の確保(エコキュートの様な貯湯式給湯器などの活用)
・在宅避難を支える収納動線と備蓄管理のしやすさ

エコキュートは非常時に水が取り出せます
「備蓄しておけば安心」ではなく、「猫と一緒に避難するにはどうしたらよいか」という視点を持つことで、日常から防災の準備が始まります。
それが野島建設が目指す、人と猫との共棲住宅の在り方です。
6.猫と犬、それぞれの“遊び方”の違い
6-1.なぜドッグランはあって キャットランはないのか
「ドッグラン」は野島建設のDogRunWellnessを含め全国各地にあり、犬を飼っている方にはおなじみの設備です。広いスペースで他の犬と一緒に走り回ったり、運動不足を解消したりする場所として大変重宝されています。
では、「キャットラン」が無いのはなぜでしょうか?
理由は、猫の遊び方にあります。
猫は単独行動を好み、群れで遊ぶ習性がない動物です。また、犬のように「走り回る」よりも、「狭いところに隠れる」「高いところを渡る」「静かに観察する」など、縦の運動や自分の世界を大切にする傾向があります。
そのため、開けた空間で自由に走り回ることを前提としたドッグランのような施設は、猫にとってはむしろストレスとなる可能性があるのです。
6-2.猫カフェはあるのに 犬カフェを見かけない理由
「猫カフェ」は今や全国どこでも見かけるほど人気です。
ではなぜ“犬カフェ”はそれほど一般的ではないのでしょうか?
これは、動物の気質と人との適度な距離感の違いによるものです。
猫は基本的に自分のタイミングで近づいてきますし、人間に対して「見て楽しむ」存在でもあります。
一方、犬は人間と積極的に関わり、スキンシップを求める性格です。
つまり、犬カフェのような空間では、犬の行動を完全に管理しないとトラブルが起きやすく、運営が難しいのです。
特に見知らぬ犬同士、もしくは人に対して、興奮や威嚇、場合によっては噛みつきといった問題が生じるリスクがあるため、制限をかけずに自由に遊ばせるスタイルは難易度が高いのが現実です。
だからこそ、猫には「静かに観察できる空間」、犬には「運動と発散ができる場所」と、種類によって適した空間設計が必要になります。
7.AIR LOOP SYSTEMが支える猫との生活

動物にも嬉しい機能がいっぱいのAIR LOOP SYSTEM
7-1.間取りの自由度を広げる空調システム
猫との暮らしでは、吹き抜けやスキップフロアといった高低差のある空間が非常に相性が良く、上下運動を好む猫にとって理想的な間取りになります。一方で、従来の空調設備では、こうした空間は部屋ごとの温度差が発生しやすく、快適性に課題がありました。
AIR LOOP SYSTEMは、部屋間や上下階の温度差をなくし、家全体を均一な室温で包むことが可能です。
これにより猫の動きや習性を妨げることなく、デザイン性や機能性を両立させた間取りが実現できます。
7-2.匂いがこもらない、快適な空気の流れ
猫トイレやフードの匂いは、人間以上に猫自身にも大きなストレスを与えます。AIR LOOP SYSTEMは、室内に風を発生させずに空気を上下・横方向に緩やかに移動させ、特定の場所に匂いが溜まる「吹き溜まり」を作りません。
これにより猫が長時間過ごす空間の空気を常に清潔に保ち、人も動物も快適な室内環境を実現します。
7-3.無風暖房が叶える、乾燥しにくい冬の室内
エアコンなどの風が出る暖房機器は、猫にとって皮膚や被毛の乾燥を引き起こす原因となることがあります。AIR LOOP SYSTEMは、風を出さずに床・壁・天井から放射される熱を利用するため、猫や人の乾燥を最小限に抑えます。
特に皮膚が敏感なシニア猫にとって、この“無風暖房”は理想的な暖房手段と言えます。
体調管理が難しい季節も、穏やかで安心できる空気に包まれた環境を保つことが可能です。
8.最後に|共に生きる時間を、より豊かに
猫と暮らすということは、ただ可愛がるだけでなく、一緒に生きる覚悟を持つことでもあります。
その覚悟の中には、「どんな住まいで」「どんな毎日を」「どんな老いを迎えるか」といった、人生と同じくらい深い問いが含まれています。
それと人間にとって快適な家が、必ずしも猫にとっても快適とは限りません。また猫だけが住みやすく、人間は二の次なのも考え物です。
だからこそ、猫の特性や習性を理解し、科学的な根拠に基づいて設計された住まいが必要なのです。
このブログでは、その第一歩となる知識とアイデアをお伝えしました。
猫と人が同じ空間で、互いに無理なく、心地よく暮らしていけること。
それが「ペット共棲住宅」の本当の価値であり、私たちが設計で目指しているゴールです。
8-1.執筆者プロフィール
野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員
富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。
投稿日 2025年5月29日
~温かい人が集まる暖かい家 NOJIMAのゼロ・ハウス~
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