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スタッフブログ 愛犬も快適に過ごせる家とは 一級建築士と獣医師が提案する犬が喜ぶ家づくり

犬が家族同様に住宅の中で過ごすようになったのは近年のことであり、根拠がしっかりした情報は少なく、ワンちゃん好きの主観によるものが多いのが現状です。

文章は一級建築士であり20年の住宅関係のキャリアがある、野島建設の社長が書くブログになります。

また今回のブログに関しては、東京農業大学教授であり獣医師の博士でもあります、増田宏司先生に監修をしてもらった上で掲載をしています。

増田先生は犬に関する多数の出版もされており、今回のブログにも多くのご意見を頂きました。本当にありがとうございます。

このブログが愛犬と共に過ごすお家時間が、少しでも有意義になるようになれば幸いです。

  • このブログは基本的に一頭飼いをイメージして記載しています。
  • 猫の完全室内飼育などは別ブログを準備します。後日掲載予定ですので、そちらをご参照ください

 

目次

0.犬のライフサイクルを考える

住宅の中で犬と共に生活する上で、最も気を付けるべきことは愛犬との楽しい生活だけでなく、老いを含めたライフサイクルです。

ライフサイクルについて考えることは、当たり前のように感じられるかもしれません。

しかし実際にそこまで考えられて家づくりや愛犬との生活をイメージしている場合は少ないはずです。

その理由の一つとして挙げられるのは、多くの室内犬のネット情報などは、ほぼ成犬のことを想定して書かれています。

つまり幼犬から老犬の時まで考慮した資料はほぼありませんし、ましてや住宅の間取り設計はもっとありません。

犬の寿命は大体10~15年と、一般的に住宅を建て替えたり改修する時期より短く、最後まで愛犬を看取ることまで考え、間取りや設備を整えることはかなり重要と言えます。

犬と住宅と人間の寿命イメージ

犬と住宅と人間の寿命イメージ

0-1.犬の寿命

当たり前ですが犬も人間と同じように、幼少期があり、成犬になり、老犬になっていきます。

大型犬や小型犬のように身体の大小や、住宅の外や中で飼育しているかなどで寿命は変化しますが、一般的には図のようなイメージとなります。これは犬の年齢(図の左側)に対して、人間なら何歳くらいなのか(図の中央・右側)に置き換えて表記してある資料になります。

犬の年齢を人間に置き換えたイメージ図

犬の年齢を人間に置き換えたイメージ図

これを踏まえ、犬の年齢1.5歳から2歳までを幼犬期、2歳から6歳位(小・中型犬は8歳)までを成犬期、それより上を老犬期として説明をさせていただきます。

1.幼犬期に気にしたい家のこと

社会性を身に着けながら、家族の一員として一緒に生活ができるようにしつけをする事が、幼犬期に最も重要なことになります。

そのあたりを犬本来が備えた特性を活用した間取りや家具配置等をすると、効果的なしつけが可能になってきます。

間取り以外にも、粗相などの対応の工夫をしておくことで、飼い主も犬もストレスがたまりにくい生活ができるはずです。

1-1.トイレトレーニングと望ましい室内環境

犬のトイレトレーニングに気にしたい点は2つあり、

① 犬にとって快適な場所かどうか

② 飼い主が掃除しやすい環境かどうか

以上が重要になってきます。

 

まず犬にとって快適なトイレの場所とは、犬にとって背面が壁(犬の特性上、安心するため)のような場所になります。

以上のような条件に、一般的に犬が気に入る場所(狭い・暗い・静か)の横にトイレがあると様々な面で便利です。

住宅の場合は家の中心部付近(窓から遠い場所)が便利な場所になる事が多いはずです。

例えば図のような作りにしておき、扉が外せるタイプにしておけば、掃除もしやすく、犬も安心して暮らすことができます。

家具で解決する犬のトイレや休憩場所のイメージ図

家具で解決する犬のトイレや休憩場所のイメージ図

1-2.粗相を室内でした時の対策

しかし場所を整えても、トイレを思い通りにしてくれるとは限りません。そのためトイレが失敗した時に備えておく必要があります。

粗相があったときに問題になりやすいのは、尿が床の隙間や壁の隙間に入っていくことになります。

このような隙間に侵入してしまうと、ふき取る事も出来ず、悪臭の原因にもなりますしカビなどの健康被害も考えられます。

 

このような場合最も良い条件は「ペット専用のクッションフロア」を使用し、床だけでなく壁にも一部立ち上げて施工すると良いでしょう。

これをすることで一般的な床や壁の施工と異なり、隙間が発生しないので万が一の時にも安心できます。

 

簡易的に粗相の問題をクリアするには、クッションフロアなどをホームセンターなどで購入し、その上にトイレシートやクレートを置き、古くなったら交換という方法でも構いません。

とにかく尿が侵入してしまう隙間を作らないことが重要になってきます。

犬の粗相の対策イメージ図

犬の粗相の対策イメージ図

 

1頭飼いの場合はまだ目が届きやすいのですが、多頭飼いになるとさらにトイレトレーニングは難易度が上がります。

またどうしても犬だけで留守番をすることはあります。その際に心配しなくても良いように、粗相はあるものと思い、先々に準備しておく方が無難といえます。

1-3.入ってよい場所を理解しやすくする工夫

幼犬期の際に入ってよい場所と良くない場所を理解してもらうことも重要です。

最も避けたいことは、「昨日はOK、今日はNG」みたいな気分で使い分けをしたり、「パパはOKだけど、ママはNG」みたいに人によってルールが異なったりすることです。

 

犬を自宅に迎える前までに、誰でも入ってOKの場所と、人だけOKの場所を考えておくことが必要です。

そしてできる事ならパーテーションなどで物理的に区切りを準備しておく。

犬は緑と青は見わけがつくため、緑色等でラインをひくなどの工夫をしましょう。

 

犬に入ってほしくない場所としては下記の様な部屋があります。

・キッチンや食品庫

→犬が食べると健康に被害を及ぼすものや、刃物、やけどの恐れがあるため

・風呂場

→シャンプーなど誤飲すると危険。また浴槽に水があった場合も危険。

・和室

→畳をトイレと勘違いしやすく、粗相があっても完全に拭き取れないため。それ以外にも爪で畳が荒れることも考えられる。

・寝室

→多くの飼い主は犬と一緒に寝ているが、本来は衛生的な問題がある。どうしても寝室に入れたい場合は、クレートなどを準備し、飼い主より低い位置で寝かせることも可。

犬の場合寝ている場所の高さで、強い弱いを判断する場合があり、本来であれば人間より低い位置で犬を寝かせたほうが良い。

1-4.階段やスロープの設置について

犬と生活をする上でよく気になさることの一つが、階段についてです。

基本的に犬は段差が得意な動物ではありません。特に階段の登りより下りのほうが難しく、場合によって腰への負担や骨折などの不安も考えられます。

また幼犬は体が小さく、どうしても段差を登ることは容易ではありません。

そのため段差がある部分はスロープを備え、住宅内部はできる限り段差のないフラットなバリアフリー空間が望ましいといえます。

1-5.犬の好きな住環境を提供する

犬の特性上、狭くて暗くて静かな環境に身を置けるとゆっくり休むことができます。

最近は住宅が小さくなる傾向にあり、狭い場所であっても、そのような場所を用意することはどんどん難しくなってきています。

そのため新築の場合ではその部分まで考慮して図面を作成できれば、犬にとって気持ちの良い空間になります。

 

そのような空間が間取りなどで解消できない場合は、家具で解消するなどの方法もあります。

例えば先ほども掲載したような下図のような家具を作り、下は犬が使うスペースで、上の収納部分は飼い主が様々なものを保管しておけるスペースがあればそれだけで満足できる環境が作り出せます。

家具で解決する犬のトイレや休憩場所のイメージ図

家具で解決する犬のトイレや休憩場所のイメージ図

2.成犬期に気にしたい家のこと

成犬期に気にしなくてはいけないことは、体も大きくなり、体力も充実しているので、その部分のケアをしてあげる必要があります。

間取りで考えたい事としては、いかに動き回れるか。そしていかに安全にその状況を創れるかになります。

犬種ごとの特徴を上げてしまえばキリが無くなってしまいますので、小型犬や中型犬を中心に気にしたいことをここではお伝えをしたいと思います。

具体的な犬種の特徴に関しては、本やネットで数多く存在していますので、そちらをご覧いただければいいのかと思います。

2-1.体力発散させる場所を提供する

日本の住宅はどんどん縮小する傾向にあり、なおかつ廊下みたいなものが無くなっている現状もあり、体力が有り余っている成犬には物足りない作りになりやすいです。

また富山県のように雨や雪の心配が必要な場合は、もっと家の中を充実させる必要が出てきます。

 

間取りで工夫したい点は、ぐるぐる走り回れる環境を作り出せるかだと思います。

図に示したように、家の中だけでなく中庭まで上手に使えるようになるとバリエーションがでていいかもしれません。

中庭などで遊べるスペースがある場合には、窓が近くにある事も考えられるので、ひっかきに強いペット用網戸があるのでそれを採用する方が良いでしょう。

犬が室内であっても走り回れる間取りの例

犬が室内であっても走り回れる間取りの例

 

逆に体力が発散できない場合は、ゴミ箱をあさるなどの迷惑行為に走る可能性もあります。

そのような対策にもゴミ箱は見えない位置に組み込んでしまったり、フタがついていて簡単に開けれないものが望ましいと言えそうです。

2-2.室内犬に適した床材を選ぶ

床の素材はできる限り滑りにくいものが良いでしょう。

自分のお勧めは、カットパイル式のタイルカーペットです。

見た目は同じようなルーフパイル式のタイルカーペットも存在しますが、図のように爪が引っ掛かり歩きにくいので、カットパイル式のタイルカーペットを選んでください。

これはある程度のクッション性があるので関節にやさしい特徴があります。

また一枚一枚簡単に取り外せるので、何かあってもその部分だけ取り外し、洗ったり入れ替えたりできる点も魅力です。

新築でも採用できますし、リフォームでも採用できます。またDIYでもできるくらい簡単なものです。

特に幼犬期で話をしていた粗相の対策もしやすいのでお勧めです。

犬の爪が引っ掛かりにくい床材

犬の爪が引っ掛かりにくい床材

 

もちろんタイルカーペット以外にもペット用のクッションフロアや、ペット用のフローリング、タイルや石などもあります。

オススメとして、場所で商品を使い分けることが良いと自分は考えています。

リビングの一部にタイルや石などの固い材料があると、夏場の体温調整に一役買います。

また普段犬を入れない空間は、掃除のしやすいフローリングを採用し、万が一犬が入ってきても傷がつきにくくなるようにペット用にするなど、適材適所で使い分けが一番良いと思います。

2-3.敷地外への脱走の注意

一般的なアパートをイメージしてほしいのですが、玄関ドアを開けるとそこは柵のない外であることが一般的です。

このような状況で玄関ドアを開けると、犬が玄関ドアの隙間から脱走してしまう可能性があります。

そのため上図のような玄関ドアを開けても、外でも柵があるような状況が脱走防止に有効といえます。

犬が外へ脱走できない間取りの例

犬が外へ脱走できない間取りの例

2-4.ドアはペット用のドアを使用する

最近までペット用ドアは開きドアのタイプしか存在しませんでした。

それは扉の構造上それしかできなかったことがあります。

しかし2023年からPanasonicさんから引き戸でもペット用のドアが発売されました。

このペットドアの特徴はフラップ部分(犬や猫が出入りできる柔らかい素材部分)を取り外しできる点にあります。

Panasonicさんの建具 くぐり戸が外せる仕様になっている

Panasonicさんの建具 くぐり戸が外せる仕様

 

フラップ部分が外せることの利点は、「通れる場所である」と犬や猫が認知できる事です。

実際のところフラップを押して出入りができる犬や猫は半分近くしかいないという事を聞いたことがあります。

わざわざ設置したにもかかわらず、半分は使用してくれない状況になるそうです。

そこでフラップを外すことで、通れる場所であること認知し、そのあとにフラップを付ける2ステップにすることで格段に通れる率が上がるそうです。

とはいっても通れない場合もあるようなので、そのような場合は外しっぱななしというのも選択肢の一つかもしれません。

 

しかし当社のようにどこの部屋でも温度差が無く同一温度ならフラップは必要ないのですが、各部屋で温度が異なる場合(エアコンなど)は必須になります。

できる限りペット用のドアを使用した方が良いでしょう。

 

またドアの種類によっては、ドアノブに触れて開け方をマスターしてしまう動物もいます。

そのような場合に備え、ドアの開き方やドアノブの種類を握り玉などにするなど、使い分けるといいと思います。

2-5.シックハウスの犬版に注意

成犬期は一番活発な時期ですので、呼吸数も呼吸量も増えるため化学物質を体内に取り込みやすくなる時期になります。

特に犬は床に近い部分に鼻がありますので、人間よりもハウスダストや化学物質の影響を受けやすい状況にあると言えます。

それと人間には心地よい自然物質である木の香り(フィトンチッド等)でも、犬には有害な物質になる場合も存在します。

そのためシックハウスだけでなく自然物質を含めたトータルVOCという考えを採用したほうが、室内犬には望ましい環境をつくれます。

人と犬のハウスダストの量は同じ室内でも3倍違う

人と犬のハウスダストの量は同じ室内でも3倍違う

2-6.麻布大学獣医学部との産学連携

野島建設の場合は麻布大学獣医学部と産学協同で実際にモデルルームを作成し、測定しました。

特にペット共棲住宅に使用したい商品を中心にモデルルームを作成しましたが、検査した結果、人にも犬にも安全であることを確認しております。

化学物質測定風景 麻布大学との産学連携

化学物質測定風景 麻布大学との産学連携

2-7.床から排気する換気扇の使用

換気扇は図のように床面から遠い換気扇と、床面に近い換気扇の二つに分類されます。

床面はハウスダストもたまりやすいですし、汚れた空気は重たいものなので、その部分を積極的に排気してくれる換気扇が望ましいと言えます。

ただ床面に換気扇ダクトがあると、粗相をした場合や掃除の手間を考えてしまうと二の足を踏むと思います。

その場合は設置場所を工夫(犬の入れない場所を作り、そこに排気口を取り付ける等)するなどして設置するのが良いでしょう。

一般的な換気扇と床下排気の換気扇のイメージ図

一般的な換気扇と床下排気の換気扇のイメージ図

2-8.プライベートドッグランを作る際の注意点

近年設置が増えているプライベートドッグランですが、「柵の設置方法と高さ」「隣近所さんのご理解」などの注意点があります。

プライベートドッグランを作る際の最も悩ましいところは、柵の種類や設置場所です。

まず柵は縦長のタイプ(縦格子)がお勧めで、高さは犬種などにもよりますが1.2m~1.5mくらいあればよいでしょう。

素材は錆び防止でアルミなどを使用すると良いでしょう。

そして設置するときに注意が必要で、犬が土を掘って外に逃げられないように施工することが求められます。

またドッグランの仕上げが、人工芝みたいなものであったり、ウッドチップみたいなものであったり、土であったりするかと思いますが、家の近くに足を拭ける用の場所があるといいでしょう。

プライベートドッグランのフェンスの参考例

プライベートドッグランのフェンスの参考例

 

隣近所さんのご理解は言わずもがなかもしれませんが、意外と重要です。

今までその場所に生活している場合は、プライベートドッグランを作る予定まで話をして工事前に近隣挨拶をしておいた方が無難です。

逆に新しく土地を購入される場合は、近隣に家が隣接していないような土地が良いと言えます。

造成された土地の場合は、他の住宅が完成する前にドッグランまで作り上げるほうがいいかもしれません。

理由は自分が先行してドッグランを作っていると、近隣の土地を誰かが購入するときに、ドッグランがある事がわかれば、そのことを了承できない人はその場所を購入しない判断をする可能性を上げるためです。

3.成犬期にしたい老犬期への備え

いつか老いていく愛犬のために、成犬期の間にしておくことをまとめました。

3-1.老犬期を迎えるにあたっての家の準備

リフォーム工事や引っ越しをするなら、できる限り成犬期の時に完了をさせておきましょう。理由として

・慣れた環境が変化すること

・工事中の音

・見慣れない人の出入り

多くの状況がストレスになってしまいます。本来であれば犬を迎える前にそのことが完了してればいいですが、それができていない場合はできる限り成犬期に準備をしておくことが犬にとって良いと言えます。

また具体的な内容は下記の老犬期に気にすることにまとめていますので、そちらをご覧ください。

 

老犬期に新しいルールを覚えてもらうことは、不可能ではありませんがかなり大変です。

例えば成犬期は一緒に寝室で寝ていたのを、老犬になってから目の届きやすいリビングに寝床を移動させるとかは、犬にとってストレスです。

そのため老犬期になる将来を見越した間取りや、生活のスタイルを構築できる方が犬にとっては幸せですし、飼い主も余計なストレスを抱えずにすむでしょう。

4.老犬期に気にしたい家のこと

老いを判断するには人間と同じで、年齢で杓子定規に区切るものではなく、「あれ?今まで何か違う。」と感じる事が積み重なって「老い」と判断することが多いはずです。

最近は室内で共に過ごすことが増え、犬の寿命は延びる傾向にあります。そして寿命が延びると、老犬である時期も長くなります。

 

犬が年を重ねると、問題行動が増えることがあります。

それに対応をすることは重要ですが、人と同じで尊厳を損なう扱いは禁物です。

そして一緒にいてくれた家族に最後まで寄り添い続け、感謝をしながら最後まで自宅で看取る事ができるような配慮が飼い主には求められます。

 

老犬期に気にしたいことは「身体能力の低下」「病院に行く回数の増加」「粗相」が主な注意点になります。

4-1.運動能力の低下に備える

運動能力が低下したとしても、できる限り自分の足で生活をしてもらうことが重要です。

そのため住宅の場合では「階段よりもスロープ」を準備できるようにしたり、「段差のある空間よりも段差のないバリアフリー空間」のほうが望ましいといえます。

しかし現代の住宅は、そもそもで土地が狭く、住まい自体もコンパクトになっています。

そのためスロープなどを最初から計画できることが望ましいですが、簡易的なスロープをかけられるようにだけは準備をしておきたいものです。

4-2.病院に行く回数の増加

老犬期になると、体の調子が悪くなりやすく、病院に連れていく頻度も増えます。

その時の移動の流れを考え、抱っこなのか、カートなのかなどまで考えておき、実際に自分がその行動をしてみるとよいと思います。

今は難なくできる事と思っていても、10年15年後は飼い主も犬と共に老いていきますし、飼い主も何か心身に不調を抱えている可能性もゼロではありません。そのあたりまで考慮しておくとよいと思います。

4-3.目の不調への準備

老犬になってくると白内障のイメージがあると思いますが、視力の低下などを含めた目の不調が考えられます。

階段や玄関框のように段差がある場合は、緑色や青色のように犬でも境界線がはっきりとわかる色使いにすることが、落下防止に効果を発揮します。

犬は人間でいう黄色と青色とその範囲内の色以外は認識できないと言われているため、それらにも注意しながら色使いするとよいでしょう。

それ以外にも落下防止のためにゲートを付けるなども効果的になります。

将来的な準備にはなりますが、後々のための手配までしてある間取りが望ましいといえます。

4-4.睡眠時間を確保しやすい住環境の提供

老犬になると睡眠時間が長くなる傾向がありますので、寝床はできる限り静かな場所を確保してあげましょう。

特に刺激の多い場所(外の景色が見える・音が入り込みやすい大きな窓付近)を寝床にしない配慮が求められます。

また体温調節も若い時から見れば対応しにくくなりますので、エアコンの風が直接当たるとか、温度変化が激しいところは寝床として避けた方がよいといえます。

冬は弊社独自の暖房であるAIRLOOPシステムを使用すると、輻射熱を感じる事ができるだけでなく、風が発生しないので犬には良い暖房と言えると思います。

犬が嬉しい夏の休憩場所

犬が嬉しい夏の休憩場所

犬が嬉しい冬の休憩場所

犬が嬉しい冬の休憩場所

 

4-5.粗相への対策

老犬期に入ってくると、予期せぬ場所で粗相をする場合が出てきます。

住宅の場合粗相をすることで問題になるのは、コンセントと壁と床の取り合いの2か所が問題になります。

コンセントに水分が付着すると、コンセントを挿す際に感電したり、ショートしてみたり、ひどい場合には火災につながります。

これを防ぐには、コンセントにカバーを設置したり、コンセントそのものを床から90cm以上の高い場所に設置したりするなどの方法があります。

 

幼犬期にも記載しましたが、壁と床との取り合いに水分が入り込む問題は、一度水分が隙間に入り込むと、ふき取ることは困難です。

おむつをずっと履かせる方法もあるかもしれませんが、できる限り住宅の方を改修し、今まで通りに生活をさせてあげられる時間を増やす方が、みんなが幸せかと思います。

犬の粗相の対策イメージ図

犬の粗相の対策イメージ図

4-6.部屋にあると助かる認知症対策

老犬になって認知症のような状況になり、人間でいう徘徊をする場合もあります。

このような場合ゲージや柵を認知できないことがあり、柵などを犬が動かしたり倒したりすることがあります。

そのようなことが無いように、ゲージ付近にはフックを取り付けられるようにし、ゲージとフックをひもで結び、犬が押したとしても動かないようにゲージを固定する配慮をすることも時には必要です。

ゲージ固定できるようにフックを設置

ゲージ固定できるようにフックを設置

5.災害時への備え

2024年元日に能登の大震災があり、大きな被害が発生しました。

被害にあわれた方の1日にも早い復興をお祈り申し上げます。

最後に災害についてのお話をしたいと思います。

 

人も犬も災害は喜ばしいものではありませんし、ストレスは家にいる時と比べ明らかに増大します。

そして避難できる場所や避難の受け入れ方法も人だけの避難と比べてあきらかに限られますし、避難先の人すべてがペット関係に理解があるとは限りません。

多くの不利な条件を抱える災害について、少し説明をさせていただきたいと思います。

5-1.犬と一緒に過ごす人におすすめの避難方法

犬と過ごしている方が、災害が発生した時に取れる避難方法は、

①在宅避難

②近隣の避難所へ移動

③遠方に移住

④車中泊

これらがあります。

 

先に災害時の避難方法として最も良い避難方法をお伝えすると、在宅避難になります。その理由は

①避難所は全て人間のために準備され、ほぼ動物は受け入れてくれない

②避難所まで人間の物資以外にも、犬関係のものまで物資を運ばなくてはいけない

③避難所におられる方が、全ての犬に関して好意的ではない

④避難所は人間も犬もストレスがかかる

⑤避難所から逃亡してしまうことがある

まだほかの理由もありますが多くの問題があり、災害の場合はできる限り在宅避難が望ましいと言えます。

具体的に災害が発生した場合を想定して記載してみました。これを読んでいただければいかに避難をすることが大変かご理解いただけるかと思います。

5-2.災害が発生する前に準備すべきこと

そもそもで混合ワクチンや狂犬病のワクチンを接種していない場合は、避難先では受け入れてくれません。

災害時は犬と離れ離れになる可能性も十分あるので、マイクロチップを埋め込んでおく方が無難になります。

 

できる事なら犬と自分(家族)が一緒に写っている写真(どちらも正面を見ている)を撮っておくことも重要です。

離れ離れになって、実際にどこかで愛犬が保護をされていたとしても、自分の犬である証明ができないと引き渡しをしてくれないことが普通にあります。

そこで自分の愛犬である事を証明できるよう写真を撮っておき、できれば充電が切れたことも考えて携帯の中だけでなく写真に現像までしておいて避難用のバックに入れておければ完璧です。

 

富山県が作成している、動物同行避難所等運営マニュアルの別表2にも、準備しておくとよいものが記載されています。ぜひ参考にしていただきたいと思います。

思い出になるだけでなく、避難所でも活躍する可能性が写真にはあります。

写真は携帯の中だけではなく印刷がベスト

写真は携帯の中だけではなく印刷がベスト

5-2-1.犬と同伴できる避難先の確認

まず犬と一緒に避難できる、最寄りの避難先はどこなのか把握することが重要です。

調べると分かるのですが、そもそもで避難所に動物を連れて行っていいかどうかの表記がされていない場合がほとんどです。

そのような場合は役所に、「○○を飼育しているのですが、同行避難(または同伴避難)できる場所はありますでしょうか?」と問い合わせをあらかじめしておく方が良いでしょう。

そしてさらに踏み込んで、災害時にはどのような対応をする予定なのかまで確認すると安心できるはずです。

5-2-2.避難用の荷物をまとめておく

災害が発生した時にすぐに持ち出せる避難用の荷物を、ちゃんとまとめている方は少ないと思います。

人の場合ですらそれですから、犬などの動物に関してはもっと不可欠なことになります。

そもそもで動物が同行できる避難先は少なく、また設備も不十分であることが当たり前です。

そこに普段と違うストレスのかかる環境に身を置く愛犬を、守ってあげられるのは飼い主である家族しかいません。

5-2-3.避難所まで実際に歩いてみる

同行が認められた避難所まで、車や交通機関が使えないことを想定し実際に歩いたりしてみるとよいかと思います。

その時にはハザードマップなどもあると良いでしょう。

実際に避難所まで歩きながらハザードマップを見ることで、道が土砂崩れで通れないことが予想されたり、水害で遠回りを余儀なくされる可能性を発見できることもあります。

 

そして避難用荷物を実際に携帯し移動してみる事もお勧めです。

人の避難道具でも数キロ、犬用の避難道具も数キロ、そして靴が履けない愛犬まで抱っこすると想定するとこれも数キロ。これらの大荷物をかかえ速やかに避難できるでしょうか。

実際にそれが不可能と思われるのであれば、犬用のカートを準備するなり、何かあったときに手助けをしてくれる人や手段を準備しておくことが必要です。

 

車中泊になったとしても、荷物の出し入れを実際にしてみてその中で寝ることが本当にできるかを確認してみるのもお勧めです。

避難場所まで実際に歩いて確認することが大事

避難場所まで実際に歩いて確認することが大事

5-2-4.避難用の荷物に入れておきたい物

一般的に避難先に、動物用の設備が整っている場合はほぼありませんし、理解も無いと思ったほうが無難です。

そのためあらかじめまとめておいた方が良いものを下記にまとめてみましたので、一度参考にしていただけたらと思います。

 

水やフード(最低でも5日分は欲しい)

ペットの情報を記載したもの(犬と家族が一緒に写った写真を添付するのが望ましい)

いつものリードに加えて、新品のリード

おむつ(普段使っているサイズ かつ それよりも一回り小さなおむつ)

ラバーシューズ

食器

ガムテープ

トイレ関係のマナー用品

薬やおくすり手帳

上記の物をまとめて運搬できるリュック等

 

特に注意が必要なのはおむつのサイズです。

災害時にはストレスがかかる事や、食事が不十分なこともあり、痩せてしまう事が普通にあります。そのためいつものサイズのおむつを準備していると、サイズが合わなくなることがあります。

いつものサイズのおむつに、一回り小さなサイズのおむつがあれば何かあったときに助かります。

 

これ以外にも人間に必要なものも多数あります。ラジオや携帯を充電できる小さな太陽光パネルなども重宝するそうです。

5-2-5. 災害前にしておきたい事

災害時に急にクレートやリードやエリザベスカラー等を使おうとすると、今まで使っていなかったので犬は拒否反応を示します。

そのため何もない日常生活から避難があるかもしれない想定をして、クレートやエリザベスになれさせておく必要があります。

避難用荷物に新品のリードを準備するのは、ストレスのかかる避難先では慣れたリードでは切れてしまう恐れもあるためです。

5-3.災害時に最も良い避難場所は在宅避難

最後に最初にお伝えをした在宅避難が、避難先に最も良い場所であることの説明をさせていただきます。

在宅避難のメリットは、今までご説明させていただいた問題のほとんどを解決してくれます。

慣れた環境、ある程度の備え、全てが避難所から見れば安心できる材料になります。

 

しかし在宅避難には大きなハードルがあります。

それはそもそもで住宅が災害に耐えられる仕様になっているかです。

 

災害で想定されるものは「地震」「火災」「水害」があり、その副次的なもので「停電」「断水」などのライフラインのストップが考えられます。

これらに対して十分耐えうる家の作りになっていることが、ペットと在宅避難ができる前提になります。

5-3-1.地震対策

まず災害で想定すべき事の一つとして、地震があります。

地震は広範囲に影響を与えるだけでなく、火災や水害も同時に引き起こす場合もありますし、ライフラインを破壊することもあります。

そのため地震に想定した住宅が最も災害対策になると言えます。

 

住宅の場合、地震対策は具体的に言うと「耐震」「制振」「免振」の三つに分類できます。

大雑把な表現をすると「耐震」は家を強くして地震に耐えます。

最近では建築基準法を満たす耐震等級1ではなく、さらに強度を高めた耐震等級2や3をお勧めされる場合があります。

価格の面がクリアできるなら、耐震等級を上げることは良いことだと思います。

 

「制振」はダンパーと呼ばれる金物やゴムを使用し、地震の揺れ(力)を熱に変換し揺れを減らし、住宅を地震から守ります。

「免振」は積層ゴムを使用し、地面と家を切り離して地震波そのものを家に伝えないようにします。

これらがある中で在宅避難ができるようにするには、制振か免振がお勧めになります。

 

理由は耐震というものは、地震が一度しか発生しないことを想定して計算しているからです。

しかし大地震の場合は数回強度の強い揺れがある事が多く、一度耐えても二度目で倒壊する可能性も十分にあります。

その点制振や免振は複数回地震が起きたとしても、住宅そのものへの被害は耐震と比較して少ないはずです。そのため制振や免振を取り入れた住宅が、在宅避難を目指すには適しています。

もちろん家自体が強くなることは悪いことでは無いので、耐震等級を上げたうえで制振ダンバーなどを設置することが最も望ましいと思います。

また住宅関係で免振を施工できる会社少なく、費用も高額なので制振のほうが現実的に多く採用されているのが事実です。

 

地震対策をすることが在宅避難のためポイントです

地震対策をすることが在宅避難のためポイントです

5-3-2.火災対策

最近は灯油を使って暖をとったり、コンロを使って煮炊きをしたりする場面は、昔から見れば減っており火災そのものへの危険性は減りました。

また実際に火を使うガスや灯油関係の商品も、安全面に配慮された商品が一般的になっています。

しかし火の気が減ったから火災が起きないわけではありませんし、隣の家が燃えてもらい火で延焼してしまう可能性もあります。

費用は少々高額になってしまいますが、必要に応じて法律以上の火災対策を自宅に講じる(外壁を防火用に変更する等)ことは、在宅避難できる可能性をあげてくれます。

5-3-3.水害対策

水害は主に津波や川の氾濫を想定すると思います。

しかしこのような災害に耐えられる住宅はほとんどなく、大手のハウスメーカーが実験をしている段階です。

言い換えると住宅そのもので対策をすることはほぼ無理なのが現状ですが、ハザードマップを使用し住宅を建てる場所を選べることが可能であれば、水害を回避する可能性は上がります。

住宅を新築するような場合は、ハザードマップを気にするとよいかもしれません。

魚津市のハザードマップ

魚津市のハザードマップ

5-3-4.水の確保

実際に災害が発生して住宅が健全な状態であれば在宅避難が可能かと言われれば、そうではありません。

人やペットが生きていくために、水と電気は欠かせません。

 

まずは水ですが、断水対策として風呂に水を残しておく。などが可能であればトイレ使用時に良い対策になります。あまり知られていませんが、エコキュートや電気温水器を使用している場合は、そこからも水が取り出せるので取り出し方を確認しておくといざという時に使えるはずです。

また飲み水の確保として、買い置きを常備しておくことも重要です。

5-3-5.電気の確保

在宅避難で最もハードルが高いのは電気です。

太陽光発電があれば在宅避難できると思っておられる方が多いと思いますが、太陽光発電は災害時にほとんど役に立ちません。実際に役に立つのは蓄電池になります。

 

なぜ太陽光発電は災害時に役に立たないかというと、太陽光発電は発電したとしても、基本的に発電分全部を電力会社に売っていて、自宅では使用していないからです。

言い換えると、住宅で実際に使用している電気は全て購入した電気です。(太陽光発電の売電等は計算の上、後々清算をしているにすぎません)

唯一災害時に使える電気は、非常時用のコンセント(パワーコンディショナー本体についている場合や、非常用コンセントと記載したコンセント)だけなのです。

これ以上説明をすると太陽光発電の話ばかりになってしまいますので割愛しますが、太陽光発電だけではほとんど災害時には役に立たないことを知っていただきたいと思います。

 

そして災害時に実際に役に立つのは蓄電池になります。

ここでお勧めの蓄電池についてお伝えをしたいのですが、蓄電池は日進月歩で進化を続けており、その時々で正解は変わってきます。

そのため具体例を挙げることはしませんが、できる限り大きなタイプの蓄電池を採用するか、電気自動車の電気を逆流させるシステム(V2H等)が使えるように準備するのが良いと思います。

容量の大きな蓄電池でしたら、数日間電気を使えますし、煮炊きや暖房も使うことができます。

もちろん無尽蔵に使えるわけではありませんので、災害時は特定の部屋に固まって過ごすなどの工夫は必要でしょうが、頼りになる事は間違いありません。

 

以上のような対策をしておけば、在宅避難できる可能性は上がります。

しかし在宅避難できるほどの住宅の強度や準備が整っていたとしても、もらい火などによる火災で避難が必要になる場合もあれば、同居している家族以外の理由で避難所に行かざるを得ない可能性は十分にあります。

そのため在宅避難を十分に準備することも重要ですが、甚大な被害が出た時の災害まで想定して準備しておくと、災害に適応できる状態になるはずです。

6.最後に

犬を家に迎えるという事は、環境(ハード面)を整えればいいというものではなく、飼い主の愛情(ソフト面)が愛犬には最も重要なことです。

しかし環境を整えることで人も愛犬もストレスが軽減され、楽しい日々が一日でも長く続くことがあるのならそれに越したことはありません。

 

今回説明させていただいた内容に限らず、愛犬にとって良い環境になりそうと思えるものは試していただけたらと思います。

そして何かを試した結果、「この子には合わない」と思えば元に戻したりほかの物をさらに試せばいいだけです。

正解は愛犬の数だけあるはずです。そして毎日一緒にいる家族だからこそ試したり気づけるところは、特権であり責任ではないかと思います。

6-1.監修の増田宏司先生の著書のご案内

お忙しい中時間を作っていただき、今回のブログを監修していただきました増田先生には本当に感謝をしております。

普段の建築関係の仕事だけでは知りえない獣医師先生ならではのアドバイスのおかげで、良い情報をまとめることができました。

この場をお借りして、感謝を申し上げます。

増田先生は多数の出版をもされていますので、こちらの方もぜひ参照にしていただけたらと思います。

 

Amazon 単行本 「これくらいはわかって!ワンコの言い分」

https://x.gd/y0DM6

 

Amazon 単行本 「犬の幸せ・私の幸せ:ワンコ先生が教える動物行動学」

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Amazon 単行本 「犬語ブック:うちのこの気持ちがもっとわかる」

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Amazon 単行本 「気持ちを知ればもっと好きになる!犬の教科書」

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愛犬と一緒に過ごす時間が少しでも楽しいものになれば幸いです

愛犬と一緒に過ごす時間が少しでも楽しいものになれば幸いです

ぜひこの内容が皆様にとって、そして愛犬にとって少しでも何かの役に立つようであれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

監修者

東京農業大学教授 農学部動物化学科 動物行動学研究室 獣医師・博士 増田宏司

 

記入者

野島建設株式会社 代表取締役社長  一級建築士 野島比呂司

投稿日 2024年3月16日

 

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