犬との避難 避難所・避難できない時の在宅避難まで考える 同行避難 同伴避難の解説
2026年10月03日
もし今、避難指示が出たとしたら、犬とどこへ避難するでしょうか。
その時になって初めて「犬も避難所へ連れて行けるのだろうか」「何を持っていけばいいのだろう」と調べていては、十分な準備ができないかもしれません。
犬との避難では、人間だけの避難とは全く異なる問題があります。
フードや水、リード、薬などを持って移動するのは人間と一緒ですが、避難所が受け入れてくれるとも限りません。
自分は能登半島地震の仮設住宅建設に携わりました。
その時普段なら普通に使える道路が、災害によって大きく変わってしまう状況を実際に見ています。
だからこの記事では、単に「犬の避難所問題」という話だけではなく、犬とどう避難するのか、避難所へ行けない時はどうするのか、そして自宅で避難生活を続ける方法まで考えていきます。
※猫との避難についてはコチラをご参照ください。↓
https://nojima-k.jp/staff-blog/post-20198/

目次
1. 同行避難と同伴避難とは
犬の災害対策を調べると、よく出てくる言葉が「同行避難」と「同伴避難」です。
「同行避難」とは災害が発生した時に、飼い主が犬などのペットと一緒に安全な場所まで避難する行動を指します。
「同伴避難」は避難所で被災者が、ペットを飼養管理する状態のことを指します。
ここで大切なのは、「犬を連れて避難すること」と「避難先で犬と同じ部屋で生活すること」は別だという点です。
1-1. 同行避難は「犬と一緒に避難すること」
例えば地震によって自宅が危険になり、飼い主が犬を連れて指定避難所まで移動する。
これは同行避難です。
犬を自宅に置いたまま人だけが避難するのではなく、犬も安全な場所へ移動させるという考え方です。
災害によって飼い主と犬が離れてしまうと、犬が迷子になったり、その後の保護や捜索が必要になったりする可能性があります。
そのため飼い主自身の安全を確保したうえで、犬と避難することが基本になります。
1-2. 避難所で一緒に過ごせるとは限らない
犬と一緒に避難所まで行けたとしても、避難所の居住スペースにまで犬も一緒に入れるとは限りません。
人は体育館で生活し、犬は別室や屋外の指定された場所で過ごす避難所もあります。
ケージやクレートで管理する場合もあります。
つまり、
「犬と避難所へ行ける」=「犬と同じ場所で寝泊まりできる」
ではありません。
この違いを知らないまま災害が起きると、「犬も一緒に体育館へ入れると思っていた」ということになりかねません。
まずは、同行避難という言葉の意味を知ったうえで、実際に利用する可能性がある避難所のルールまで確認しておく必要があります。
1-3. 同伴避難は避難先で犬を飼養管理する状態
同行避難と同じように、同伴避難でも犬と一緒に避難先まで移動します。
違うのは、その後です。
「同行避難」が犬と一緒に安全な場所まで避難する行動を指すのに対して、「同伴避難」は、避難先で飼い主が犬を飼養管理する状態を指します。
ただし同伴避難だからといって、必ず人と犬が同じ部屋で生活できるわけではありません。
犬の飼養スペースが別室になる場合もあれば、屋外などに設けられる場合もあります。
犬と一緒に避難した後、どこで、どのように過ごすのかは、避難所の施設や運営方法によって変わります。
1-4. 自治体や避難所によって対応は違う
ここが犬との避難を難しくしているところです。
同じ市町村の中でも、避難所によってペットの受け入れ場所や方法が違う場合があります。
また地震の時と水害の時では、開設される避難所そのものが変わることもあります。
「近所の小学校が避難所だから、犬もそこへ連れて行けば大丈夫」と思い込まず、
犬の同行避難ができるのか。
犬はどこで過ごすのか。
ケージやクレートが必要なのか。
ここまで確認しておく方が安心です。

2. 災害発生前に確認したいこと
次に確認したいのが実際の避難先です。
大切なのは「避難所の場所を知っていること」だけではありません。
犬を連れて行った時、その避難所でどうなるのか。
ここまで確認しておく必要があります。
2-1. そもそも犬がOKな避難所なのか
まず確認したいのは、ペットの同行避難を受け入れているかどうかです。
調べていただくとわかるのですが、犬の避難所の数は少ないのが現状です。
理由として推測されるのは、災害時には多くの人が避難します。
犬が苦手な人もいますし、動物アレルギーがある人もいます。
自治体のホームページや防災情報を確認し、分からなければ自治体へあらかじめ問い合わせておくのも一つの方法です。
2-2. 避難所には何があるのか
多くの場合、避難所は人用の備蓄はあります。
しかし犬や猫の備蓄をしているところは少ないのが現状です。
そのためあらかじめそのことを調べておき、何を持っていくかを想定しないと、避難したくても避難できな場合が出てきます。
3章にまとめていますが、避難の時の品をまとめておく必要が出てきます。
2-3. 犬は避難所のどこで生活するのか
犬を連れて行けることが分かったら、次は犬の生活場所です。
人と同じ建物の中なのか。
別室なのか。
屋根のある屋外なのか。
それによって必要な準備もかなり変わります。
特に夏や冬は、犬が過ごす場所の温度環境も気になります。
犬を連れて行けるという情報だけで安心せず、可能であれば「連れて行った後どうなるのか」まで確認しておきたいところです。
2-4. ケージやクレートが必要か
避難所では、多くの人やペットが一緒に生活することになります。
そのため、犬を自由に歩かせるのではなく、ケージやクレートで管理することを求められる場合があります。
そして普段ケージを使っていない家庭の場合は、持っているかどうかだけではなく、犬がその中で落ち着いて過ごせるかも問題になります。
この点については、5章で詳しく解説いたします。
2-5. 大型犬や多頭飼いの場合はさらに確認する
小型犬一頭と、大型犬や複数の犬を連れて避難する場合では条件がかなり違います。
大型犬用のクレートは大きくなりますし、多頭飼いならフードや水、トイレ用品の量も増えます。
避難所側でも、犬の大きさや頭数によって受け入れ方法が違う可能性があります。
だからこそ、「ペット可」とだけ確認するのではなく、自分が飼っている犬の大きさや頭数でも問題ないのかを確認しておいた方がいいと思います。

3. 同行避難で必要な持ち物
避難先を確認したら、次は持ち物です。
災害が発生して避難しなければならなくなってから、家の中を歩き回って犬用品を集める時間はほとんどありません。
最低でもあちこちに集める必要がないように、日々の生活の時からできる限り一か所に物を集めておくが無難になります。
しかし急いでいるほど忘れ物が増えます。
できる限りリュックなどにまとめておきたいものになります。
3-1. フードと水
まず必要なのはフードと水です。
災害時に人間用の食料が届いても、犬が普段食べているフードまで同じように手に入るとは限りません。
特に療法食を食べている犬や、食べ慣れていない物をなかなか食べない犬は注意が必要です。
普段食べているフードを少し多めに備蓄し、古い物から使って新しい物を補充していく形なら、無理なく備えやすいと思います。
3-2. 薬と持病の情報
毎日薬を飲んでいる犬なら、その薬も忘れてはいけません。
持病。
アレルギー。
これまでの病歴。
かかりつけの動物病院。
こうした情報も、スマートフォンだけではなく紙などでも確認できるようにしておくと安心です。
災害時はスマートフォンの充電が切れたり、通信が不安定になったりする可能性もあります。
また飼い主に怪我で人に何かを依頼するときも、紙だと渡すだけなので災害時には便利といえます。
3-3. リードとハーネス
普段使っているリードやハーネスも必要です。
災害時は犬も普段とは違う状況に驚く可能性があります。
知らない人や犬、大きな音、余震などが続く中で犬が逃げてしまわないよう、リードやハーネスを確実に使える状態にしておきます。
また予備のリードは細めのものを準備することも重要です。
理由はストレスで食が細くなり、いつものサイズでは使えないこともあります。
2サイズあるのが望ましいといえます。
3-4. ケージ・クレートとトイレ用品
避難所で犬を管理するために、ケージやクレートが必要になることがあります。
またトイレシート、ビニール袋、ウェットティッシュなど、排泄物を処理する用品も必要です。
災害時だからといって、犬の排泄そのものがなくなるわけではありません。
むしろ普段とは違う場所だからこそ、周囲の人への配慮も含め、トイレ用品は少し余裕を持って準備しておいた方がいいと思います。
3-5. 犬と飼い主の情報も準備しておく
物だけではなく、犬の情報も避難用品です。
犬の写真。(できれば飼い主と一緒に映っている写真)
飼い主の名前や連絡先。
鑑札。
狂犬病予防注射済票。
マイクロチップの登録情報。
これらは犬が迷子になった時に、飼い主を確認する手掛かりになります。
特に写真は犬が迷子になった時に、引き受ける時に必要になります。
スマホでもいいのですが、充電できるとは限らないので、印刷物にしておいた方が確実です。
またマイクロチップを装着していても、登録されている電話番号や住所が昔のままでは、連絡が取れない可能性があります。
定期的に登録情報も確認しておいた方がいいでしょう。
3-6. 荷物をまとめたら実際に持ってみる
そして、ここで一つ試してほしいことがあります。
準備した荷物を、実際に全部持ってみてください。
そしてよく考えてもらえばわかりますが、準備しているものは犬用品だけです。
これに自分の荷物、家族の体が悪ければ家族の荷物も増えます。
想像以上の量になることがほとんどだと思います。
そしてこれをする理由があり、それらを4章で解説していきます。

4. その避難所まで、本当に犬と行けますか
犬の避難用品が準備でき、避難所の場所も確認できた。
ここまでくると、かなり準備ができているように感じます。
しかし、自分はもう一つ大切な確認があると思っています。
犬を連れて、本当にその避難所まで行けるのか。
地図上で避難所までのルートを見るだけでは、分からないことがあります。
4-1. 一緒に歩くと気づくことがある
自宅から避難所まで1kmや2kmなら、それほど遠く感じないかもしれません。
しかし、普段の散歩とは条件が違います。
犬のリードを持ち、自分の防災用品に加えて、犬のフード、水、薬、トイレ用品なども持って歩きます。
老犬なら途中で歩けなくなるかもしれません。
小型犬なら抱っこすることもできますが、荷物を持ちながら長時間抱えるのは簡単ではありません。
大型犬の場合は、途中で歩けなくなった時に抱えること自体が難しいでしょう。
だから避難所までの「距離」だけでなく、犬と荷物を含めて本当に移動できる距離なのかを考える必要があります。
4-2. 道路が使えるとは限らない
さらに災害時には、道路そのものが普段と同じ状態とは限りません。
自分は能登半島地震の仮設住宅建設に携わった時、そのことを強く感じました。
地盤が沈んだことで、マンホールだけが道路から大きく突き出している場所がありました。
また橋は残っているのに、橋のたもとの道路が沈んでしまい、車ではその橋までたどり着けない場所も実際に見ました。
実際にここまで発想して、避難所まで歩ける場合は少ないと思います。
しかしでも災害後には通れないかも。
と思い歩いてみることは、自分は必要だと強く思います。
そして「この道を通れば避難所まで行ける」と一つのルートだけを想定するのではなく、できれば違う方向から行くルートも一度確認しておいた方がいいと思います。

4-3. 暑い日や雪の日にも避難できるか
避難する日が、晴れた春や秋の日中とは限りません。
真夏なら道路の表面温度が高くなり、人には歩けても犬には大きな負担になる可能性があります。
逆に冬は、積雪や凍結によって普段の道路が使えなくなることがあります。
特に富山では、大雪や吹雪の日に避難しなければならない可能性も考えておく必要があります。
「車で行けばいい」と思っていても、渋滞するかもしれません。
先ほどの例のように、ありえないことも普通に起きるのが災害時です。

5. 普段から犬とやっておきたいこと
避難経路を確認しても、肝心の犬をすぐに連れ出せなければ避難はできません。
防災というと、どうしてもフードや水など「物」の準備に目が向きます。
しかし犬自身が避難できる状態にしておくことも、同じくらい大切です。
5-1. 犬をすぐ確保できますか
地震などが起きれば、人だけでなく犬も驚きます。
普段なら簡単にリードを付けられる犬でも、大きな音や揺れで興奮している時には、いつもと同じように行動してくれるとは限りません。
玄関の扉を開けた瞬間に外へ飛び出してしまえば、その後の避難どころではなくなります。
災害時に犬がよくいる場所を普段から知っておき、リードやハーネスをすぐ取れる場所に置いておく。
これだけでも違います。
5-2. ケージやクレートを安心できる場所にする
避難所で初めてケージやクレートに入れようとしても、犬が嫌がる可能性があります。
それ以外にも、普段は自由に家の中を歩いていて、病院へ行く時だけクレートを使う犬の場合、クレートそのものを嫌な場所に連れていかれる箱だと覚えていることもあります。
だから普段から部屋に置いておき、中で休んだり寝たりできる環境にしておく。
毛布を入れる。
時々おやつを入れる。
扉を開けたまま自由に出入りできるようにする。
犬にとって「閉じ込められる場所」ではなく、自分から入って休める場所にしておくことが理想だと思います。

5-3. 家族の誰でも犬を連れて避難できるか
災害が起きる時、いつも家族全員が家にいるとは限りません。
普段犬の世話をしている人が仕事へ行っているかもしれません。
その時に家にいる家族が、
犬のリードがどこにあるか知らない。
薬の場所を知らない。
犬の防災バッグを知らない。
という状態では困ります。
「犬のことはいつもこの人」という役割を決めるだけではなく、家族の誰でも最低限の避難ができるようにしておいた方がいいと思います。
ここまで準備したら、次に考えたいのが、避難した後の生活です。
6. 避難所生活で起こりやすい問題
無事に避難所へたどり着けても、そこで普段と同じように犬と暮らせるとは限りません。
避難所には、犬を飼っている人だけが集まるわけではありません。
犬が好きな人もいれば苦手な人もいますし、動物アレルギーがある人もいます。
さらに犬自身も、知らない人や犬、大きな音、いつもと違う生活環境の中で過ごすことになります。
そのため避難所へ行く準備と同じくらい、避難した後にどんな問題が起きそうかも考えておいた方がいいと思います。
6-1. 周囲の人への配慮も必要になる
避難所では多くの人が近い距離で生活するため、吠え声やにおい、排泄などは普段以上に気になりやすくなります。
またそもそもでストレスがかかる状況ですので、普段なら理解がある人でも、避難所生活の時までそうとは限りません。
トイレシート、ビニール袋、ウェットティッシュなどを準備しておくことは、犬のためだけでなく周囲の人と一緒に生活するためにも必要です。
また犬が苦手な人やアレルギーのある人もいるため、避難所生活は楽だとは言えないのが現状です。
6-2. 犬自身にも大きな負担がかかる
知らない場所、人、犬、音の中で生活することは、犬にとってもストレスになります。
普段からケージやクレートで落ち着けるようにしたり、いつも使っている毛布やタオルを持って行ったりすることも役立ちます。
避難所へ連れて行ければ終わりではなく、そこで犬がどう過ごすかまで考えることが同行避難の準備だと思います。
7. 避難所へ行けない場合も考えておく
災害時に、必ず避難所へ行けるとは限りません。
道路が通れない。
犬を受け入れてもらえない。
犬の体調や性格によって、避難所で過ごすことが難しい場合もあります。
そのため自分は、「避難所しかない」と決めず、いくつかの選択肢を持っておくことが大切だと思っています。
例えば、
- 親族や知人宅
- ペットホテルや動物病院
- 車中避難
- 自宅が安全な場合の在宅避難
などです。
もちろん、どの方法も災害の種類や状況によって使えるかどうかは変わります。
大切なのは、第一候補が使えなかった時に、第二、第三の避難先まで考えておくことです。
8. 在宅避難を可能にする住まい
7章までの話を理解していただくと、普段何事もなく自宅で生活できることが、いかにありがたいか分かると思います。
そして災害が発生したとしても、これまで説明してきた多くの問題を解消してくれる可能性があるのが、在宅避難だと自分は考えています。
犬にとっても、いつもの寝床、トイレ、におい、生活環境をそのまま使えることは大きなメリットです。
ただし、家にいられることが大前提です。
ここからは住宅会社として、在宅避難を可能にするために何を考えておけばいいのかを説明していきます。
8-1. 家が倒壊しない
最初に必要なのは、当たり前ですが家そのものが安全であることです。
水や食料を一週間分準備していても、地震で住宅が大きく損傷し、中にいることが危険になれば在宅避難はできません。
新築住宅であれば耐震性能を高める。
既存住宅なら、古い住宅ほど耐震診断や必要に応じた補強を検討する。
在宅避難を考えるなら、蓄電池などの設備より先に住宅そのものの安全性を考える必要があります。
8-1-1. 耐震・制振・免震
地震対策には、大きく「耐震」「制振」「免震」という考え方があります。
耐震は柱や壁、接合部などを強くして地震の力に耐える方法です。
住宅性能表示制度では耐震等級があり、耐震等級3は、震度7(10年に一度とか極めてまれに発生する地震)による力の1.5倍に対して倒壊・崩壊しない程度とされています。
制振は、ダンパーなどで地震のエネルギーを吸収し、建物の揺れを小さくする方法です。
免震は、地面と建物の間に免震装置を入れ、地面の揺れを建物へ伝えにくくする方法です。
どれか一つを付ければ絶対安全というものではありません。
自分ならまず十分な耐震性能を確保したうえで、予算や建物に応じて制振などを組み合わせることを考えます。
在宅避難という視点では、「倒壊しない」だけでなく、地震後もその家で生活を続けられるかまで考えることが大切だと思います。
8-2. 電気を確保する
家が無事でも、停電してしまえばかなり大変な生活を送ることになります。
照明、冷蔵庫、スマートフォンの充電、冷暖房など、現在の住宅はかなり電気に依存しています。
犬と暮らしている家なら、真夏や真冬に冷暖房が長時間使えないことも考えておく必要があります。
太陽光発電があれば一定の助けになりますが、停電時にどこまで使えるかは、パワーコンディショナーや自立運転機能など設備によって違います。
そのため「太陽光があるから大丈夫」ではなく、停電した時に実際にどのコンセントや設備が使えるのかまで確認しておくことが重要です。
太陽光発電に関しては、以前動画を作っているので、よろしければこちらも参照にしてください。
8-2-1. V2Hと蓄電池
電気を確保するためには発電機がありますが、安定しないし燃料が必要です。
そのため、家庭用蓄電池やV2Hが一般的な解決策になります。
家庭用蓄電池は最近増加傾向にありますが、容量には限りがあります。
また蓄えた分を使い切ったら終わりなのと、高価な点が気になります。
V2Hは「Vehicle to Home」の略で、対応したEVやPHEVに蓄えた電気を住宅へ戻して使用する仕組みです。
自分的には、固定して動かない蓄電池のタイプより、どこかから電気を運んでこれる可能性があり、災害時以外でも使用できるからV2Hを採用することをお勧めしています。
経済産業省も、電動車を災害時の非常用電源として活用できると案内しています。
しかし電気が使えるからといって、平常時と同じように家中で使えばすぐに電気を消費します。
災害時には家族と犬が一つの部屋に集まり、その部屋だけ冷暖房するなど、使う電気を減らす暮らし方まで想定しておくと、より現実的です。
8-3. 水と食料は備蓄する
電気については住宅設備で対策できますが、水や食料は設備だけでは解決できません。
内閣府は家庭で最低3日分、できれば1週間分程度の備蓄を推奨しており、飲料水は一人1日3リットルが目安とされています。
当然ですが、犬の水やフードはこれとは別です。
特に療法食や決まったフードしか食べられない犬の場合、災害後に同じ商品がすぐ手に入るとは限りません。
人間用も犬用も普段から少し多めに購入して、古い物から使うローリングストックなら、無理なく続けやすいと思います。
8-3-1. 収納場所まで考える
住宅会社として意外と重要だと思うのが、備蓄する場所です。
「防災用品を準備してください」と言っても、置く場所がなければ結局続きません。
自分なら、持ち出す防災バッグはすぐ取れる場所にまとめますが、在宅避難用の水や食料は一か所だけに集中させない方がいいと思います。
例えばパントリーだけではなく、キッチン収納や別の収納などにも分けておけば、一か所が使えなくなった場合にも対応できます。
新築なら、防災用品をどこに置くのかまで図面上で決めておく。
これも在宅避難できる家づくりの一つだと思います。
8-4. 意外と困るのがトイレ
水や電気以上に、実際に困りやすいのがトイレです。
水道が止まるだけでなく、地震によって下水道や浄化槽が被害を受ければ、水があっても水洗トイレを使えない場合があります。
そのため携帯トイレは、在宅避難でも準備しておきたい物です。
現在の政府広報では、1人1日5~6回×人数×7日分を備える目安が示されています。4人家族なら相当な数になります。
そして犬の場合は、トイレシートや排泄物を入れる袋なども必要です。
また散歩時に排泄をする場合は、歩ける場所をどうやって見つけるかも重要になります。
家そのものは無事なのに、「トイレが使えないから家にいられない」ということもあり得ます。
在宅避難では、水や食料と同じくらいトイレを重要視してほしいと思います。

8-5. 在宅避難できない時もある
ここまで在宅避難を可能にする方法を書いてきましたが、どれだけ強い家を建てても、在宅避難を選んではいけない災害があります。
自分がいつも気にしている点は、自宅をどんなに補強しても、被害にあう可能性がゼロにならない点です。
その辺を見極めながら、バランスよく家の性能を決めていただけたらと思います。
8-5-1. 液状化
液状化が起きると、家そのものが強くても地盤が沈んだり傾いたりすることがあります。
さらにマンホールが浮き上がったり、道路や水道・下水道などのライフラインが被害を受けたりすることがあります。
これは自分が能登半島地震の時に、富山県でも多数被害が出ました。
住宅の耐震性能だけでは防げないため、土地を購入する段階から液状化の発生傾向を確認しておくことも大切です。
国土交通省のハザードマップでも液状化の発生傾向を確認できますので、土地を購入される場合はこれを気にしてもいいかもしれません。
8-5-2. 土砂崩れ
崖や山が近い場所では、住宅そのものが強くても土砂災害には耐えられない可能性があります。
そのため土砂災害警戒区域などに該当する場合は、「家が丈夫だから残る」のではなく、気象情報や自治体の避難情報を確認して早めに避難する必要があります。
ハザードマップでは、洪水だけでなく土砂災害についても住所から確認できます。
8-5-3. 火災
もう一つ怖いのが火災です。
自宅から出火しなくても、大地震では周囲から延焼する可能性があります。
また地震後の火災では電気が原因になるケースも多く、停電後に電気が復旧した時に出火することもあります。
消防庁では、その対策として感震ブレーカーの設置を推奨しています。
ただし周囲で火災が発生し危険が迫っているのであれば、当然その家に残るべきではありません。
8-5-4. 水害
水害も、在宅避難できる場合とできない場合があります。
自宅の上階が浸水しない、家屋倒壊等氾濫想定区域ではないなど、一定の条件を満たせば屋内安全確保という選択肢もあります。
一方、家屋が倒壊するような氾濫流が想定される区域などでは、早めの立退き避難が必要です。
その判断を災害が始まってからするのではなく、普段からハザードマップで自宅の浸水深や周辺の危険性を確認しておくことが大切です。
在宅避難は「避難しなくてもいい家」をつくることではありません。
自宅に残っても安全な状況なら、犬といつもの環境で生活を続けられるよう準備しておく。
そして自宅が危険になる災害では、迷わず犬と避難する。
自分は、この両方を準備しておくことが、本当の意味で「災害に強い家」だと思っています。
9. 犬との避難は在宅避難を勧める理由
ここまで避難所への同行避難や、避難所へ行けない場合、そして在宅避難できる住宅について書いてきました。
犬との避難を考えた時、自分は自宅が安全なのであれば、在宅避難という選択肢はかなり重要だと思っています。
もちろん、8章の中にもあったようにいつでも在宅避難が良いという訳ではありません。
しかし自宅が安全なのであれば、犬にとって普段の生活環境をできる限り維持できる在宅避難はかなり考えたい選択肢だと思います。
9-1. 犬は普段の環境をそのまま使える
在宅避難の大きなメリットは、犬の生活環境を大きく変えなくて済むことです。
いつもの部屋。
いつもの寝床。
いつものトイレ。
いつもの水飲み場。
そして、家族や自分自身のにおいが残っている家です。
避難所へ行けば、普段とは全く違う場所で生活することになります。
場合によってはケージやクレートの中で長い時間を過ごすことになるかもしれません。
知らない人や犬が近くにいる可能性もありますし、大勢の人が出入りする場所では、普段の家とは音やにおいも大きく変わります。
もちろん自宅にいたとしても、余震や停電などによって普段通りの生活ができるとは限りません。
それでもすべて変化する避難所よりストレスが少ないというのは、イメージできるかと思います。
9-2. 大型犬や多頭飼いほどメリットは大きい
小型犬一頭であれば状況によっては抱っこしたり、キャリーを使ったりして避難することもできます。
しかし大型犬になると、そう簡単ではありません。
犬自身に歩いてもらう必要がありますし、途中で歩けなくなったとしても、人が抱えて移動することは難しくなります。
さらに多頭飼いになれば、犬の数だけリードやハーネスが必要になります。
フード。
水。
薬。
トイレ用品。
場合によってはケージやクレート。
当然、人間の防災用品も持たなければいけません。
だから大型犬や多頭飼いの場合は、避難所へ行く準備だけではなく、自宅が安全だった場合に、そのまま数日間生活できる意味がより大きいと思います。
9-3. 普段使っている物をそのまま使える
在宅避難であれば、犬が普段使っている物を避難所まで運ぶ必要がありません。
いつものフード。
いつもの水飲み器。
いつものベッドや毛布。
いつものトイレシート。
普段使っている薬やケア用品。
これらをそのまま使うことができます。
同行避難の場合は、必要な物を持ち出せる量に絞らなければいけません。
しかし自宅にいられるのであれば、普段の生活用品や備蓄をそのまま使えます。
特に療法食を食べている犬や、決まったフードしか食べない犬の場合、避難先で同じ物がすぐ手に入るとは限りません。
普段使っている物をそのまま使える。これは結構大きなメリットだと自分は考えています。

10. 当たり前の日常に感謝
犬との避難についてまとめてきましたが、書けば書くほど、とにかく災害は起きてほしくないと思うことばかりでした。
これだけの準備をしてくださいと言われたら、自分でも正直、やりたくないと思います。
しかし「何も起きてほしくない」と願っていても、実際に起きているのが災害です。
自分は能登半島地震の仮設住宅建設に携わり、災害によって普段当たり前に使っているインフラが、ほとんど機能しなくなった状況を実際に見ました。
蛇口をひねれば水が出る。
スイッチを押せば照明がつく。
お腹が減ればコンビニへ行く。
そんな当たり前のことができなくなるのが災害です。
最初から完璧に準備しようとすると、それだけで大変になります。
犬との防災は、何か特別なことを一度やって終わりではありません。
普段の散歩。
普段使っているケージ。
普段食べているフード。
普段暮らしている家。
そうした日常を少しだけ、「災害が起きたらどうなるだろう」という視点で見直しておく。
それだけでも、実際に避難が必要になった時の助けになるのだと思います。
今回の内容が、皆様にとって何かの参考になれば、これ以上の喜びはありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
10-1. 執筆者プロフィール
野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員
富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。
投稿日 2026年10月3日
~温かい人が集まる暖かい家 NOJIMAのゼロ・ハウス~
野島建設 YouTubeチャンネル↓
https://www.youtube.com/channel/UC8SrIw-v-S3d1F0ZXz_P0A?view_as=subscriber
野島建設HP https://nojima-k.jp/
野島建設TEL 0765-24-6330
野島建設住所 937-0806 富山県魚津市友道390-1

