うちだけ?犬用品がリビングで目立つ その理由を一級建築士が解説
2026年09月19日
犬はリビングで暮らさなくてもいいのですが、多くの飼い主側の理由でリビングで飼われることが多いです。
しかしそうすると、リビングに犬用品が増えていきます。
ケージ。
トイレ。
トイレシート。
フード。
水飲み。
おもちゃ。
掃除用品。
きれいにしているつもりなのに、なぜかリビングだけ犬用品が目立つ。
しかし自分は、単純に「犬用品が多いから」という理由だけではないと思っています。
そもそも今の住宅のリビングが、犬用品を受け止めにくい作りになっている。
そのように考えています。

目次
1. 開放的なリビングほど、収納をつくれる場所が少ない
まず犬用品の話をする前に、リビングという場所そのものについて考えてみます。
自分を含めた多くの建築士は、リビングにはできるだけ開放感を持たせたいと考え設計をします。
人間が気持ちよく時間を過ごす場所として、非常に使いやすい仕上げになっています。
ただし言われればわかることですが、家づくりの際にあまり考えられない二つの盲点がリビングにあると自分は考えています。
1-1. リビングは「壁」が少ない
リビングは廊下の機能も併せ持たせているため、どうしても動線が増えます。例えば
- 玄関から入ってくる動線
- ダイニング・キッチンへ向かう動線
- 階段へ向かう動線
このような場所になります。
そしてもう一つ重要な点として、リビングには大きな窓やテレビなど、壁面を使うものも多くあります。
具体例には、
- 大きな窓
- テレビを置く場所
などが必要になります。
そうすると、リビング空間そのものは広くても、収納をつくれる壁は意外と残りません。
例えば行き止まりの部屋に多いのですが、四方を壁に囲まれた個室なら、ある一面をクローゼットにすることもできます。
しかしリビングでは、廊下の機能を持たせながら、壁が少ないという特徴があるため、目的を持って収納を計画しない限り、収納不足になりやすい空間だと自分は考えています。

1-2. リビング収納は後回しになりやすい
もちろん、リビングに収納がないわけではありません。
自分が思うに、ただ単に少ないだけです。
例えばキッチンや洗面所のように、用途が明確な場所では収納も計画しやすくなります。
そして何を持ってくるか考えて、広さを決めていきます。
一方、リビングの場合は少し違うと自分は考えています。
何を収納するのかがあまり考えられていないことが多く、ヒアリングしても「掃除器具置く収納は欲しい」がすぐに出てくるくらいです。
あとは思い出の品を飾るとか、子供用のものを少し置くとか言われるくらいです。
つまりリビングは積極的に収納を必要としていない場所、と思われていることが多いようです。
これは人間だけで暮らしている間は、あまり問題になりません。
しかしこれが犬と一緒に暮らすとなると、一気に話が変わってきます。

2. 犬用品は後から増えてくる
新築時から犬と暮らすことが決まっていれば、
ケージをどこへ置くか。
トイレをどこへ置くか。
犬用品をどこへ収納するか。
散歩用品をどこへ置くか。
そこまで考えることができます。
しかし家を建てて数年後に犬を迎えた場合、人間だけで暮らすことを前提につくられたLDKへ、後から犬の生活が追加されることになります。
この章では、そのあたりをまずは説明したいと思います。

2-1. 犬を飼う予定はなかったのに飼い始めた世帯は3割
実のところ、同業他社の調べたアンケートによると、3割の方は新築時に犬を飼う予定がないにもかかわらず、後日購入した。という記録があります。
このような方は1章で書いたように、そもそもで犬用の準備をしていないので、収納不足に陥りやすくなります。
また犬を飼う予定である程度新築をしたにもかかわらず、犬用品の収納が足りないという方もそこそこいらっしゃいます。
結局おもちゃや、服。災害用品やハレの日用のリード。
このようなものまで買いだしたら、収納がある程度あっても足りなくなるのだと思います。
結局人間でも収納不足が問題になるように、犬でも同じようなことが発生するわけです。
2-2. ケージの近くに物が集まるのは当然
急に質問ですが、このような洗面所は使い勝手が良いと思いますか?
ドライヤーがキッチンにあり、歯ブラシがお風呂にあり、歯磨き粉は玄関にある。
極端な例ですが、こんなのは住みにくくて仕方ないです。
つまり犬用品がリビング周りやケージ周りに集まるのも、人間の行動上合理的なわけです。
トイレシートは、ケージの近くに数枚置いておきたくなると思います。
粗相をしたときにすぐ掃除できるように、掃除用品も近くへ置きます。
おもちゃも、犬が遊ぶリビングにあった方が便利です。
このように人間が合理的に過ごそうと思った結果、犬用品がリビングに集まるわけです。
問題は、そこに犬用品用の収納が準備されていないことです。
準備がされていないから、多くの場合既製品の収納を置いてみたり、そのまま予備のトイレシートを床の上に置きっぱなしにするわけです。
結局のところ、収納の中にしまわれていれば、リビング空間は煩雑に見えません。
3. リビングは開放的で「全部見える」
2章は単純に収納不足の問題の話でした。
しかし自分はリビングには、もう一つ大きな理由があると思っています。
それが、リビングそのものが見通しよくつくられていることです。
開放感のあるLDKは、人間にとって気持ちの良い空間です。
玄関からリビングに入った瞬間、ダイニングやキッチンまで広がって奥まで見える。
しかし収納されていない犬用品は、この「よく見える」というリビングの特徴でよけい目立ってしまうわけです。
例えば玄関からリビングへ入った瞬間、真正面にケージがあるとします。
その横にはトイレ。
トイレシート。
掃除用品。
おもちゃ。
それだけでも、犬用品の存在感はかなり強くなります。
さらにソファからも、それらが見える。
ダイニングからも、それらが見える。
来客からも、それらが見える。
何度も視界に入ることで「犬用品が多い家」に見えてしまうことがあります。
だから自分は、「散らかっている」だけではなく、「見えすぎている」という問題もあると思っています。

4. まず「見え方」を変えてみる
すでに住んでいる家の場合、間取りそのものを変えるのは簡単ではありません。
そこで最初に考えたいのが、収納量を増やすことよりも見え方を変えることです。
自分なら、まずケージがどこから見えているのかを確認します。
4-1. ケージを「真正面」から少し外す
例えば玄関からリビングに入った真正面に、ケージがある場合も結構あります。
このような場合、少し横へ移動します。
ソファの横。
ソファの背面。
収納家具の脇。
部屋の角。
数十cm動かすだけでも、人間の視線から外れることがあります。
ここで大切なのは、犬を隠してしまうことではありません。
犬からは家族が見える。
家族の気配も感じられる。
しかし人間からは、ケージやその周辺の犬用品が真正面には見えない。
そのくらいの位置が理想だと思います。
※画像は極端な例ですが、少し家具の配置を変えたり、ケージが見えないようにするだけでも人間の印象は変わります。

5. ケージと収納を一体的にまとめる
これも今の家でもできますが、少々費用のかかる方法です。
ケージを単独で置くのではなく、上部を収納にし、下部をケージとして使う方法です。
そのような家具を特注などで作ってしまいます。

下の部分は正面を開けます。
犬からはリビングが見えます。
一方、横には側板をつけます。
そうすると横方向からは、ケージの金網や犬用品が見えにくくなります。
収納にはトイレシートなど、ケージ周りに欲しいものを収納してしまいます。
造作家具でもいいですし、条件の合う既製品を使ってもいいと思います。
大切なのは、リビングの貴重な少ない壁を高さも活かして使い切ることです。
※ 今回調べた範囲では、自分が理想とする「ケージと十分な収納」を満たす既製品は見つけられませんでした。
このような商品は野島建設で作ることができますので、必要に応じてお声がけください。
お問い合わせフォームからご連絡をお待ちしております。
6. 犬用品を一か所にまとめる例
これは新築の例ですが、弊社のペット共棲住宅を例に挙げさせてもらいます。
ペット共棲住宅はその名の通り、人と犬と猫が共存して仲良く暮らせる家を目指しました。
その中には、当然人も犬もストレスが軽減される工夫を盛り込んでいます。
このペット共棲住宅の展示場は間取りが特徴的で、リビングの横にシューズクローゼットがあります。
このこのシューズクローゼットは
- 散歩用品(リードやカッパ等)の置き場
- ペットフードなどの買い置き
- カート
様々なものが収納できます。
このようなリビング付近に、大きな収納を設置することは非常に犬と暮らす家には重要になってきます。
それ以外にもシューズクローゼットには多くの利点があります。
今回の間取りでは、リビングから散歩に行ける間取りになっています。
そのため、リビングから歩いていくだけで散歩の準備が可能な間取りになっています。
また帰宅後の方がさらに特徴があり、野島建設の独自工法の「AIR LOOP SYSTEM」により、濡れた雨具等をわざわざ乾かさなくてもシューズクローゼット内で乾いてしまう特徴があります。
そしてシューズクローゼット内はスロープになっているので、老犬になったとしても自分で歩いてリビングにまで迎える特徴があります。
たった一つの段差で犬がケガをすることはあります。
そのような細かなところまで配慮した間取りと工夫が、ペット共棲住宅に盛り込まれています。

7. リビングとDKを少しずらすという方法もある
ペット共棲住宅の間取りでは、6章に挙げた特徴以外に、もう一つ特徴的なことをしています。
リビングとダイニング・キッチンを一直線に並べず、少しずらしています。
最近のLDKでは、リビング・ダイニング・キッチンを一直線につなぐ間取りが一般的です。
広く見えますし、家族の様子も確認しやすいため、非常に採用されやすい間取りです。
ただ一直線につながっているということは、反対側までよく見えるということでもあります。
そこで少しだけ位置をずらします。
これにより音は聞こえる。
家族の気配も感じられる。
しかし視線だけが少し外れます。
例えばダイニングに来客があったとしても、犬の居場所が真正面には見えません。
家具の位置によっては、さらに見えにくくできます。
一緒にいるけれど、全部は見えない。
これも犬と暮らすLDKでは、一つの考え方だと思います。

8. 犬用品が多いのではなく、見えているだけ
犬と暮らせば、犬用品は増えます。それ自体は避けられません。
ただ犬用品が増えたことと、リビングが散らかって見えることは、必ずしも同じではありません。
もともとリビングは開放的につくられやすく、収納をつくれる壁面が少ない。
そこへ後から犬の生活が加わる。
さらに開放的な空間なので、置いた物がよく見える。
この三つが重なることで、犬用品が実際以上に目立っている家もあると思います。
毎日使うからそこに置かれているのであれば、片付け方ではなく収納する場所の方が合っていない可能性もあります。
犬の生活用品を、後から増えた邪魔な物として扱うのではなく、犬との暮らしそのものを住宅の中へどう受け止めるのか。
そこまで考えることが、犬と人の両方が暮らしやすい家につながると自分は考えています。
今回の文章が、皆様の犬との住まいの何かしらの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
8-1.執筆者プロフィール
野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員
富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。
投稿日 2026年9月19日
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