老犬介護で困らない家とは?寝床・間取り・介護スペースを一級建築士が解説
2026年10月31日
犬が高齢になり介護が必要になると、食事や排泄の補助だけでなく、夜間の対応が必要になることがあります。
自分が住宅設計の立場から気になるのは、犬の介護をする場所は考えていても、介護する飼い主がどこで生活するのかまで考えられていないことです。
犬ファーストはいいのですが、介護は数日で終わるとは限りません。
数か月、場合によっては年単位で続くこともあります。
そうなると犬が安心して過ごせることはもちろん、飼い主自身が無理なく休める環境も必要だと自分は考えています。
また、普段はリビングと寝室の両方で眠っている犬もいるでしょう。
寝場所が複数あること自体は珍しくありません。
しかし現在の寝床の場所が、介護しやすい場所なのかは別の話です。
今回は、犬の身体能力が変化したとき、住宅のどこで介護するのがよいのか。
水場や収納、ごみ捨てから飼い主の寝場所まで含めて、住宅設計の視点から考えてみたいと思います。
1. 老犬介護の前提条件
犬の介護を考えるとき、最初に思い浮かぶのは普段使っている寝床だと思います。
しかし犬が自分で元気なうちは問題のなかった場所でも、立ち上がりや排泄の介助が必要になると、不便になることがあります。
犬が休むための場所と、飼い主が介護するための場所は、必ずしも同じ条件ではないと自分は考えます。
1-1. 寝床は一か所か複数か
犬の寝場所は、一か所とは限りません。
昼間はリビングで過ごし、夜は飼い主の寝室で眠る。
暖房の時期や人間の気分によって、複数の寝床を使い分けている場合もあると思います。
2020年に発表された犬の睡眠に関する研究では、生後12か月の犬1,083匹について、43.9%が複数の寝場所で眠っていると飼い主が回答しています。
このように複数の寝場所に慣れている犬なら、高齢になってからも、それぞれの場所を利用できる可能性があります。
しかし足腰が弱り階段を利用できなくなると、それまで当たり前に使っていた寝床へ移動できなくなる可能性があります。
つまり寝床を複数用意することと、将来もその寝床を使い続けられることや移動できることは別の問題なのです。
1-2. 快適な寝床は介護でも快適とは限らない
例えば、犬が普段から飼い主の寝室で眠っている場合を考えてみます。
夜間に犬の様子を確認しやすい一方、排泄に失敗したときには、寝具の交換や犬の体の拭き取りが必要になります。
寝室の近くに水場がなければ、洗面室まで何度も往復するかもしれません。
では、リビングなら問題ないのでしょうか。
リビングには水場が近い場合が多いですが、家具が多ければ犬の横にしゃがんで介助する場所を確保できないことがあります。
さらに夜間の介護が続く場合、飼い主が近くで眠れる場所も必要になります。
普段は広く感じるリビングでも、家具を移動させなければ布団を敷けないこともあるでしょう。
このように普段は快適な場所でも、介護となると別の問題が出てきます。
1-3. 犬の寝場所だけでなく、飼い主の生活も考える
老犬介護では、犬の状態に目が向きがちですが、飼い主の生活も変化します。
特に負担になりやすいのが、夜間の対応です。
高齢犬では、排泄の失敗や夜鳴き、睡眠リズムの変化が見られる場合があります。また、自分で寝返りを打つことが難しくなれば、飼い主による介助が必要になることもあります。
米国動物病院協会(AAHA)の2023年の高齢犬・高齢猫の診療ガイドラインでも、介護する飼い主の身体的・精神的な負担が取り上げられています。
特に、夜間の問題によって飼い主の睡眠が妨げられることへの対応も重要とされています。
参考:AAHA「Managing the Caregiver Burden」
仮に一晩に3回、1回10分の介助が必要になれば、作業時間だけで30分です。
これは介護頻度の統計ではなく計算例ですが、実際には介助後に再び眠りにつくまでの時間もあります。
さらに犬の寝床が1階、飼い主の寝室が2階なら、介助のたびに階段を往復することになります。
介護そのものに加えて、移動や清掃、飼い主の睡眠環境も負担に関係するわけです。
だからこそ犬の寝場所だけでなく、飼い主が無理なく生活できる場所まで考える必要があると思っています。

2. 老犬介護に必要な生活スペースとは
老犬介護といっても、犬の状態によって必要な住環境は異なります。
住宅設計の視点では、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 犬の状態 | 困りやすいこと | 住宅側の対策 |
|---|---|---|
| 自力で歩ける | 床で滑る、段差につまずく | 床材、段差、家具配置 |
| 歩行介助が必要 | 立ち上がれない、トイレまで移動できない | 介助スペース、通路幅、トイレの位置 |
| 寝床で過ごす時間が長い | 寝返りの介助、排泄物による汚れ | 寝床周囲の広さ、清掃、収納、飼い主の寝場所 |
※医学的な介護段階の分類ではなく、住宅設計を考えるための整理です。
もちろん、すべての犬がこの順番で介護を必要とするわけではありません。
2-1. 老犬になる前に床を確認する
高齢になると筋力や関節の状態が変化し、以前は問題なく歩けた床で滑ったり、小さな段差につまずいたりする場合があります。
特に筋力で床のすべりをごまかしていた場合は、廊下による筋力低下で歩きにくくなります。
詳しくは以前書いたブログやYouTubeがあるので、こちらをご覧ください。
またAAHAの2023年のガイドラインでも、高齢犬の移動を補助する方法として、滑りにくいマット、スロープ、移動補助具、適切な寝具などが紹介されています。
2-2. 歩行介助が必要な場合の問題点
犬が自分で立ち上がりにくくなると、飼い主が横について体を支えたり、補助具を利用したりする場面が増えます。
例えば、寝床からトイレへ移動する場合を考えてみます。
これまでは犬だけが通ればよかった場所でも、歩行介助が必要になれば、人間が一緒に移動するための幅がが必要になってきます。
それ以外にも、段差のある場所では犬を抱き上げなければならない場合もあります。
体重5kgの小型犬と25kgの大型犬では、抱き上げるときの負担も大きく異なります。
そのため犬が移動しにくくなったときを想定して、生活に必要な場所を同じ階にまとめられるかという視点が重要になります。
2-3. 歩けない様になった時の問題点
犬が自分で寝返りを打つことや、立ち上がることが難しくなった場合には、寝床周囲の使い方が変わります。
犬の体の向きを変える、汚れた寝具を交換する、体を拭くといった作業には、飼い主が犬の横に座ったり、しゃがんだりする場所が必要です。
例えば、壁と家具の間に犬のベッドがぴったり収まっている場合、寝るだけなら問題ないかもしれません。
しかし介助する人が横に座れなければ、作業のたびに犬のベッドを移動させる必要が出てきます。
寝床が部屋に収まることと、その場所で介護できることは別の問題です。
寝床で過ごす時間が長くなるほど、周囲の広さや清掃のしやすさが重要になります。
2-4. 犬が移動できなくなったら、飼い主の寝場所も見直す
犬が自分で移動できなくなると、これまでのようにリビングと寝室を使い分けることが難しくなる場合があります。
では、そのとき犬の寝床はどこに決めればいいのでしょうか。
この辺りで考えたくなることは、筋力が低下した犬では、認知症の傾向が強くなります。
それだけでなく、方向感覚の低下や睡眠リズムの変化などが見られる場合があります。
また以前東京農業大学の教授で、獣医師でもあります増田先生と話をさせていただいた際に、認知機能が低下した犬について、寝床や家具、食器の位置をなるべく変えないことを教えていただきました。
簡単に言えば、生活環境を一定に保つことで犬への負担を減らすということです。
しかし当たり前ですが、老犬は必ず寝床を変えてはいけないという意味ではありません。
そして犬を移動させることが難しいのであれば、飼い主が犬の近くで眠れるようにする方法もあります。
例えば、リビングに隣接する和室や書斎を一時的な寝室にする方法です。
自分は、どちらが正しいと決める必要はないと思っています。
犬の状態によって、犬の寝場所を変えるのか、飼い主の寝場所を変えるのかを選べること。
これが、将来の介護を考えた間取りの一つのポイントだと思います。

3. 老犬の介護場所はどの部屋が正解?
老犬介護では、リビングと寝室のどちらを使うのがよいのでしょうか。
この答えは一律ではなく、住宅の間取りによって変わると自分は考えます。
犬が落ち着いて休めることも重要ですが、介護する飼い主が無理なく作業できるかも考える必要があります。
またこれらに関しては、普段から犬が慣れている空間であることを前提にしており、不慣れな場所に急に連れてこられたことは前提にしていません。
3-1. リビングで介護するメリット
リビングのメリットは家族が過ごす中心的な場所であり、キッチンや洗面室に比較的近い住宅も多いことです。
犬の様子を確認しやすく、体を拭いたり、汚れたものを片付けたりする際にも便利な場合があります。
一方、リビングには多くの家具が置かれています。
ソファ、ダイニングテーブル、テレビボードなどがあると、広い部屋でも実際に使える床面積は限られます。
特に夜間介護が始まった場合には、飼い主が寝られる場所やそれらの収納場所も必要です。
一般的なシングルサイズは、畳一枚より気持ち大きいサイズです。(幅100cm、長さ210cmほど)
そして当然ながら、布団をひきっぱなしでは生活がしにくくなります。
そのため布団を収納をする場所も必要になり、そこそこ余裕を考える必要があります。
リビングで介護するなら、犬の寝床と飼い主の寝具を同時に置けるか確認することが重要になります。
3-2. 寝室で介護するメリットと水場・清掃の問題
寝室のメリットは、飼い主が普段使用している寝具で休めることです。
犬の近くで眠ることができれば、夜間に介助が必要になった場合の移動距離も短くなります。
ただし寝室の欠点は、水場と移動距離だと思っています。
例えば犬が夜中に排泄に失敗した場合、濡れたタオルを用意してあげたいと思うでしょうが、その水はどこからくるでしょうか。
そして汚れた寝具を交換したり、汚れた床や、場合によっては犬の体を拭く必要があります。
水だけではなく、洗い場も欲しくなります。
さらに、汚れた寝具を洗濯機まで運ばなければなりません。
もし寝室が2階で、洗面室や洗濯機が1階にあれば、そのたびに階段を往復することになります。
それと犬の体を支えながら作業するには、ベッドの横にも作業するための広さが必要になります。
人間が眠るには十分な広さの寝室でも、犬の介護をするには不便な場合があるわけです。
そしてもう一つ気にしたいことは、犬自身の移動も問題になります。
歩けるときはいいでしょうが、歩けなくなったときは抱っこになるでしょう。
移動が負担になることは、容易に想像がつくと思います。
3-3. 隣接する部屋を介護スペースに
リビングや寝室だけでなく、別の部屋を利用する方法もあります。
例えば、リビングに隣接する和室や書斎です。
犬が元気な時は仕事や趣味のために使用し、犬の介護が必要になったときには飼い主の寝室として利用する方法があります。
この場合、犬の介護専用の部屋を最初から用意する必要はありません。
ただし部屋を変更するときに、作り付けの家具を撤去するなどの手間があるなら簡単に転用できません。
家具の配置を変えたとき、布団を敷けるか。寝床までの通路が確保できるか。収納は使えるか。
こうした点を確認しておく必要があります。
また飼い主の寝室を変更する場合には、家族の生活への影響も考えたいところです。
犬の介護をする人だけでなく、ほかの家族も無理なく生活できることが重要です。
3-4. 介護場所を選ぶための判断基準
リビングと寝室の違いを整理すると、次のようになります。
| 確認項目 | リビング | 寝室 |
|---|---|---|
| 介助スペース | 家具配置による | ベッドの位置による |
| 水場への近さ | 近い場合が多い | 遠い場合がある |
| 飼い主の睡眠 | 寝具の確保が必要 | 普段の寝具を使いやすい |
| 収納 | 生活用品と競合しやすい | 収納の追加が必要な場合がある |
| 音や家族の動き | 生活音が多い | 比較的静かにしやすい |
※以上は一般的な住宅を想定した比較であり、実際には間取りによって異なります。
自分が重視したいのは、水場や収納が近いかという個別の問題だけではありません。
例えば、夜中に犬が排泄に失敗したとします。
犬の状態を確認し、寝具を交換し、床を掃除して、汚れたものを片付ける。
その後、飼い主も再び眠ります。
この一連の動作を、できるだけ無理なく行える場所はどこなのか。
その視点で介護場所を考えることが重要だと思っています。

4. 老犬介護の必要な5つの住環境
介護する場所が決まっても、寝床だけを用意すればよいわけではありません。
住宅設計の視点では、広さ、水場、収納、睡眠環境、そして温熱環境なども考える必要があります。
ここでは、特に確認したい5つの条件について説明します。
4-1. 犬の寝床と人間が介助するための広さ
犬の寝床は、ベッドの大きさだけで場所を決めていたと思います。
しかし介助が必要になると、人間が犬の横に座ったり、しゃがんだりする場所が必要になります。
寸法は目安になりますが、寝床の横に60cm程度の余裕は欲しいところになります。
ただし小型犬と大型犬では介助方法が異なりますし、補助具の有無によっても必要な広さは変わります。
そのため一度作業がちゃんと行えるか、試して問題が無いか確認する方が良いと思います。
4-2. 排泄介助・汚れた寝具の片付けに必要な水場と洗濯動線
老犬介護では、排泄の失敗や寝具の汚れによって、掃除や洗濯が増える場合があります。
しかしAAHAのガイドラインでも、シニア犬の体や寝具を清潔で乾いた状態に保つことが勧められています。
そうなると考えたいのは、床材の掃除のしやすさだけでなくなります。
例えば犬の寝床から洗面室までが遠ければ、タオルを濡らしたり、汚れた寝具を運んだりするために何度も移動することになります。
そのため、寝床と水場の距離は重要です。
また床材については、老犬の踏ん張りがきくよう滑りにくさだけでなく、耐水性や清掃性も必要になってきます。
床の素材でいえば無垢材よりもフローリングの方がいいですし、フローリングよりもはがして掃除できるタイルカーペットやクッションフロアの方がもっと掃除はしやすくなります。
また以前動画を作りましたが、耐水性のある床材でも、継ぎ目や巾木に水分が入り込む可能性があります。
そのため外して掃除ができるような対策を、あらかじめしておくと便利になります。
4-3. ペットシーツ・寝具・介護用品の収納と廃棄場所
介護が必要になると、普段から使っているもの以外にも必要なものが増えます。
ペットシーツ、タオル、替えの寝具、移動補助具などです。
こうした用品は、できるだけ寝床の近くに置きたいところです。
しかし、介護用品を置くことで介助スペースが狭くなっては意味がありません。
そこで、収納を2つに分けて考える方法があります。
一つは、毎回の介護で使う用品です。
ペットシーツやタオルなどは、寝床の近くにまとめておくと使いやすくなります。
もう一つは予備の寝具や大量の消耗品など、毎回取り出す必要のない用品です。
こちらは別の収納にまとめておいても問題ないですが、なるべくなら近くに置きたいものになります。
清潔な用品を置く場所と、使用済みのものを片付ける場所は、分けて考えたいところです。
収納量を増やすことより、使う場所・保管する場所・片付ける場所を整理すること。
これが、介護しやすい住宅を考えるうえで重要だと思います。
4-4. 夜間介護でも飼い主が十分に休める寝場所
犬の介護では、飼い主自身が休める環境が自分は最も重要だと思っています。
特に1日や1週間で終わるものではないからこそ、介護する側の体力はちゃんと整えたいことになってくるからです。
仮に老犬介護をするために、リビングで眠る場合を考えてみます。
ソファベッドみたいな方法もありますが、そうでない場合普段の寝具を活用することになります。
一般的なシングルサイズは、畳一枚より気持ち大きいサイズです。(幅100cm、長さ210cmほど)
さらに通路などが必要な場合、60cm程度が余分に必要になります。
これ以外にも犬が起き上がる場所や、介護する広さもとれるか併せて確認する必要があります。
自分は、介護専用の部屋を最初から用意する必要はないと思っています。
しかしこれも東京農業大学の増田先生が言っておられましたが、
「犬の一生から見て家の一生の方が長いことが普通。だからこそ老犬になることをあらかじめ考え、必要になったときに飼い主が対応できる準備が必要。」
というのは肝に銘じておきたいことになります。
4-5. 犬の休息と介護作業の両立
犬が安心して休める場所を考えるとき、周囲の光や音、温度も重要になります。
2025年に発表された動物病院の集中治療室での研究では、犬96匹と猫16匹を対象に、照明や騒音と睡眠の関係が調べられています。
その結果夜間に照明を暗くしていた場合、眠っている割合が1.7倍になったと報告されています。
また騒音レベルが高くなるほど、犬猫が眠っている可能性が低くなる結果も確認されています。
そのような室内の明るさを創り出すために、調光式照明や手元で操作できる小型照明が便利になります。
また、生活音についても、寝床の近くで突然大きな音が発生しないように配慮したいところです。
もう一つ、自分が重視したいのが温熱環境です。
犬は床に近い位置で休むため、人間が立っている高さで測った室温だけでは、寝床の環境を十分に把握できない場合があります。
例えば窓の近くでは冬場に冷気の影響を受けることがありますし、エアコンの風が直接当たり続ける場合もあります。
一つ一つの条件を、どうやって整えるか。それを考え、実行してみてほしいと思います。

5. 今の家で老犬介護に備える
老犬介護に対応するために、必ずしも大きなリフォームが必要になるわけではありません。
しかし何も変えず、介護の十分なスペースが取れることは少ないはずです。
しかし家具の配置や寝床の位置を見直すだけで、介護しやすくなる場合もあります。
自分はまず今の住宅でできることを確認し、それでも解決できない問題があればリフォームを考える方がよいと思っています。
5-1. 家具の移動と廃棄で場所を広げる
最初に確認したいのが、犬の寝床と周囲の家具の関係です。
例えばソファとテーブルの間に寝床がある場合、犬が元気なうちは問題ないかもしれません。
しかし介助が必要になると、人間が犬の横にしゃがめないことがあります。
その場合、家具を少し移動させるだけで改善できる可能性があります。
しかし移動だけでは不十分な場合もあります。
そのような場合は、そもそもで必要な床面積が足りてない場合があります。
そうなると床面積を広げるため、不用品を廃棄することも考えてほしいと思います。
それと吊戸棚のように、頭より高い部分に収納を付けて、その下は歩けるようにすることで、収納力を残しながら場所を作れる場合もあります。
ただし認知機能が低下した犬の場合には、急に家具の配置を変更すると戸惑う可能性があります。
そのため、必要な部分から少しずつ変更し、犬の反応を確認することが重要です。
5-2. 外しやすく滑りにくい床
犬の移動能力が低下すると、床の滑りやすさも問題になります。
まずは滑りにくく、踏ん張りがきく床に変更をしたいものです。
しかし張り替えると費用面がかかるので、まずは床の上にそのまま置けるものを想定します。
自分がオススメするのはタイルカーペットです。
「カットパイル&滑りにくい加工」が必須ですが、これを満たすと掃除が楽になります。
また張り替えも床の上に置いてあるだけので、一瞬ではがして掃除ができます。
新たに買って面積を増やしたりも可能なので、自分としてはお勧めの対策になります。

6. 新築時の老犬介護への備え
今から新築をする場合には、犬が高齢になったときの生活も想定できます。
ただし犬の介護のためだけに特別な部屋や設備を用意することが、必ずしも合理的とは限りません。
自分は普段の暮らしを便利にする間取りが、必要になったときには介護にも対応できることを重視しています。
6-1. 必要になったら介護に使える部屋が便利
自分は老犬時の介護を考えるなら、リビングの隣に、畳コーナーや和室の設置が便利だと思っています。
広さの目安は来客があったときにその場所で寝れる。くらいの広さをイメージしてほしいと思います。
メリットですが、リビングの横に畳があれば、普段使いの時はリビングを広く使えます。
そして介護で必要になったら、布団だけあればマットレスなしでも寝ることができます。
そしてリビングと和室の間に建具があれば、仕切ることも可能ですし、少しだけ開いて音を聞いたり、夜の明るさの調整にも使えます。
ただし注意点もあります。
本物のい草を使うと、い草の香りのせいか犬が畳の上で粗相をしやすくなるそうです。
そのため元気な時から、和室には入らせないような工夫が必要になってきます。
場合によっては、わざと段差を付けて畳コーナーのようにすることも有効かもしれません。
6-2. 水場・収納・照明・コンセントと介護動線
新築時には、将来の介護を想定して設備の位置を考えておくこともできます。
例えば犬の寝床になる可能性がある場所の近くに、照明やコンセントを設けておく方法です。
夜間介護が必要になったとき、寝ている場所から照明を操作できれば便利でしょう。
また普段は生活用品を入れている収納を、必要になったときに介護用品の収納へ変更できるようにする方法もあります。
ここで注意したいのは、設備を増やすことが目的にならないようにすることです。
例えば、犬の介護のために専用の水栓や洗濯機を設けなくても、洗面室が近くにあれば十分に対応できる場合があります。
むしろ住宅全体の配置を考え、今ある設備を使いやすくする方が合理的なこともあります。
これは犬の介護だけでなく、普段の家事動線にも関係することです。
6-3. 介護場所の住環境
もう一つ、自分が住宅設計で重視したいのが温熱環境です。
犬の介護が必要になると、これまでとは違う場所で過ごす時間が増える場合があります。
例えば2階で寝ていた飼い主が、介護のために1階の書斎で眠るようになるかもしれません。
その部屋が寒かったり暑かったりすれば、飼い主も十分に休めない可能性があります。
また犬自身も床に近い位置で過ごすため、床面の温度や窓からの冷気、エアコンの風などに注意したいところです。
野島建設では、AIR LOOP SYSTEMによって住宅内の温度差を小さくすることを重視しています。
これは犬の介護のためだけに考えた設備ではありませんが、住宅内の温熱環境を安定させることは、寝場所を変更するときにも役立つと考えています。
例えば普段は短時間しか使用していない書斎でも、介護のために寝室として使うことになれば、その部屋の温熱環境が重要になります。
新たにエアコンの設置なども考えなくてすみます。
もちろん、住宅性能が高ければ介護の問題がすべて解決するわけではありません。
しかし住宅内のどの場所でも快適に過ごしやすいことは、将来の暮らし方の選択肢を増やすことにつながります。
意外だと思いますが、犬と飼い主の両方を考えた住宅設計の価値だと思っています。

7. 犬にも人にも優しい家へ
老犬介護に備えた住まいを考えるとき、大切なのは犬の寝床や介護用品を用意することだけではありません。
犬が元気なうちは、リビングと寝室など複数の場所を使い分けられるかもしれません。
しかし足腰が弱くなったり、移動に介助が必要になったりすると、それまでの生活を続けることが難しくなる場合があります。
そのとき重要になるのが、犬の状態に合わせて住宅の使い方を変更できることです。
介護するための広さ、水場や洗濯機までの距離、収納、照明、温熱環境、そして飼い主自身が休める場所。
これらは別々の問題に見えますが、実際にはつながっています。
自分が特に重要だと思うのは、犬の状態が変わっても、飼い主の生活をできる限り維持できることです。
犬の介護は、飼い主の生活と切り離して考えることはできません。
犬が安心して暮らせることと、飼い主が無理なく介護を続けられること。
その両方を考えた住まいづくりが、老犬介護への備えとして重要だと思っています。
今回の文章が、皆様にとって何かしらの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
7-1. 執筆者プロフィール
野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員
富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒。
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1,000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登半島地震による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。
投稿日 2026年10月31日
~温かい人が集まる暖かい家 NOJIMAのゼロ・ハウス~
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