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犬がフローリングで滑る原因は?床の滑りにくさと対策を一級建築士が解説

犬がフローリングで滑ると、「もっと滑りにくい床にすればいい」と考えるかもしれません。

しかし弊社のドッグランのお客様の感想では、同じ床であっても「すごく走りやすい」と言う飼い主もいれば、「うちの犬には滑りやすい」とおっしゃる方もいます。

結局、犬のによって床との相性は違うようです。

今回は、床の滑りにくさを示す「C.S.R・D’」という聞きなれない数値や、犬側の違い、今の家でできる対策まで、一級建築士の視点から考えます。

 

1. 犬がフローリングで滑る理由

犬が家の中を歩いていて、足が横に流れたり、走り出した瞬間に空回りするような動きをすることがあります。

当たり前ですが一般的な住宅のフローリングは、人間が生活することを前提につくられています。

人間が普通に歩いて滑らないことと、犬にとっても滑りにくいは同義ではありません。

犬は人間のように足裏全体を床につけて歩くわけではなく、主に肉球で床を捉えながら移動します。

そのためフローリングでは、走り出したときや方向を変えたときに足が滑ることがあります。

1-1. 犬も床も変化する

「新築した頃は滑っていなかったのに、最近よく滑るようになった」

このような場合、床だけが変わったとも、犬だけが変わったとも限りません。

犬は年齢を重ねれば筋力や歩き方が変わります。

一方、床も長く使っていれば表面は少しずつ摩耗しますし、皮脂や汚れが付着することもあります。

ワックスやコーティングをしている場合には、その状態によっても滑りやすさは変わります。

つまり、犬と床の両方が変化した結果、以前は問題にならなかった滑りが目立つようになることもあります。

 

2. 犬が床で滑ると何が問題?

床の滑りを確認するとき、犬が普通に歩けているかだけを見てしまいがちです。

しかし犬はいつも家の中を、ゆっくり歩いているだけではありません。

家族が帰ってきたときに玄関へ走ったり、リビングで急に方向を変えたりします。

ソファやベッドから飛び降りることもあります。

このような動きをするときには、普通に歩いているときよりも床を強く蹴ったり、踏ん張ったりする必要があります。

そのため、歩いているときには問題のない床でも、走り出しや方向転換では滑るということがあります。

 

2-1. 犬と人では滑り方が違う

人間が歩いて「この床は全然滑らない」と感じても、それだけでは犬にとって安全とは判断できません。

人間と犬では足の形も、床との接し方も違います。

また体重も異なるので、床にかけられる圧力も全く異なります。

そしてそれ以外にも、床に慣れているとか、犬が筋力で滑るのを防いでいるだけなこともあります。

だから自分は、犬の床を考えるときに、人間が歩いた感覚だけで判断しない方がいいと思っています。

 

3. 犬に滑りにくい床「0.394」って何?

それでは床材をありとあらゆるものを取りそろえ、犬に走らせればいいのでしょうか。

さすがにそれは非効率だと思うので、犬にとってどのくらい滑りにくい床なのかを示す、C.S.R・D’(シー・エス・アール・ディーダッシュ)という指標について話をしていきます。

3-1. C.S.R・D’とは

C.S.R・D’は、犬が床を歩いたときの滑りにくさを考えるための指標です。
犬の肉球の柔らかさを再現した発泡ゴムと、足裏の毛の影響を再現した麻織物を組み合わせた試験片を使います。
これを実際の床に置き、一定の荷重をかけて引っ張ったときの抵抗を測定することで、床の滑りにくさを数値化します。

この数字が高いほど、床の滑り抵抗が大きく、滑りにくい床ということになります。

 

 

3-2. 数字は床を比べるための目安

C.S.R・D’のような数字がないと、床の見た目や人間のさわり心地だけでは、「こちらの床の方が滑りにくい」と客観的に比較することは難しいと思います。

そこでこの数値をつかうことで、床材を比較する一つの目安になります。

 

ただしここで注意したいのは、犬は歩くだけではなく、止まった状態から歩き出し、走り、方向転換し、ときには勢いよく飛び出します。

そのため次に解説しますが、状況によって適した数値基準は異なります。

いわゆる「0.394」とか「0.4」という数字が必要な数字と独り歩きしていることがありますが、本来はそこで何をするかによって必要な数値は変わってきます。

3-3. 「0.394」は小走りの目安

犬は動き方によって、必要とされる滑りにくさが変わります。

よく使われる0.394という数値は、小型犬の84.1%が「小走り」を支障なく行えるとされた目安です。

それ以外の場合、歩き出しが0.311、回り込みが0.390、飛び出しでは0.575となっています。

つまりその場所は普通に歩く場所なのか、走る場所なのか。

それとも勢いよく飛び出す場所なのか。

それを見極めていけば、おのずと必要な床の性能は決まってきます。

 

しかしこの数値であっても、犬種や年齢によって実際は異なります。

具体的には5章で解説をしますので、そちらを参照にしていただけたらと思います。

 

3-4. 0.394以下なら危険なのか

反対に、「0.394より低い床なら危険なのか」という疑問も出てくると思います。

これも、そのように単純には判断できません。

同じ床でも、犬の体格や年齢、筋力などによって滑り方は変わります。

そのため0.394を超えていれば絶対安全でもなければ、0.394を下回った瞬間に危険な床になるわけでもありません。

 

もちろん数字を無視する必要はないですが、絶対視することも危険です。

自分は0.394などの数字は一つの物差しとして使い、その犬の行動にあったものを探すことが重要だと考えます。

4. C.S.R・D’以外にも考えたい床の要素

ここまで読むと、「家の中で飛び出すことはあまり考えなくていいから、C.S.R・D’が0.394以上の床を選べばいい」と思うかもしれません。

しかし残念ながら、自分はそこまで単純には考えていません。

その理由は、床の滑りやすさに影響を及ぼす要素はC.S.R・D’以外にも存在するからです。

4-1. 床表面の凹凸や質感

床の表面の凹凸や質感も重要な要素です。

C.S.R・D’は実際の床表面で測定されるため、表面の違いも数値には反映されます。

ただし試験片は、当たり前ですが犬の足そのものではありません。

犬が爪を使って踏ん張る動きなど、数値だけでは分からない部分もあると自分は考えています。

 

犬は肉球だけで歩いているわけではなく、動きによっては爪も使いながら踏ん張ります。

そのため単純な滑りにくさの数値だけではなく、犬の足が床を捉えやすい表面になっているかという点も確認したいところです。

4-2. 床の沈み込み方

床の硬さも重要です。

沈み込む方が歩きやすい場合があるからです。

しかし柔らかすぎると足元が沈み込みすぎて、逆に踏ん張りにくくなる可能性があります。

結局のところ、柔らかければ柔らかいほど良いとは限りません。

適度に足を受け止めながら、しっかり体を支えてくれること。

こうした床の沈み込み方も、滑りにくさを考えるうえでは見ておきたい部分です。

4-3. 濡れや汚れ

もう一つ忘れてはいけないのが、実際に生活していると床の状態は常に同じではないということです。

犬が水を飲んだ後には床に水滴が落ちることがありますし、散歩から帰った直後なら足裏が濡れていることもあります。

さらに、よだれや皮脂、ホコリなどが床についていくこともあります。

 

つまり新品で乾いた状態の床が滑りにくかったとしても、実際の生活でもずっと同じ滑りにくさが保たれるとは限りません。

特に水まわりや犬がよく過ごす場所では、床材そのものの性能だけではなく、汚れを落としやすいか、普段から掃除しやすいかということも大切になります。

 

このように自分としては、C.S.R・D’の数値だけを見るのではなく、表面の質感、床の硬さや沈み込み方、そして実際に生活したときの床の状態まで含めて考える必要があると思っています。

5. 犬側にもある滑りやすさの要因

ここまで床側の話をしてきましたが、実際には床だけを変えればすべて解決するわけではありません。

同じフローリングの上でも、普通に歩ける犬もいれば、足が横へ流れるように滑る犬もいます。

その違いには、犬種や体格だけではなく、爪の長さ、足裏の毛、肉球の状態、筋力、年齢なども関係します。

 

5-1. 爪や足裏の毛も確認する

犬の爪が伸びていると、肉球より先に爪が床へ当たり、踏ん張りにくくなることがあります。

また肉球の間から毛が伸びている場合も、肉球そのものが床へ接触しにくくなります。

このような場合、犬側を改善すると滑らなくなる場合もあります。

もちろん爪を短くしたり足裏の毛を整えたりすれば、どんな床でも大丈夫という意味ではありません。

床側と犬側の両方を見て、適切な環境を整えることが大切です。

5-2. 老犬による筋力低下

若い頃には多少滑りやすい床でも、筋力があれば踏ん張ることができます。

走ったあとに止まったり、曲がったりすることもできます。

ところが年齢を重ねて筋力やバランスを取る力が変わってくると、以前は問題にならなかった場所で足が流れることがあります。

つまり老犬になって急に床が悪くなったのではなく、もともとあった小さな滑りやすさが、年齢を重ねたことで表面化したと考えることもできます。

 

新築や改修したときに普通に走れていたからといって、その床が10年後も同じように使えるとは限りません。

犬の状態は変わりますし、床も摩耗したり、表面の状態が変わったりします。

そのため「昔は滑らなかった」ということだけではなく、今の犬にとってどうなのかを見直す必要があります。

 

6. 今の家でできる対策

犬が滑っているからといって、すぐにフローリングを全面的に張り替える必要はないと思います。

まず確認したいのは、犬が実際にどこで滑っているのかです。

6-1. まず滑る場所を探す

犬は家の中すべてを同じように使っているわけではありません。

例えば、玄関へ向かって走る場所、リビングへ入るときに曲がる場所、寝床から立ち上がる場所、ソファから降りる場所などがあります。

普段歩いている場所では滑っていなくても、こうした場所だけで足が流れていることがあります。

そのため、犬が滑っているのを見つけたら、家全体を見るのではなく、「どこで」「どんな動きをしたときに」滑っているのかを確認します。

 

6-2. 必要な場所だけ対策する

滑る場所が分かれば、家全体を変えなくても対策できることがあります。

例えばよく走る場所や方向転換する場所だけに、マットやタイルカーペットを敷く方法があります。

ソファからいつも同じ場所へ降りるのであれば、その着地点だけを滑りにくくすることもできます。

水飲み場の周辺であれば、床材だけでなく、水で床が濡れていないかも確認した方がよいと思います。

つまり全面的に対策する前に、犬が本当に必要としている場所から考えるということです。

 

6-3.  ワックスやコーティングという方法もある

マットやカーペットを敷く以外にも、現在のフローリングへ滑り止め用のワックスやコーティングを施工する方法があります。

現在住んでいる家でも対応できるため、床を張り替えるより取り入れやすい場合があります。

ただし商品によって滑りにくさや耐久性、メンテナンス方法は違います。

また現状の床が、そのワックスやコーティングに対応できない可能性もあります。

そのため本当に施工できるのかどうかを含め、専門業者に確認をし、そのうえでどの程度滑りにくくなるのか、施工後の管理はどうするのかまで確認した方がよいと思います。

7. 新築時に考えたいこと

新築や大きなリフォームであれば、最初から犬の滑りを考えて床材を選ぶことができます。

もちろん「ペット対応の床材を選べば終わり」ではありません。

場所によって違う動きをあらかじめ想定し、必要な床を選んであげる必要があります。

7-1.実際の商品を取り寄せる

新しい家は、床を自由に選べます。

しかしここまで書いてきたように、結局のところ犬に最適な床は、数値ではなく実際に使って試すことだと自分は考えています。

そのため弊社なら、ペット共棲住宅の展示場は歩いて実際の床を5種類体験できます。

もちろんこのような対応ができることは少ないと思いますので、必要に応じてサンプルを取り寄せることをお勧めします。

そしてできる事なら、大きなサンプル(1坪くらい)もらえたら完璧です。

実際にそれを仮において歩くことで、見えることが増えるので自分はこれをお勧めしたいと思います。

7-2. 今だけでなく数年後も考える

人も犬も何十年も家で過ごしますが、その間に年齢を重ねます。

筋力や歩き方も変わります。

また床も同じように、摩耗や汚れ、コーティングの状態が変化します。

そのため新築したときの犬にだけ合わせるのではなく、数年後に犬も床も変わることを前提にしておくことが大切だと思います。

 

将来滑るようになったときに、部分的にマットを敷けるのか、コーティングができるのか、床を張り替えやすいのか。

そこまで考えておけば、犬の状態が変わったときにも対応しやすくなります。

犬にとってよい床は、「この床材なら絶対に大丈夫」と一つの商品で決まるものではありません。

犬の動き、年齢、床の滑りにくさ、硬さ、そして暮らす場所。

それらを合わせて考えることが、犬と長く暮らす家の床選びでは大切だと自分は考えています。

8. まとめ

弊社のドッグランでも、同じ床を「滑りにくくて走りやすい」と感じる飼い主もいれば、「うちの犬には滑りやすい」と感じる方もいます。

それだけ犬と床の相性は一つではありません。

だからこそ0.394という数値だけで安全かどうかを決めたり、「ペット対応」という言葉だけで床材を選んだりするのは危険だと自分は思います。

 

犬の年齢や動き、床を使う場所まで一緒に考えることが重要です。

床は犬が毎日触れる場所だからこそ、数字と実際の暮らしの両方から考えていきたいと思います。

今回の文章が、皆様の家づくりに少しでも役に立ちましたらこれ以上の幸せはありません。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

8-1. 執筆者プロフィール

野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員

富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。

 

投稿日 2026年9月5日

 

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