猫の避難は在宅避難をお勧めする理由 一級建築士が猫の避難の難しさを解説
2026年10月10日
もし今、避難指示が出たとしたら、猫とどこへ避難するでしょうか。
その時になって初めて「猫も避難所へ連れて行けるのだろうか」「何を持っていけばいいのだろう」と調べていては、十分な準備ができないかもしれません。
猫との避難では、人間だけの避難とは全く異なる問題があります。
フードや水、リード、薬などを持って移動するのは人間と一緒ですが、避難所が受け入れてくれるとも限りません。
だからこの記事では、単に「猫の避難所問題」という話だけではなく、猫とどう避難するのか、避難所へ行けない時はどうするのか、そして自宅で避難生活を続ける方法まで考えていきます。
※犬との避難についてはコチラをご参照ください。↓
https://nojima-k.jp/staff-blog/post-20193/
目次
1. 猫の同行避難・同伴避難とは
猫の災害対策について調べると、よく出てくる言葉が「同行避難」です。
同行避難とは、災害が発生した時に、飼い主が猫と一緒に安全な場所まで避難することです。
例えば地震によって自宅にいることが危険になり、猫をキャリーバッグへ入れて避難所まで移動する。
これも同行避難になります。
ここで最初に知っておきたいのが、「猫と一緒に避難所まで行くこと」と「避難所で猫と一緒に生活すること」は別だということです。
1-1. 同行避難とは
同行避難は、猫と一緒に安全な場所まで移動することを指します。
犬であればリードを付けて一緒に歩く場合もありますが、猫の場合は基本的にキャリーバッグなどへ入れて移動することになります。
普段は完全室内飼いで、外へ出るのは動物病院へ行く時くらいという猫も多いと思います。
特に猫はずっとキャリーバックの中だとストレスがかかることが多いので、長時間の移動や拘束はストレスがかかると思います。
1-2. 同伴避難とは
同行避難に似た言葉に「同伴避難」があります。
同行避難が、猫と一緒に安全な場所まで避難する行動を指すのに対し、同伴避難は、避難先で飼い主が猫を飼養管理する状態を指します。
ただし同伴避難だからといって、人と猫が同じ部屋で一緒に生活できるとは限りません。
避難所によっては、人は体育館などで生活し、猫は別室やペット専用スペースで管理される場合があります。
そのため、
「猫を避難所へ連れて行ける」=「猫と同じ場所で寝泊まりできる」
ではありません。
これは犬との同行避難でも同じです。
1-3. 避難所で猫と一緒に過ごせるとは限らない
猫を受け入れてくれる避難所でも、その後どのように生活するかは施設によって違います。
別室で管理する場合もありますし、ペット専用スペースへケージを並べる場合もあります。
普段は家の中を自由に動き、好きな場所で寝たり、隠れたりしている猫が、災害をきっかけに知らない場所へ連れて行かれ、長時間ケージの中で過ごすことになるかもしれません。
だから避難所の場所を確認する時には、「猫を連れて行けるのか。」ということだけではなく、「連れて行った猫は、どこでどのように生活するのか。」
ここまで確認しておいた方がいいと思います。
1-4. 自治体や避難所によって対応は違う
ペットの受け入れ方法は、自治体や避難所によって違います。
同じ市町村でも、避難所によって猫を管理する場所が違う可能性がありますし、災害の種類によって開設される避難所自体が変わることもあります。
そのため、自宅から近い避難所について、
猫を連れて行けるのか。
猫はどこで過ごすのか。
キャリーだけでいいのか、別にカートのようなものが必要なのか。
このあたりは事前に確認しておいた方が安心です。
ただ猫の場合は犬とは異なり、避難所を調べるだけでは十分ではありません。
避難所へ行く前に、そもそも猫を家から連れ出せるのか。
ここについて考えてみたいと思います。

2. 災害時に猫を捕まえられますか?
猫との同行避難を考えた時、犬との避難で決定的に気になるのは、そもそも猫をすぐに捕まえられるのかということです。
避難所の場所を調べて、防災用品を準備し、キャリーバッグを用意していても、猫を捕まえられなければ家から連れ出すことができません。
普段なら名前を呼べば出てくる猫や、簡単に抱っこできる猫でも、地震の大きな揺れや物が落ちる音、家族が慌ただしく動く様子に驚けば、いつもと同じ行動をするとは限りません。
しかも猫の場合多頭飼いも多いです。
一匹ですら苦労するのに、二匹三匹となったらかなり困難を極めます。
2-1. 普段から猫が隠れる場所を知っておく
猫には、それぞれ落ち着く場所があると思います。
ベッドの下や押し入れの奥、家具の隙間、棚の裏など、普段からよく入り込む場所です。
何も起きていない時なら、「またあそこにいる」と思うだけかもしれません。
しかし災害時には、その場所を知っているかどうかが大きな違いになるかもしれません。
だから防災用品をそろえることと同じくらい、「この猫は怖い時、どこへ逃げるのか」を普段から見ておくことも、猫との防災だと思います。
そして住宅側から考えると、もう一つ気になることがあります。
普段は安全な隠れ場所でも、地震によって家具が傾いたり、物が落ちたりすれば、災害時には危険な場所へ変わる可能性があります。
猫がよく隠れる場所の周囲に、大きな家具や倒れやすい物がないか。
そこまで確認しておくと、猫を探しやすくするだけではなく、猫自身の安全にもつながります。
2-2. 見つけても普段通りとは限らない
さらに、猫を見つければ終わりでもありません。
強い揺れや大きな音で興奮している時には、近づくとさらに奥へ逃げたり、抱こうとすると暴れたりする可能性があります。
自分が知っている範囲では、パニックになった猫を確保する方法として、大きなタオルや洗濯ネットを使う方法もあります。
ただ自分はここで特定の方法を覚えるより、災害時には、普段と同じように猫を捕まえられないかもしれない。と考えておくことが大切だと思います。
2-3. 猫の捜索中の脱走に注意
もう一つ怖いのが、猫を探している途中で外へ逃げてしまうことです。
災害時には、出入り口が開かなくなる場合があり、玄関ドアなどを開けっ放しにすることもあります。
それ以外にも地震で窓などが壊れれば、外への逃げ道が生まれることもあります。
そのような時に猫がそのまま外へ出てしまえば、避難どころではなくなります。
そのため猫との避難では、
見つける。
捕まえる。
逃がさない。
この三つを一つの流れとして考えておく必要があります。
2-4. 多頭飼いはさらに難易度アップ
一匹なら見つけて捕まえられたとしても、複数いる場合はさらに難しくなります。
一匹目をキャリーバッグへ入れている間に、別の猫がさらに奥へ隠れるかもしれません。
猫によって隠れる場所も違うでしょうし、一匹は二階、一匹は家具の裏ということも考えられます。
そのため、誰がどの猫を探すのか。
キャリーバッグは全頭分あるのか。
家族が一人しかいない時でも対応できるのか。
一度、実際の生活を想像してみるだけでも問題が見えてくると思います。

3. 猫を実際に連れ出してみる
猫を無事に捕まえることができたら、次は家から安全に連れ出す必要があります。
猫の場合避難所まで抱っこして歩くという方法は、基本的には不可能と思いましょう。
腕から抜けてしまえばそのまま逃げてしまう危険がありまし、何より自分や猫の避難用品もありますし手を使わずに避難できるとも限りません。
そのため猫との同行避難では、キャリーバッグなどへ入れて移動することが基本になります。
3-1. キャリーバッグはすぐ使える場所に
キャリーバッグを持っていても、押し入れの一番奥や物置の高い場所に置いてあれば、災害時にはすぐ使えません。
地震で物が倒れて、収納そのものを開けられなくなる可能性もあります。
だからキャリーバッグは、防災用品と同じように、できるだけ取り出しやすい場所へ置いておきたいものです。
3-2. キャリーバッグに慣らしておく
もう一つ考えたいのが、猫にとってキャリーバッグがどのような物になっているかです。
例えば病院へ行く時だけ、キャリーバックが使われるとします。
猫はキャリーバックを見ることで、嫌な思いをフラッシュバックするかもしれません。
「キャリーバック=嫌」ということにならないように、キャリーを普段から猫ベッドとして使うことや、日常的に慣らしておくことをお勧めします。
普段からキャリーバッグを部屋へ出しておき、中に普段使っている毛布を入れる。
扉を開けたままにして、自分から入って休めるようにする。
閉じられた場所が苦手な猫の場合は、上部分を外せる商品などを選ぶといいでしょう。
災害のためだけに特別な訓練をするより、普段の生活の中へ入れてしまう方が続けやすいと思います。

3-3. 多頭飼いでは「運べるか」まで確認する
猫をキャリーバッグへ入れられたとしても、一つ目のステップが終わっただけです。
本番は、避難所まで移動する必要があります。
例えば猫が5kg、そこへキャリーバッグの重さが加わります。
当然フード、水、猫砂、人間の防災用品も持つことになります。
一匹なら何とか持てても、二匹、三匹となれば一気に難しくなります。
だから多頭飼いの場合は、全頭をキャリーへ入れられるか。も重要ですが、本当に全て運べるか。ここまで考えておいた方がいいと思います。
しかも災害は家族全員が家にいる時とは限りません。
一人しかいない時でも対応できるのか。
子どもの手を引きながら運べるのか。
高齢の家族でも持てるのか。
机の上で考えるだけではなく、一度同じくらいの重さを入れて持ってみると、かなり現実が見えてきます。
3-4. 避難経路も一つだけに決めない
自分は能登半島地震の仮設住宅建設に携わった時、普段使っている道路が災害によって大きく変わる状況を実際に見ました。
地盤が沈み、マンホールだけが道路から突き出している場所。
橋そのものは残っているのに、その手前の道路が沈み、車では橋までたどり着けない場所。
災害が起きれば、普段通っている道路をそのまま使えるとは限りません。
猫の場合はキャリーバッグを持って移動するため、道路の段差や瓦礫、富山県なら積雪などがあればさらに歩きにくくなります。
だから避難所の場所を知るだけではなく、猫を運びながら、そこまで本当に移動できるのか。
一度試してみるとわかることが多いと思うので、実際に試すことをお勧めします

4. 猫との同行避難で必要な持ち物
猫を避難先まで連れて行く準備ができたら、次に考えたいのが持ち物です。
人間だけでも水や食料、薬、着替えなどが必要になります。
猫と一緒に避難する場合は、それとは別に猫用品も持っていかなければなりません。
ただ自分は何でも持っていこうとするより、猫が避難先で生活するために必要な物を優先する方が現実的だと思います。
4-1. フードと水
まず必要なのは、普段食べているフードと水です。
災害時に人間用の食料と同様に、猫用のフードまで十分に用意されるとは限りません。
特に療法食を食べている猫や、決まったフードしか食べない猫の場合は注意が必要です。
災害だからといって、急に別のフードを食べてくれるとは限りません。
そのため普段食べている物を少し多めに持ち、古い物から使って新しい物を補充する形にしておけば、特別な防災食を用意しなくても備えやすいと思います。
4-2. 薬・療法食・猫の健康情報
毎日薬を飲んでいる猫なら、その薬も必要です。
持病やアレルギー、療法食の種類、かかりつけの動物病院なども、分かるようにしておいた方がいいと思います。
スマートフォンの中だけに情報を入れておく方法もありますが、災害時には充電が切れたり、通信が安定しなかったりする可能性があります。
そのため最低限の情報は、紙でも持っておくと安心です。
また飼い主自身がけがをして、誰かに猫の世話をお願いすることになった時にも、紙で渡せれば説明しやすくなります。
4-3. 猫砂とトイレ用品
犬との避難とかなり違う部分がトイレ関係です。
軽量タイプの猫砂やポータブルトイレを、普段から避難用トイレをとして使ってみると良いでしょう。
とくに猫砂は、それなりの量を持つとかなり重くなります。
だから単純に、「一週間分備蓄しておけばいい」という話だけではなく、実際に避難する時、どのくらい持っていけるのかまで考えたいところです。
また普段と違う猫砂を嫌がる猫もいるため、避難用として別の商品を使うのであれば、災害が起きてから初めて使うのではなく、一度試して慣らしておく方がいいと思います。
4-4. キャリーバッグや移動用品
当然ですが、猫を運ぶためのキャリーバッグも必要です。
普段あまり使わない物ほど、いざ使おうとした時に壊れていることがあります。
猫を入れた状態で壊れれば、そのまま脱走につながる可能性があります。
そのためキャリーバッグは、持っているだけではなく、定期的に状態を確認しておいた方がいいと思います。
4-5. 猫の写真と飼い主の情報
猫が逃げてしまった時のために、猫の写真も準備しておきたい物です。
できれば猫だけの写真だけでなく、自分や家族と一緒に写っている写真もあると、飼い主であることを説明する材料になります。
飼い主の名前や電話番号、住所なども分かるようにしておきます。
ここでもスマートフォンだけに頼らず、紙でも持っておく方法があります。
4-6. マイクロチップの登録情報も確認する
マイクロチップを装着している猫であっても、それだけで安心とは言えません。
登録されている電話番号や住所が昔のままだと、保護されたとしても連絡がつかない可能性があります。
そのためマイクロチップを装着している場合は、現在の連絡先が正しく登録されているかも確認しておきたいところです。
当たり前ですが、マイクロチップは猫の現在地が分かるGPSではありません。
だからこそ逃げた後に見つけてもらう準備だけではなく、そもそも脱走させないことが重要になります。

5. 避難先で猫を脱走させない
猫を無事に捕まえ、キャリーバッグへ入れ、避難先まで連れて行くことができた。
ここまでくれば少し安心したくなります。
しかし猫は避難した先で逃げてしまうことがあります。
しかし避難所や親族宅、車などは、猫にとって慣れない環境です。
そのような場所で脱走してしまえば、どこに行くか皆目見当がつかなくなるので注意が必要です。
5-1. 普段のような行動をするとは限らない
普段おとなしい猫でも、避難先では同じとは限りません。
知らない建物。
知らない人。
ほかの犬や猫。
そのような環境の中でキャリーを開ければ、驚いて飛び出す可能性もあります。
だから「うちの猫は逃げない」と考えず、知らない場所では普段と違う行動をするかもしれない、という前提で考えた方がいいと思います。
5-2. キャリーを開ける時が一番危ない
避難先では猫へ水を飲ませたり、トイレを使わせたりするために、キャリーバッグを開ける場面があります。
その時に周囲が完全に閉じられた空間ならいいですが、一瞬の隙に外へ出る可能性があります。
猫を避難先に連れて行った後、どこでキャリーを開けるのかを考えておくことが、大切になってきます。
5-3. 一度逃げると簡単には見つからない
自分が以前勉強していた中で、災害時に猫が避難先から逃げてしまい、その後見つけられなくなることがあると聞きました。
だからこそ地震時の迷子対策や所有者表示、マイクロチップが重要になってきます。
まずは逃げられない環境を整え、逃げても見つけられるように準備することが重要になります。

6. 避難所での生活は猫にも負担
無事に避難所へ着き、脱走しないよう管理できたとしても、それで問題が終わるわけではありません。
避難所では、猫は普段とは全く違う環境で生活することになります。
猫は普段、自宅の中で自分の好きな場所へ移動します。
暑ければ涼しい場所へ行く。
落ち着きたければ隠れる。
人から離れたければ別の部屋へ行く。
しかし自宅のような自由さは、避難所には期待できません。
6-1. 知らない人・犬猫・音・においに囲まれる
避難所には大勢の人がいますし、ほかの猫や犬がいる可能性もあります。
人の話し声や物音、犬の鳴き声、普段とは違うにおいなど、自宅にはない刺激が増えます。
しかも災害後なので、余震やサイレンなどが続くこともあります。
ただでさえ普段とは違う状況なのに、生活する場所まで突然変わる。
猫にとっては大きな環境変化になってしまいます。
6-2. 長時間ケージで過ごす可能性がある
親戚の家でしかも猫に理解がある家庭でもない限り、猫を自由に歩かせることは避難生活では基本的に難しいと思います。
そのため必然的にケージやキャリーの中で過ごす時間が、長くなる可能性があります。
何時間でもストレスなのに、数日、時には数週間生活することもあるでしょう。
猫の防災記事にも、長期のケージ飼育によるストレスが猫特有の避難課題として挙げられています。
7. 避難所に行かない在宅避難のメリット
ここまで猫との同行避難について考えてきました。
6章まで書いたように、猫との避難はかなり大変です。
しかし自宅そのものが安全で、そこで生活を続けられるのであれば、6章までの問題はかなり軽減されます。
そのため自分としては、猫を無理に別の場所へ移動させない在宅避難はかなりオススメしたい選択肢だと思います。
7-1. 猫を捕まえて連れ出す必要がない
在宅避難であれば、災害直後に猫を捕まえてキャリーバッグへ入れ、外へ連れ出す必要がありません。
猫が安全な場所へ隠れているのであれば、無理に引っ張り出して移動させる必要もなくなります。
もちろん家の中そのものが危険なら別です。
ただ自宅が安全なのであれば、猫を捕まえられるかどうかが避難の成否を左右しなくなるというのはかなり大きな違いだと思います。
7-2. 避難先で脱走する危険を増やさずに済む
在宅避難であれば、知らない避難所や親族宅へ猫を連れて行く必要もありません。
そのため、避難先でキャリーを開けた瞬間に逃げるという問題も起こりにくくなります。
自宅でも地震によって窓や建具が壊れれば脱走する可能性はありますが、少なくとも猫自身が知らない場所へ移動することはありません。
自分は、猫との防災を考えるうえで、この点はかなり大きいと思っています。
7-3. いつもの部屋・寝床・においを残せる
在宅避難であれば、生活する場所そのものは変わりません。
いつもの部屋。
いつもの寝床。
いつもの隠れ場所。
そして家族や猫自身のにおいが残っている家です。
停電や余震などによって普段通りとはいかなくても、知らない場所へ移動するよりは、環境の変化を減らすことができます。
7-4. いつものトイレと猫砂を使える
猫にとって、これはかなり大きなメリットだと思います。
避難所まで猫砂を運ぶ必要がなく、普段使っているトイレをそのまま使えます。
フードや水についても、備蓄してある物をそのまま使うことができます。
猫だけでなく人間の防災用品も運ぶことを考えれば、自宅にある物をそのまま使えるというのは大きな違いです。
7-5. 多頭飼いほど在宅避難の意味は大きくなる
多頭飼いほど、避難そのものの難易度は上がります。
だからこそ自宅が安全なのであれば、全頭を無理に移動させず、そのまま生活できる準備をしておく意味も大きくなると思います。
ただし、ここで絶対に間違えてはいけないことがあります。
在宅避難は、猫がいるから家に残るという話ではありません。
あくまで、自宅が安全だから、在宅避難という選択肢を持てる。という順番です。

8. 在宅避難の可能性の見極め
在宅避難には、猫を無理に移動させなくていいという大きなメリットがあります。
ただし、自宅が危険な状態なのに「猫を連れて避難するのが大変だから」という理由で、そのまま家に残るのは違います。
在宅避難を選べるのは、あくまで災害後もその家で安全に生活できることが前提です。
この章では、その確率を少しでも上げる話をしていきたいと思います。
8-1. 住宅が強いか
大きな地震によって住宅が傾いている。
柱や壁に大きな被害が出ている。
余震によって倒壊する可能性がある。
このような場合は、猫が家の中で落ち着いていたとしても、そのまま生活を続けるべきではありません。
逆に言えば、これらをクリアできるような強度の高い住宅にしておおくと、在宅避難できる可能性は上がります。
特に災害が起きてから考えてもダメなので、平時の時から家を強くしておく必要ああります。
8-2. 浸水や土砂災害では早めの判断が必要になる
住宅がどれだけ強くても、それだけでは防げない災害があります。
例えば河川の氾濫や津波、土砂災害や大火災です。
こうした災害は、「家が強いから大丈夫」とはなりません。
ただし猫を探す時間や興奮度合いは地震よりは低いと思われるので、まだ避難はしやすいかと思います。
しかし災害時ギリギリになってから行動するのでは選べる選択肢は減るので、早めの行動が重要になってきます。
またハザードマップなどを確認し、自宅周辺にどのような災害リスクがあるのかを普段から確認しておきましょう。
8-3. 一つの避難方法にこだわらない
自分は「災害が起きたら絶対に在宅避難」と、決めつけるのは良くないと思っています。
自宅が安全なら在宅避難なのは間違いないですが、下記のような避難先を持っておく方が現実的です。
避難所。
親族や知人宅。
車中避難。
「まさか!」が起きるのが災害時です。
柔軟な対応ができるよう、どの状況になったらどこへ避難するかまで考えておくことが大切だと思います。
9. 在宅避難を可能にする住まいとは
自宅が安全であれば、在宅避難にはかなり大きな意味があります。
ただし在宅避難は、単純に「家に残る」という話ではありません。
災害が起きた後も、その住宅で猫と生活を続けられる状態なのか。
住宅会社としては、ここまで考える必要があると思っています。
9-1. 災害後も倒壊しない住宅
まず必要なのは、住宅そのものが安全であることです。
どれだけ水やフードを備蓄していても、地震によって住宅が大きく損傷してしまえば、在宅避難はできません。
新築であれば耐震性能を高める。
既存住宅であれば、古い住宅ほど耐震診断や必要に応じた補強を考える。
在宅避難というと、蓄電池や防災用品など設備の話に行きがちですが、家が丈夫でなければ意味を成しません。
9-2. 家具が倒れないようにする
猫の場合は、人間とは違う場所にいる可能性があります。
ベッドの下。
家具の横。
棚の下。
キャットタワー。
人から見ると「そんなところにいるのか」という場所を、普段から居場所にしている猫もいます。
そこで地震によって家具が倒れれば、猫がけがをする可能性がありますし、普段使っている隠れ場所そのものが使えなくなることもあります。
家具の転倒防止は人間の安全対策としても重要ですが、猫と暮らす家では「彼らの環境を守る」ことにもつながります。
しっかり固定しておきたいものです。
9-3. 停電時の電気問題
住宅が無事でも、停電すればエアコンや暖房が使えなくなる可能性があります。
真夏であれば室温が上がりますし、冬なら反対に室温が下がります。
もちろん断熱性能が高ければいいですが、何日間も快適に暮らせるという単純な話ではありません。
こうなってくると蓄電池やV2Hなどの話になってきます。
具体的には以前動画を作ったので、参考にしていただければと思います。
ちなみにこれは猫だけではなく、人が在宅避難するためにも重要な部分です。
9-4. 水・フード・猫砂を取り出せる場所に備蓄する
在宅避難であれば、猫用品をすべて持って避難する必要はありません。
だからこそ、自宅にはある程度余裕を持って備蓄しておきたいところです。
フード。
水。
猫砂。
薬。
ゴミ袋。
ウェットティッシュなどの衛生用品。
ただし、これらを全部一か所へ入れておけばいいとも限りません。
地震によって収納が開かなくなったり、水害によって床近くの物が使えなくなったりする可能性があります。
そのため、災害後にも取り出せる場所なのか。という視点で収納場所を考える必要があります。
新築であれば、最初から「防災用品や猫用品をどこへ備蓄するか」まで図面上で決めておくのも一つの方法です。

10. 猫との暮らしを守る
猫との防災を考えることは、特別な防災用品だけを考えることではありません。
普段その猫がどこにいて、どこへ隠れ、どうやって暮らしているのか。
そこから家を見直すことも、防災につながるのだと思います。
そして一つでも多くの選択肢を増やしておく方が、猫も人もストレスが減ります。
災害が起きてほしい人はいません。
だけど災害はいつでも起きる可能性はあります。
明日やろう。ではなく今できることをやる。今できることを考える。
それをすることがこの話の一番重要なところかもしれません。
今回の文章が少しでも皆様のお役に立てるのであれば、これ以上の喜びはありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
10-1. 執筆者プロフィール
野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員
富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。
投稿日 2026年10月10日
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