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展示場で解説 老犬ストレス 設計で減らす 一級建築士が考える老犬のための住まい

犬と暮らす家づくりを考えると、ドッグランや一緒に寝れる寝室など楽しいことばかりを考えます。

しかし自分が実際に東京農業大学先生であり、

獣医師でもある増田宏司先生とお話ししたときに真っ先に言われたのが、老犬時の備えです。

楽しい話ではないことは理解していますが、寿命が延びている現在では老後の備えは必須です。

今回は野島建設のペット共棲住宅で取り入れている、老後の住まいについての設計の工夫を解説します。

動画もありますので、ぜひ住まいづくりの参考にしていただけたらと思います。

0. 解説動画

 

1. 老犬の暮らしの変化

犬と暮らしていると、ある日ふと「今までできていたことができなくなった」と感じる瞬間があります。
それはしつけの問題ではなく、

老化による身体の変化住宅環境の影響が重なって起きることが多いものです。
まずは老犬になるとどんな暮らしの変化が起きるのかを整理してみます。

実際に東京農業大学先生であり、

獣医師でもある増田宏司先生とお話ししたときに真っ先に言われたのが、老犬時の備えです。

成犬期の楽しい時ばかり考えてしまいますが、寿命が延びている現在、

老犬期も長くなり、負担は増すばかりです。

その部分を前もって住宅側でも備えておく必要があります。

1-1. 粗相が増える理由

老犬になると、今まで問題なくできていたトイレを失敗することがあります。
飼い主からすると「急にどうしたのだろう」と感じる場面ですが、

多くの場合これはしつけの問題ではありません。

原因の一つは移動の負担です。

年齢とともに筋力が落ち、関節の動きも弱くなります。

歩くスピードも遅くなり、若い頃と同じ距離を移動するだけでも大きな負担になります。

 

このとき住宅の間取りが影響する場合があります。
寝床からトイレまでの距離が長かったり、途中に曲がり角が多かったりすると、

老犬にとってはトイレまでたどり着くこと自体が難しくなります。

結果として、途中で間に合わなくなるという現象が起きます。

つまり粗相が増える理由は、犬の問題ではなく
トイレ位置や生活動線という住宅設計の問題であることも少なくありません。

1-2. 歩行が不安定になる変化

老犬になると、歩き方が少しずつ変わってきます。
後ろ足の力が弱くなり、ふらついたり、滑ったりすることが増えてきます。

ここで大きく影響するのが床環境です。

最近の住宅では掃除のしやすさや見た目の美しさから、

硬くて滑りやすい床材が使われることが多くあります。

しかし犬にとっては、この床が大きな負担になります。

踏ん張ろうとしても足が横に滑り、うまく力をかけることができません。
その結果、歩くこと自体が怖くなり、移動を避けるようになることがあります。

 

つまり老犬の歩行問題は老化だけではなく、
床材・摩擦・段差などの住宅環境も大きく関係しています。

1-3. 生活範囲が狭くなる変化

老犬になると、家の中で過ごす範囲が少しずつ狭くなります。
若い頃は家の中を自由に歩き回っていた犬でも、

自分が安全に動ける範囲だけで生活するようになります

 

このとき飼い主は、老犬が困ったときには「抱っこすればいい」と考えることがあります。
しかし犬にも自分で動きたいという本能や自尊心があります。

本来は自分で歩き、自分で生活できる環境の方がストレスは少なくなります。

住宅設計の視点では
・生活空間をまとめる
・移動距離を短くする
・段差を減らす

こうした工夫によって、老犬でも自分の力で暮らせる環境を作ることができます。

2. 老犬ストレスの正体

老犬の暮らしでよく見られる問題は、実は犬だけの問題ではありません。
多くの場合、家のつくり方や生活動線が合わなくなることでストレスが生まれます。
ここでは老犬が感じやすいストレスの原因を、住宅環境の視点から整理していきます。

2-1. トイレ移動の負担

老犬になると、トイレまでの移動そのものが大きな負担になります。
若い頃は気にならなかった距離でも、

年齢とともに歩く速度は遅くなり、体のバランスも崩れやすくなります。

特に問題になりやすいのが、寝床とトイレの距離です。

寝ている場所からトイレまで廊下を通る、部屋を出る、曲がるなどの動線があると、

老犬にとってはかなりの移動になります。

 

その結果
・途中で間に合わなくなる
・トイレに行くこと自体を嫌がる
・我慢する

といった行動が起きることがあります。

これは犬の問題ではなく、住宅の動線設計の問題です。
老犬の暮らしを考えると、寝床の近くにトイレを配置するなど、移動距離を短くする設計が重要になります。

2-2. 段差と床の負担

家の中には、小さな段差がたくさんあります。
玄関の上がり框、部屋の境目、デッキの出入口など、

若い犬には問題にならない高さでも、老犬には大きな負担になります。

年齢とともに後ろ足の筋力が弱くなると、段差を越えるときに体を持ち上げる力が足りなくなります。
さらに床が滑りやすいと、踏ん張りが効かず、転倒の危険も高くなります。

 

住宅では見た目を優先して、段差や床材が決められることが多いですが、

犬にとって重要なのは摩擦と高さです。

滑りやすい床や急な段差は、老犬の移動そのものを難しくしてしまいます。
その結果、犬は動くことを避けるようになり、生活範囲がさらに狭くなってしまいます。

つまり段差と床は、老犬の生活の質を左右する重要な住宅環境になります。

2-3. 抱っこ移動の負担

老犬になると、飼い主が抱っこして移動させる場面が増えてきます。
段差を越えるときや階段を使うときなど、どうしても介助が必要になる場面があります。

しかし抱っこ移動が増えると、実は犬にも飼い主にも負担が大きくなります。

犬にとっては、自分で移動できない状態が続くことで行動の自由が減ることになります。
また、突然持ち上げられることで不安を感じる犬もいます。

一方で飼い主にとっても、毎回抱き上げることは体力的な負担になります。

特に大型犬の場合は、介助そのものが大きな作業になります。

そのため住宅設計では、最初から
・段差を減らす
・スロープを設ける
・移動しやすい動線をつくる

といった工夫によって、抱っこに頼らない生活環境を整えることが重要になります。

老犬になってから対処するのではなく、住宅側が先回りして準備しておくことが大切です。

3. 飼い主の介護負担

老犬の問題というと、犬の体の変化ばかりに目が向きがちです。
しかし実際には、飼い主自身も年齢を重ねていることが少なくありません。

東京農業大学の獣医師、増田宏司教授からも、

老犬の暮らしでは犬だけでなく飼い主の年齢も考える必要があると指摘されています。

そのため老犬の暮らしを考えるときは、

犬だけではなく人の体力や生活負担も含めて住宅環境を考える必要があります。

3-1. 毎回の抱き上げ

住宅の中には小さな段差が多くありますが、老犬にとってはそれぞれが大きな障害になります。

このとき多くの飼い主は「抱っこすればいい」と考えます。
しかしそれが毎日続くと、介護の負担は想像以上に大きくなります。

 

さらに重要なのは、飼い主も年齢を重ねている場合があることです。

若い頃は問題なくできた抱き上げでも、年齢とともに腰や膝への負担が大きくなります。
大型犬の場合は特に、毎回の抱き上げが大きな力仕事になります。

つまり問題の本質は犬ではなく、段差のある住宅環境です。
老犬になってから対応するのではなく、

最初から段差を減らした設計にしておくことが重要になります。

3-2. 粗相後の掃除

老犬になると、トイレの失敗が増えることがあります。
このとき飼い主が一番大変になるのが、掃除の負担です。

・床に排泄物が広がる
・カーペットに染み込む
・部屋に臭いが残る

こうした問題が頻繁に起きると、飼い主にとっても大きなストレスになります。

 

住宅設計では
・寝床の近くにトイレを置く
・掃除しやすい床材を使う
・移動距離を短くする

といった工夫によって、犬と飼い主の両方の負担を減らすことができます。

3-3. 夜間対応の増加

老犬になると、夜中にトイレへ行きたがることがあります。
排泄の回数が増えたり、我慢する力が弱くなったりするためです。

その結果、夜中に犬が動き回る音で目が覚めたり、トイレの介助が必要になることがあります。

ここで重要になるのが、寝床とトイレの距離です。

夜中に長い距離を歩かなければならない環境では、犬にとっても負担が大きくなります。
また飼い主も、夜間に何度も起きる生活が続くと体力的に厳しくなります。

4. 老犬にやさしい設計

犬は年齢を重ねると、身体の動きだけでなく生活習慣も固定されていきます。
そのため老犬になってから急に生活環境が変わると、大きなストレスになります。

特に問題になるのが、老犬になってからのリフォームです。

・段差をなくす
・床材を変える
・トイレ位置を変える

こうした変更は住宅としては有効ですが、犬にとっては生活環境が突然変わる出来事になります。

犬は環境変化に敏感な動物であり、生活環境が大きく変わることでストレスを感じることがあります。

そのため理想は、成犬期のうちから老犬を想定した環境をつくっておくことです。

4-1. スロープ計画

住宅の中で老犬にとって大きな負担になるのが段差です。
若い頃は簡単に越えられる高さでも、年齢とともに足の力が弱くなると移動が難しくなります。

このとき有効なのがスロープです。

玄関や掃き出し窓などの段差部分にスロープを設けることで、

老犬でも自分の力で移動できるようになります。

 

ここで重要なのは、老犬になってから設置するのではなく、最初から計画しておくことです。

成犬期からスロープを使う習慣があれば、老犬になっても自然に使うことができます。

逆に老犬になってから急にスロープを設置すると、犬が戸惑い、使わないこともあります。

そのためスロープは、老犬のための設備というより、成犬期からの生活設備として考えることが大切です。

シューズクローゼットを通路と見立てて、スロープに仕上げました

シューズクローゼットを通路と見立てて、スロープに仕上げました

4-2. 滑りにくい床

老犬の生活環境で重要になるのが床の摩擦です。

年齢とともに後ろ足の筋力が弱くなると、滑りやすい床では踏ん張りが効かなくなります。
その結果、転倒したり、歩くこと自体を避けるようになることがあります。

滑りにくい床材を選ぶことで、老犬になっても歩行の安定性が保たれます。

4-3. トイレ位置の工夫

老犬になると、トイレまでの移動距離が大きな負担になります。
そのため住宅設計では、トイレの位置をあらかじめ考えておく必要があります。

寝床から遠い場所にトイレがあると、老犬になったときに移動が難しくなります。
その結果、途中で間に合わなくなることが増えてしまいます。

 

理想は寝床の近くにトイレを配置することです。

こうすることで、老犬でも無理なくトイレに行くことができます。

また掃除のしやすさを考えて、床材やスペースにも配慮することで、飼い主の負担も軽減できます。

4-4. 介助しやすい通路幅

老犬になると、飼い主が介助する場面も増えてきます。

体を支える。
歩行を補助する。
移動を手伝う。

こうした場面では、通路の広さが重要になります。

廊下や通路が狭いと、犬の横に立つことができず、介助が難しくなります。

 

住宅設計では、人の生活だけでなく介助動作も考える必要があります。

通路に余裕を持たせることで、老犬になったときでも無理なくサポートできる環境になります。

つまり老犬の暮らしを考えた住宅では、
犬の動き人の介助動作の両方を想定した設計が重要になります。

5. 展示場で見るポイント

住宅展示場では、設備やデザインに目が向きがちですが、

犬と暮らす家では老犬になったときの暮らしまで想像して見ることが大切です。

特に重要なのは、トイレの失敗への対応、移動のしやすさ、そして安心して休める場所です。

ここでは展示場で実際に確認してほしいポイントを整理しておきます。

5-1. 粗相対策万全の巾木

老犬になると、どうしても粗相の回数が増えることがあります。

このとき住宅で大きな問題になるのが、巾木の汚れです。

一般的な住宅では巾木がMDFという木質の素材でできています。

一般的な住宅ならこれでも構わないのですが、粗相の可能性が上がるペットのの暮らしの場合

巾木はしっかりとみておきたいポイントになります。

 

その理由は、巾木を取ることが前提ではない設計が問題になります。

粗相をしたときに、壁や床をつたって巾木に接することが多々あります。

この巾木が粗相を吸ってしまうと、掃除することが不可能になってしまいます。

いうなれば臭いの原因が分かっているのに、臭い対策ができないというジレンマに直面します。

 

野島建設のペット共棲住宅の展示場はその粗相に一つの解決策を提示しています。具体的には、

・巾木を壁よりもへこませた部分につけている

・巾木を取って、再度施工できる

この二点が特徴です。

これにより粗相をしても、巾木を一旦とって施工する等が簡単になります。

このような先々の心配を成犬時にしておくことは、地味ですが重要になってきます。

5-2. スロープ化した収納でカートもOK

老犬になると、移動のサポートとしてカートを使う家庭も増えてきます。

しかし一般的な住宅では、段差が多く、カートを使いにくい場所が多くあります。

玄関の段差や収納スペースの高さなどが、そのまま移動の障害になります。

 

展示場では、収納のつくりにも注目してみてください。

例えば収納スペースの床をスロープ状に設計しておくことで、

段差を越えることなくカートを出し入れすることができます。

これは老犬期だけでなく、日常の使いやすさにもつながります。

成犬期からスロープを使う環境にしておくことで、老犬になっても自然に使うことができます。

逆に老犬になってから段差対策をすると、環境の変化が犬のストレスになることがあります。

そのため最初からスロープを前提にした設計をしておくことが重要になります。

5-3. 臭いを抑え生活範囲をコンパクトに

老犬になると、家の中で過ごす範囲が少しずつ狭くなります。

体力が落ちることで、自然と活動範囲が限られてくるためです。

このとき住宅では、生活範囲をコンパクトにまとめる工夫が必要になります。

寝床。
トイレ。
食事場所。

これらを近い場所にまとめることで、老犬でも無理なく生活することができます。

 

ただしもう一つ重要なのが、臭いの問題です。

老犬になると排泄の回数が増えることがあり、生活空間に臭いがこもりやすくなります。

そのため住宅では

・換気の流れ
・空気の動き
・臭いがこもらない配置

といった環境設計が重要になります。

 

老犬の暮らしでは、安心して休めて、臭いがこもらない環境が大切になります。

展示場では老犬になったときの生活を想像しながら、こうした空間のつくり方にも注目してみてください。

 

6. まとめ

犬と暮らす家づくりでは、若いときの暮らしだけでなく

老犬になったときの生活まで考えておくことが大切です。

粗相への対応、段差を減らした動線、

カートやスロープが使える移動環境、そして臭いがこもらず安心して休める場所。

こうした仕組みは老犬になってから整えるのではなく、成犬期から備えておく設計が重要になります。

今回紹介した考え方の多くは、

東京農業大学の獣医師 増田宏司教授 から教えていただいた視点をもとに整理したものです。

犬と人が長く快適に暮らすためには、住宅側が先回りして環境を整えておくことが大切だと思っています。

 

今回の文章が何かの参考になれば、幸いです。

また当社の展示場は予約制になっていますが、いつでもご覧いただけますし、

宿泊体験も受け付けています。

ぜひそのような視点を持って展示場をご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

執筆者プロフィール

野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員

富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。

 

投稿日 2026年4月25日

 

~温かい人が集まる暖かい家 NOJIMAのゼロ・ハウス~

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