実は足りない 災害時太陽光 使える電力 太陽光発電の事実を知り在宅避難を可能にする
2026年04月04日
太陽光発電があるから、我が家は災害時でも安心。
このような言葉を聞くことがありますが、設置時期によっては、
その言葉は嘘だったと感じるくらい電気が使えなくなります。
そのようなことがないように、自宅についている装置を確認し、
何を備えるべきかを今一度考えてほしい。そう思ってこの文章をまとめました。
皆様にとって何かしらの参考になれば幸いです。
目次
0. 解説動画
1. 在宅避難という選択
災害時にペットと暮らしているご家庭にとって、
避難所ではなく自宅で過ごすという選択は感情論ではなく現実的な判断になることがあります。
避難所はそもそもで人を受け入れる場所になり、動物はどうしても二の次です。
理由は様々ですが、鳴き声やアレルギー、衛生面の問題があります。
もし避難所が見つかったとしても、長期滞在が難しいケースも少なくありません。
実際に「周囲に迷惑をかけるのではないか」という不安から、
最初から避難所を選択肢に入れていない方もいます。
地方の場合は車があるので、車中泊を検討される方が多いですが、
都心部ではそれすらも選択できない場合があります。
その結果として検討されるのが在宅避難です。
ここでいう在宅避難は、単に家にいられるという意味ではありません。
建物が安全であり、なおかつ生活が継続できる状態を保てるかどうかが本質です。
そして現代の住宅において、その継続条件の中心にあるのが電気です。
1-1. 在宅避難を諦める撤退ライン
・家が傾いている
・壁や基礎に大きな亀裂がある
・ガス臭がする
・漏水が止まらない
・煙や焦げ臭がある
・電気が来ない
このような場合は、在宅避難の前提が崩れています。
在宅避難は「安全が継続されていること」が条件であり、
危険が見えたら迷わず退避する判断が必要になります。
1-2. 避難所の現実
避難所は命を守るための場所であり、快適な日常を送る場所ではありません。
大人数が集まる空間ではプライバシーの確保が難しく、空調や衛生環境も十分とは限りません。
人間ですら生きるか死ぬかを感じているのに、動物を先に保護することは基本的にありえません。
ペット同伴が認められない、あるいは厳しい制限がある場合、
飼い主もペットも精神的や身体的な負担を抱えます。
在宅避難ができず、避難所の受け入れもできない場合は、車中泊を選ぶ方もいます。
しかし車中泊は一時的な避難としては機能しても、
長期化するとエコノミークラス症候群や体調悪化のリスクがあります。
真夏や真冬にエンジンをかけ続けることは燃料の問題や一酸化炭素中毒の危険も伴います。
避難所に行けないから車という流れも、安定した解決策とは言えません。
だからこそ、災害のない時に自宅で過ごせる条件を整えることが重要になります。
1-3. ペットと避難
犬や猫にとって、環境の急激な変化は大きなストレスになります。
慣れない匂いや騒音、人の多さは体調や行動に影響します。
高齢のペットや持病のある個体にとっては、環境変化そのものがリスクになります。
在宅避難は人間の都合だけではなく、ペットの健康維持という視点からも検討される選択です。
また猫の場合は、避難所から脱走したらほぼ出会えないという統計もあるようです。
いかに家が重要かは、このようなところからも感じていただけると思います。
1-4. 自宅継続条件
自宅にいられるかどうかは、建物が立っているだけでは足りません。
水やガスも重要ですが、まず電気が止まることが生活の停止を意味します。
東日本大震災や能登の震災でも、電気が止まり暖房が付かず苦しんだ方は数え切れません。
それ以外にも冷蔵庫、照明、通信。
これらが止まった瞬間に、自宅は雨風をしのげるだけの場所にしかなりません。
在宅避難を成立させるには、建物と生活機能の両方を考える必要があります。
1-5. 耐震性能
地震が起きたときに家がどう振る舞うかは、在宅避難の可否を決定づけます。
単に倒壊しないというだけではなく、住み続けられる状態を保てるかどうかが重要です。
耐震等級という言葉はよく知られていますが、
地震後の生活継続性まで保証するものではありません。
構造体が大きく変形すれば、建具が閉まらなくなり、サッシが歪み、生活動線そのものが崩れます。
さらに揺れによる二次被害として家具の転倒や設備機器の破損が起きれば、
室内は安全な空間ではなくなります。
在宅避難を前提に家づくりを考えるなら、
「壊れない」だけではなく「揺れた後も暮らせる」という視点が必要になります。
1-6. 構造損傷や漏水
建物が倒壊しなかったとしても、目に見えない部分で損傷が発生している場合があります。
例えば構造体の接合部に過度な力が加われば、耐力は低下します。
特に筋交いなどは、折れるときに最も力を発揮します。
筋交いが折れる代わりに家を守るのですが、
余震時は筋交いが折れているので耐震強度はゼロに近づきます。
それ以外にも外壁に大きな亀裂が入り、防水層が破断したら屋根が壊れたりすれば、
雨が降った際に内部へ浸水する可能性があります。
それ以外でも給排水管が揺れで破断すれば、床下や壁内で漏水が起きることもあります。
こうした損傷はすぐに生活を止めるわけではなくても、
時間の経過とともに住み続けられない状態へと変化していきます。
1-7. 住み続ける条件
この章のまとめですが、住み続けるということは、単に屋根と壁が残っていることではありません。
雨風を防げること、給排水が機能していること、そして最低限の室内環境が保たれていることが必要です。
特に地震後は余震が続くことも多く、建物が繰り返し揺さぶられます。
構造に余力がなければ、そのたびにダメージは蓄積します。
在宅避難を成立させるためには、構造、外皮、設備が一体として機能している必要があります。
そしてその上で初めて、電気が使えるかどうかという次の問題に進むことができます。
2. 停電が断つ生活
建物が無事でも、停電が起きれば生活は一変します。
現代住宅は照明だけでなく、給湯機器、換気設備、通信機器など、多くの機能が電気に依存しています。
電源が落ちた瞬間に、それまで当たり前に動いていた設備がすべて停止します。
在宅避難を考えるなら、まずこの電気依存構造を理解しなければなりません。
2-1. 空調停止
夏や冬にエアコンが停止することは、単なる不便ではなく安全性の問題です。
猛暑の中で室温が上昇すれば、室内であっても熱中症のリスクが高まります。
犬は汗腺が少なく、猫も高温環境では体温調整が難しくなります。
特に短頭種や高齢個体は影響を受けやすく、温度管理が生命維持に直結します。
つまり空調は快適設備ではなく、生命維持設備です。
また冬などの場合、ファンヒーターなどを使っている方も多数いらっしゃると思いますが、
灯油があっても電気で制御をしているので、結局動かないという事態も発生します。
電気がないことは、大げさではなく死活問題です。
ここで一つ重要なのは、建物のつくりによって温度変化のスピードは大きく異なるという点です。
例えばAIR LOOP SYSTEMのように、建物全体で空気を循環させ、
躯体も含めて温熱環境を整える設計では、室温の変化は緩やかになります。
冬場は建物自体が蓄熱体のように働くため、暖房が止まっても急激には冷えません。
夏場も同様に、外気温が高くても室内が一気に高温化するのではなく、上昇のスピードが遅くなります。
これは単に断熱性能が高いという話ではなく、建物全体が温度を蓄える設計になっているかどうかの違いです。
電気を確保できることが最優先ではありますが、
それとと同時に、電気に過度に依存しない建物の設計が重要になります。
停電は起こり得る前提で、その中でも室内環境が急激に崩れない構造をつくることが、
在宅避難の現実性を高めます。
2-2. 冷蔵停止
冷蔵庫が停止すると、数時間のうちに内部温度は上昇します。
冷凍庫も時間の経過とともに解凍が始まります。
せっかく備蓄した食料も、電気がなければ維持できません。
特に夏場は腐敗が早く、食中毒のリスクも高まります。
このように考えると、常温で備蓄できる食糧を蓄えておくことが重要です。
しかし最近の住宅は、物価高騰のあおりでどうしても小さくなりがちで、
備蓄品を置けるスペースが少ないことが多いです。
2-3. 通信停止
災害時に最も頼りになるのは、ラジオという方も多くいらっしゃいます。
手回しで発電をして、ラジオを聴ける。
そのような商品もありますので、備えとして準備しておくことはいいと思います。
それ以外の通信手段でいえば、スマートフォンなどがありますが、
充電できなければ意味を成しません。
災害時には情報の質が命を左右することもあります。
停電が長引けばバッテリーは消耗し、やがて完全に通信が断たれます。
孤立感や不安感は精神的な負担を増幅させます。
電気は照明や家電を動かすためだけではなく、判断と安心を支える基盤でもあります。
3. 太陽光発電の誤解
建物が無事で、温熱環境もある程度緩やかに保てるとしても、停電が長引けばやはり電気の問題に向き合うことになります。
そこで多くの方が期待するのが太陽光発電があるから大丈夫という考えです。
実際に営業の現場では「停電時も使えます」という説明がなされることもあります。
しかしこの言葉は太陽光発電を設置した時期で、実は大きく意味が異なります。
発電しているという事実と、生活をそのまま維持できるという期待は同じでない場合が多いのが現状です。(2026年現在)
3-1. パワコンが肝
屋根の上で電気がつくられていて、その後の流れを知っている方は少ないはずです。
太陽光発電は直流になるので、
それをそのまま使うことはできずパワーコンディショナー(通称パワコン)につながれます。
ここから重要になってくるのですが、パワコンには2つあります。具体的には
・自家消費できる用のパワコン(ハイブリッドパワコン)
・自家消費は1500Wしかできないパワコン(単一パワコン)
これらがあり、ハイブリッドパワコンの場合は、
多くの方のイメージされる「太陽が出ているときには、電気が使える」がほぼできます。
しかし単一パワコンを使っている場合は、
太陽が出ていたとしても1500Wのコンセントが一つ使えるだけです。
そして2020年以前の場合は、単一パワコンが設置されていることが多いのが現状です。
言い換えるなら2026年現在は、多くのパワコンは在宅避難に向かない単一パワコンが設置されていることが多いのが現状です。
(2024年以降に太陽光発電を買った場合は、ほとんどがハイブリッドパワコンが設置されているようです)
そのため3-2と4章は、単一パワコンが付いている人向けの話になります。
3-2. 自立運転の現実
先ほどの説明のように、単一パワコンは自立運転時に供給できる電力は
最大1500W前後に制限されています。
さらに専用コンセントからのみ出力される仕様が一般的です。
つまり家全体が通常通り動くわけではなく、使い方を選ぶ必要があります。
冷蔵庫とエアコンを同時に動かせるとは限らず、
状況によってはどちらかを止める判断も必要になります。
4. 停電時の電力制限
では実際に1500Wという制限の中で、在宅避難はどこまで成立するのでしょうか。
ここを具体的に想像しない限り、太陽光発電への期待と現実の差は埋まりません。
4-1. 1500W問題
1500Wという数字は一見すると大きく感じます。
しかしエアコンが1000W前後を消費する場合、残りは500W程度になります。
そこに冷蔵庫や照明、スマートフォンの充電を加えると余裕はほとんどありません。
さらに機器の起動時には瞬間的に大きな電力が必要になる場合もあります。
この制限の中で生活を回すことは、常に電力の配分を意識する状態を意味します。
実のところ家庭用エアコンの最小クラスでも、定格能力は2.2kWクラスから始まるという点です。
カタログ上の消費電力は状況によって変動しますが、
外気温が厳しい真夏や真冬には消費電力が上がります。
その結果、そもそも1500Wの枠内では安定して動かない可能性があるという現実が出てきます。
エアコンを最優先で動かしたとしても、それだけで上限に近づき、
他の機器を同時に使う余裕はほとんどありません。
スマートフォンの充電、照明、情報機器、場合によっては医療機器など、
生命維持や安全確保に必要な電力も確保しなければなりません。
そう考えると1500Wという数字は決して十分とは言えず、
生活全体を支えるには極めて限定的な電力であることが分かります。
4-2. 夜間停止
もう一つ大きな問題は、太陽光発電は夜間には発電しないという点です。
昼間に1500Wが使えたとしても、日没後は出力がゼロになります。
夏場の夜間も気温は高く、冬の夜は外気温が大きく下がります。
昼間に何とかしのげても、夜間に空調が完全に止まる状況では在宅避難の安定性は大きく揺らぎます。
天候が悪ければ昼間の発電量も低下します。
時間帯と天候に依存する電源である以上、
太陽光単体では在宅避難を安定して支えることは難しいという現実があります。
5. 在宅避難を支える電力
ここまで整理すると、太陽光発電だけでは在宅避難を安定して支えるのが難しいことが見えてきます。
ではどうすればよいのかというと、電力をどう蓄え、どう使うかという視点に切り替える必要があります。
在宅避難は設備の足し算ではなく、生活を成立させるための電力設計の問題です。
5-1. 電力優先順位
まず必要なのは、家の中で何が本当に必要なのかを整理することです。
すべてを守ろうとすると電力は足りません。
空調、冷蔵庫、通信、照明など、生命維持と安全確保に直結するものを優先する必要があります。
在宅避難では「快適さ」よりも「継続性」を優先します。
電力の優先順位を決めることが、最初の設計です。
5-2. 家庭用蓄電池
太陽光発電の弱点は、時間帯と天候に依存することです。
それを補うのが家庭用蓄電池です。
ハイブリッドパワコンがあれば昼間に発電した電気を蓄え、
夜間や悪天候時に使うことができます。
これにより「昼しか使えない電源」から「時間をまたいで使える電源」へと性質が変わります。
蓄電容量が十分であれば、夜間の空調や冷蔵庫も継続しやすくなります。
ここで初めて在宅避難の現実性が高まります。
5-3. V2H活用
さらに近年注目されているのがV2Hです。
V2Hは電気自動車のバッテリーから住宅へ電力を供給する仕組みです。
例えば日産リーフのようなEVは、40kWh前後のバッテリー容量を持つモデルもあります。
1500Wで使用した場合、単純計算では長時間の電力供給が可能になります。
もちろん実際には効率や使用状況によって変動しますが、
太陽光単体とは比較にならない安定性があります。
5-4. 家庭用蓄電池の限界
家庭用蓄電池は在宅避難を支える有効な手段ですが、万能ではありません。
発電機のようにずっと電気を作ってくれるものではなく、
容量が大きくても、そこに入る電気がなければただの箱になります。
このような場合蓄電池はあくまで「時間をずらす装置」です。
発電が安定していることや、外部から電力供給があることが前提になります。
ここを誤解すると、太陽光と同じように期待と現実の間にギャップが生まれます。
6.まとめ
太陽光発電に過度な期待をされていることは多くあります。
まずは太陽光発電がある場合は、自分のパワコンは何なのかを知ることが重要です。
またそのうえで在宅避難をするために、蓄電池などを導入してみてはどうかを考えればいいと思います。
もちろん電気以外でも、家が強いなどの必要性があり、在宅避難は結構ハードルが高いのも事実です。
しかしそれを十分にすれば、かなり楽に避難生活が送れるはずです。
何もない今こそそのことに真剣に取り組み、必要に応じて出費をすることは悪いことではないと思います。
今回の文章が皆様にとって何かしらの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
6-1. 執筆者プロフィール
野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員
富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。
投稿日 2026年4月4日
~温かい人が集まる暖かい家 NOJIMAのゼロ・ハウス~
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