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歳のせい? 老猫の滑りは 家で変わる 猫が滑る原因を年齢のせいにしない

老猫が歩いているときに、
・足が横に流れるように見える
・立ち上がる瞬間に踏ん張れない

そうした様子を見ると、「もう歳だから仕方ない」と感じる方は多いと思います。

設計の立場から見ると、滑りやすさの原因は老化そのものではないケースも多いです。

猫の足腰は、床の硬さや表面状態の影響を強く受けます。

老猫になって初めて問題が表に出るのは、それまで筋力で補っていた床の性質の相性が、表面に現れてくるからです。

老猫の滑り

若い頃は問題なく走れていた床でも、年齢とともに滑りやすく感じ始めることがあります。

これは珍しいことではありません。

猫は人よりも足裏の接地面が小さく、爪で引っかけて止まる動物です。

そのため、表面が硬く、つるつるした床ほど影響を受けやすいという特徴があります。

滑りサイン

老猫が滑っているかどうかは、転倒しないと気づきにくいことがあります。

次のような動きが増えてきたら、床環境の見直しサインです。

* 歩き出しに一瞬ためらう
* 角を曲がるときに減速する
* 立ち上がるときに後ろ足が流れる

これらは痛みというより、「滑るかもしれない」という不安から動きを抑えている状態です。

転倒リスク

老猫の転倒は、若い猫よりも影響が大きくなります。

* 関節への負担
* 打撲による食欲低下
* 動くこと自体を避けるようになる

床で一度怖い思いをすると、その場所を避けるようになり、生活動線そのものが縮むこともあります。

先にやる対策

床材の話に入る前に、
今すぐできる現実的な対策を整理します。

床全体を変えなくても、
動線の一部を整えるだけで、
老猫の動きは変わります。

踏ん張りマット

立ち上がりが多い場所。
寝床の横や、トイレの出入り口。

こうした場所では、「歩く」よりも「体重をかける」動きが発生します。

ここで床が滑ると、後ろ足が流れ、立ち上がる動作そのものを嫌がるようになることがあります。

そのため、大きさよりも安定感を重視します。

小さめでも、ズレにくく、端がめくれにくいものが向いています。

大切なのは、柔らかさよりも動かないことです。

段差目印

段差そのものより、段差の手前で滑るケースも少なくありません。

特に、床の色や質感が連続していると、猫には高さの変化が分かりにくくなります。

そこで、段差の手前だけ素材や色を変えると、足を置く位置を認識しやすくなります。

これは滑り止めというより、「ここで踏ん張る場所だ」と伝えるサインです。

視覚と足裏の感覚が合うことで、動作がゆっくりになり、結果として転倒リスクが下がります。

滑る原因

老猫が滑る理由は、筋力の低下だけではありません。

多くの場合、床の性質そのものが関係しています。

新築時や張り替え直後は問題なくても、時間の経過とともに少しずつ性質が変わったり、その上に毛が付きやすかったりして滑りやすさが増す床もあります。

ここでは、設計の視点から見落とされやすい原因を分解します。

表面硬さ

床が硬いほど、足裏が受ける衝撃は大きくなります。

若い猫は、関節や筋力でこの衝撃を吸収できますが、老猫になるとそれが難しくなります。

その結果、無意識に体重をかけることを避け、足運びが浅くなります。

浅く置かれた足は、滑りやすくなります。

これは「滑る床」というより、踏ん張れない床に近い状態です。

塗装仕上げ

同じ木の床でも、仕上げ方法によって滑りやすさは大きく変わります。

表面を強くコーティングした床は、汚れにくく、掃除がしやすい反面、摩擦が少なくなります。

特に、光沢のある仕上げは、人には快適でも、猫にとっては止まりにくい床になります。

老猫の場合、この差がはっきりと行動に表れます。

ワックス被膜

定期的にワックスをかけている床は、重ね塗りによって被膜が厚くなることがあります。

この被膜が、ツルツルした層を作り、爪が引っかからなくなります。

見た目にはきれいでも、猫にとっては最も滑りやすい状態です。

特に、部分的にワックスが濃く残っている場所。
よく歩く動線ほど、注意が必要です。

粉と毛

床が滑る原因は、素材や仕上げだけではありません。

生活の中で、少しずつ蓄積するものがあります。

それが、猫の毛と、細かな粉です。

抜け毛そのものは柔らかく、一見すると滑りの原因には見えません。

毛に付着した皮脂や、猫砂の粉、空気中のほこりが混ざると、床の表面に薄い膜を作ります。

この膜があると、摩擦が一気に下がり転倒しやすくなります。

特に、掃除機だけで済ませている場合、粉分は床に残りやすくなります。

湿気と水

もう一つ、見落とされがちな要素が湿気と水分です。

水をこぼした直後だけでなく、加湿器の使用や、結露によっても、床表面の状態は変わります。

湿気を含んだ床は、見た目が変わらなくても、足裏では滑りやすく感じます。

老猫は、こうした微妙な違いを体で感じ取り、動きを抑えるようになります。

その結果、歩幅が小さくなり、余計に滑りやすくなる、という循環に入ります。

危険ポイント

床全体が同じ状態でも、特に危険になりやすい場所があります。

老猫が転びやすいのは、床そのものより、動作が変わるポイントです。

廊下直線

一直線に走れる廊下は、スピードが出やすい場所です。

若い頃の感覚で進もうとして、途中で制御が効かなくなることがあります。

例えば途中にドアや曲がり角がある場合、減速時に足が流れやすくなります。

この辺りは人間と同様なイメージと思ってもらっていいかと思います。

曲がり角

曲がる動作は、体をひねりながら体重移動を伴います。

このとき、内側の足に強い負荷がかかります。

床が少しでも滑ると、踏ん張りきれず、転倒につながりやすくなります。

玄関框

玄関框は、素材と高さが変わるため、老猫が踏ん張りにくい場所です。

硬くて滑りやすい素材では、降りる瞬間に足が流れやすくなります。

框の手前に、小さな踏ん張りスペースを作るだけでも、動きが安定します。

トイレ前

トイレ前は、立つ・踏ん張る動作が集中しますし、何より砂などの粉があたりに飛び散りやすい場所になります。

その粉などが足の踏ん張りを弱める事で、姿勢が不安定になりやすく、落ち着いて使えなくなります。

トイレ前だけでも床の状態を変えることで、動きが楽になります。

窓際着地

窓辺は、老猫にとって今でも魅力的な場所です。

ただ、ジャンプ後の着地では、一瞬で体重が床にかかります。

床が硬く滑りやすいと、着地の衝撃を吸収できず足が流れます。

この経験が続くと、高い場所に登ること自体を避けるようになる場合があります。

老猫にとって大切なのは、「登らせない」ことではなく、降りても大丈夫だと思える環境です。

床材選び

老猫の滑り対策では、「柔らかい=安全」ではありません。

大切なのは、
* 踏ん張れるか
* 足裏が止まるか
* 動作が予測しやすいか

この3点です。

無垢材

無垢材は表面が適度にざらつき、足裏が止まりやすい素材です。

ただし樹種や仕上げによって差があります。

オイル仕上げの無垢材は比較的滑りにくく、老猫との相性は悪くありません。

一方で表面を強く塗装したものは、見た目以上に滑ることがあります。

ここで注意をしたいのは、無垢材で滑りにくいものは比較的掃除がしにくく、傷がつきやすい商品が多いです。

生活のしやすさから言えば固くて表面が強いものの方が人は生活しやすいですが、滑りやすいという側面もあります。

リフォームできない等の場合は、ラグなども上手く使用した方が無難といえます。

複合フローリング

一般的な住宅で多い床材です。

耐久性が高く掃除もしやすい反面、表面が硬く、摩擦が少ない傾向があります。

若い頃は問題なくても、老猫になると足運びが変わるケースがあります。

光沢が強いものほど、注意が必要です。

この素材も固い無垢材と同様で、ラグなどの設置を検討する必要がある場合もあります。

クッションフロア

クッションフロアは、柔らかさがあり、衝撃を和らげやすい床です。

ただし表面が平滑なものは、意外と滑ることがあります。

また柔らかすぎると、踏ん張りにくく感じる猫もいます。

「転ばない」より「力を入れやすいか」という視点が重要です。

フロアタイル・タイルカーペット

フロアタイルは、素材によって性質が大きく変わります。

石目調や艶のあるものは、滑りやすくなることがあります。

一方でマットな表面のものは、比較的安定します。

見た目だけで選ばず、表面の感触を確認することが大切です。

柔らかく滑りにくいいので、タイルカーペットもおすすめになります。

汚れた部分だけ張り替えるなども可能になりますし、リフォームでも現状の床の上から貼る事も可能です。

しかし図の様なパイルカーペットは爪が引っ掛かる可能性があるので、カットパイルのカーペットを使用することが重要です。

置き畳・ラグ

畳やラグは足裏が引っかかりやすく、踏ん張りがききやすい素材です。

全面に使う必要はなく、部分的に取り入れるだけでも効果があります。

寝床まわりや、着地ポイントに向いています。

タイルカーペットと同様に床の上にそのまま置ける点が魅力で、現状の床を選ばないのでリフォームでも活用できますし、自分でも準備できます。

傷がついたとしても新たに購入し入れ替えるだけなので、おススメの素材の一つといえます。

仕上げ選び

床材そのものより、実際の滑りやすさを左右するのが「仕上げ」です。

同じ床材でも、仕上げ次第で老猫の動きは大きく変わります。

ワックス可否

ワックスは、床をきれいに見せ、掃除が楽になる反面、滑りやすさを強めることがあります。

特に重ね塗りされた床は、表面にツルっとした層ができやすくなります。

老猫にとっては、爪が引っかからず、止まりにくい状態です。

必要以上のワックスは、控えた方が無難です。

コーティング注意

フロアコーティングは、耐久性や掃除性を高めます。

種類によっては摩擦がかなり低くなるものもあります。

人が「歩きやすい」と感じる仕上げが、猫にとっては「止まれない床」になることもあります。

施工前に、滑りにくさを確認する作業は欠かせません。

部分改善

床全体を替えなくても、動線の一部だけ整えることで、老猫の動きはかなり変わります。

無理に大がかりな工事をしない、という選択も十分に現実的です。

上貼り施工

今の床の上から、別の床材を重ねる方法です。

撤去が不要なため、工期や負担を抑えやすいのが特徴です。

滑りやすい場所だけ、摩擦のある素材に変えることで、足運びが安定しやすくなります。

タイルカーペットやラグはネットで購入できて、置くだけなので非常に効率的に対策ができます。

色も種類も多いですし、汚れたりした場合の交換も容易なのでおススメといえます。

部分張替え

転びやすい場所がはっきりしている場合は、その部分だけ張り替える方法もあります。

廊下の一部や、着地ポイントなど、範囲を絞ることが前提です。

床全体の印象を変えずに、安全性だけを上げることができます。

見切り段差

床材を切り替える際の、小さな段差や見切り材も、老猫には影響します。

段差が急だと、踏ん張る前に足が流れやすくなります。

素材や高さを整えるだけでも、動作がスムーズになります。

掃除と維持

滑りにくい床を選んでも、使い方次第で滑る床になってしまいます。

老猫の床では、「何を選ぶか」より「どう保つか」も重要です。

毛と砂

猫の毛や猫砂の細かな粒は、床の表面に残りやすくなります。

これが蓄積すると、摩擦が下がり、滑りやすさが増します。

特にトイレ周辺やよく通る動線は、意識して状態を確認したい場所です。

拭き掃除

掃除機だけでは、粉分が床に残ることがあります。

乾拭きや、軽く湿らせた拭き掃除を定期的に行うことで、表面の状態は安定しやすくなります。

ワックスを重ねるより、余分なものを落とすという考え方が向いています。

湿気管理

湿気が多すぎたり過乾燥になると、滑りやすくなります。

加湿器の使用や、結露が出やすい季節は、床の感触が変わりやすくなります。

空気を動かし床を乾いた状態に保つことも、滑り対策の一つです。

まとめ

老猫が滑る原因は、年齢だけではありません。

床の硬さ、表面の仕上げ、使われ方。

これらが重なって、初めて問題になります。

家全体を変えなくても、動線や足元を少し整えるだけで、動きは変わります。

「歳だから仕方ない」と決めつけず、家の側でできることから見直してみてください。

執筆者プロフィール

野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員

富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。

 

投稿日 2026年2月28日

 

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