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猫の壁ひっかき しつけでは 止まりません 一級建築士が考える猫の爪とぎの正解

猫が壁を引っかく…やめさせる方法は何かないものか?

 

私は動物が得意ではありませんが、ペットと暮らす住宅の設計を何件も依頼され、その結果、猫などに関して勉強するきっかけを持ちました。

点検などで後日訪問する機会がありますが、きれいに仕上げた住宅が短期間で傷がついている姿も目にします。
そのたびに「自分の方で何かできることはなかったのか」と感じてきました。

今回は壁を傷つけないように何ができるかを勉強しまとめた内容になります。

少しでも何かの役に立つのであれば幸いです。

 

まずは猫がなぜ壁を引っかくのか。
その理由を理解しないと、「やめさせる」はほぼ不可能といえます。
行動の理由を知れば、対策できるようになっていきます。

 

1.なぜ壁を引っかく?

この辺りは自分は猫が苦手なため、勉強をして知った内容を簡潔にまとめています。

サッと読み通してもらえればと思う内容になります。

1-1.爪の手入れ

猫の爪とぎは、古い表面を剥がし、鋭く保つための習慣です。
人間の“爪切り”に近い行為なので、止めることはできません。
むしろ爪とぎをしない方が猫の健康に悪影響となるため、禁止ではなく、適切な場所に誘導することが必要になります。

1-2.縄張り・匂いづけ

猫の肉球には匂いを出す腺があり、壁を引っかくことで“自分の領域”としてマーキングします。
私たちには見えませんが、猫にとってはとても重要なサインです。
飼い主の家であっても、猫の視点では「共有スペース」や「自分の場所」になることもあります。
所有者と猫の価値観が異なることが、トラブルの原因になるとも言えます。

1-3.ストレス発散

退屈や運動不足などのストレスを、爪とぎで発散することがあります。
癖のように気持ちを整える行為なので、感情で止めるのは難しいものです。
特に、室内飼育では刺激が少なく、壁が“手軽な発散場所”になることがあります。
そのため、ストレスを外に逃がす仕組みづくりが効果的です。

1-4.かまってアピール

壁を引っかくと飼い主が反応するので、「これをすれば構ってもらえる」と学習する場合があります。
猫は非常に賢く、人の行動すらコントロールしてしまうことがあります。
そのため、こちらが反応することが逆効果になるケースもあるようです。
だからこそ、感情ではなく習慣を変える対策が必要なのです。

2.まず壁を守る発想

猫に爪とぎをやめさせるのは、“本能を止める行為”になります。
人間の都合で「壁でやるな」と制限しても、猫にとっては「爪を使うな」と言われているのに近い感覚です。
健康や安心感に関わる行為なので、猫側からすれば「やめる理由がない」のが当然です。
だから、禁止ではなく、行動を別の場所に誘導する という考え方が必要になります。

2-1.被害の出やすい場所を考える

玄関、階段横、ソファ周りなど、爪とぎやマーキングが重なりやすい場所があります。
動線、止まりやすい高さ、視線の通り道など、猫の好みの場所がわかれば対策はしやすいものです。

言い換えるなら全てを守るのではなく“守るべき場所だけ対策”すれば、コストも大きく抑えられます。

まずは猫の行動の観察が重要です

まずは猫の行動の観察が重要です

3.行動を誘導する

猫の行動そのものを変えるというより、「爪とぎOKのところに誘導する」という行動の設計が必要です。
ここでは、専門的な家づくりではなく、今日からできる“現実的な工夫”を紹介します。

3-1.好みの爪とぎを用意

爪とぎには、段ボール、布、木材、縄、カーペットタイプなど、さまざまな素材があります。
猫は素材の好みがはっきりしていることが多く、合わないと使ってくれません。
反応が無いときは「嫌いだからではなく、好みではない」可能性があります。
複数試して“お気に入り”を探すことが、壁対策の第一歩になります。

3-2.爪とぎは壁の前に

ただ爪とぎを用意するだけでは、魅力的に映るとは限りません。
特に縦方向のマーキングを好む猫の場合、“壁の前に縦置き爪とぎ”が最も効果的です。
つまり、爪とぎを壁の代わりに置く(設置する)という考え方です。
壁を守るために、保護壁を作るイメージです。

3-3.遊びで発散

猫は運動不足や退屈が続くと、壁でストレスを発散することがあります。
遊び、動き回る環境、立体的な動線(キャットウォークなど)があると、壁への興味が薄れます。
建築的に言えば、ストレス発散の出口を壁以外に作ることが重要ということです。
行動の余白を設計する、と言い換えてもよいでしょう。

興味を爪とぎ以外に持っていくことが重要です

興味を爪とぎ以外に持っていくことが重要です

3-4.爪切りで軽減

爪自体が鋭くない状態なら、爪とぎの行動は減るみたいです。

爪切りはしつけではなく、被害を軽くする保険のようなものです。
ただし無理に押さえつけると逆効果になるため、慣らしながら時間をかけることが大切です。

3-5.スプレーは補助

市販の忌避スプレーは「壁への興味を下げる補助」にはなりますが、主役にはなれません。
本能の行動に対して、匂いだけで完全に防ぐことはできませんし、匂いは慣れたり効果が薄れていくからです。
効果が薄い時は、壁の“魅力が強すぎる”可能性もあります。
つまりスプレーは補助役で、主役は爪とぎOKな環境づくりと考えるべきです。

4.住宅側の対策

日常の習慣づくりに加えて、建築的な対策を組み合わせると、壁の劣化は大幅に防げます。
猫の行動を止めるのではなく、猫が問題を起こしにくい住宅にするという考え方です。
住宅そのものに「被害を出させない仕組み」を備えることで、長期的な安心につながります。

4-1.傷に強い壁材

現在の住宅の内壁の仕上げとして一般的なクロス(ビニール壁紙)は、爪の引っ掛かりに弱い素材です。
ペット向けの壁紙や硬い表面を持つ素材を使うことで、爪が引っかかりにくくなり、被害が減ります。
壁の素材は、デザインより 表面強度とメンテナンス性 を重視すべき部分です。

家全体に使用するものなので、下記に出てくるものも重要ですが、まずは基本中の基本となるのがクロスといえます。

4-2.腰壁で下部を守る

腰壁(腰高までの板やパネル)は、猫が爪を立てやすい床から1mを重点的に保護できます。
触る位置や動線の高さを考慮し、必要な部分だけ板材で守ると被害が集中しにくくなります。

実際に本物の木で施工するよりも、表面強化された爪とぎに向かない壁材なども販売されているのでそれを使うと効果的です。
部分的なリフォームでも効果が高く、剥がせる接着剤みたいなものを使用すれば賃貸にも応用できる方法です。
デザイン性も保ちながら、壁の寿命を延ばす実用的な工夫になります。

また実際に傷つけられた上に施工してもいいので、傷隠ししながら傷の保護につながる商品でもあります。

腰壁なら、傷がついても張り替えたりが可能です。

腰壁なら、傷がついても張り替えたりが可能です。

4-3.角・柱の保護

壁よりも角や柱は狙われやすい場所です。
特に角は引っかきやすく、マーキングもしやすいため、傷が深くなりがちです。
保護材や強度のある部材を取り付けることで、被害が急速に進むのを防ぐことができます。
猫にとって“爪が立ちにくい場所”に変えるという考え方がポイントです。

4-4.爪とぎ用の場所をつくる

猫の行動を止めるのではなく、許可する場所をつくるという逆転の発想です。
一部の壁に爪とぎできる素材を設ければ、猫にとって“合法的な爪とぎゾーン”ができます。
住宅側が対応することで、猫も人もストレスなく共存できます。
禁止するのではなく、専用の場所へ誘導する建築の工夫と言えます。

5.爪とぎの置き方のコツ

せっかく爪とぎを用意しても、置き場所が間違っていると使ってもらえません。
爪とぎを「壁の代わり」として機能させるためには、配置と高さの設計 が重要になります。
建築で壁を守り、生活空間で誘導する。この2つが揃って初めて効果が出やすくなります。

5-1.高さ=肩や頭まわり

猫が立ち上がって爪を伸ばせる高さが必要です。
目安は、後ろ足で立ったときの「肩〜頭」の高さ。
低すぎると「壁の方が伸び伸びできる」と判断され、壁に戻ってしまいます。
爪とぎを 壁より快適な高さにする ことがポイントです。

5-2.立った姿勢に合わせる

猫が爪とぎをする姿勢は、壁に対して縦方向の動きが基本です。
そのため縦型の爪とぎを壁際に置くと、壁の代替として受け入れられやすくなります。
横型だけを置くと、壁では満たせる姿勢が満たせず、壁で爪を引っかく行動が続きます。
つまり 姿勢の要求を満たす爪とぎ選び が重要です。

5-3.縦・横の好みを見る

猫によって、縦方向が好きなタイプ、横方向が落ち着くタイプがいます。
好みに合わない素材や姿勢の爪とぎは、あっても使われません。
複数の爪とぎを「試して、比べて、選ばせる」ことが最短ルートになります。
猫に選択させることで、壁の魅力を下げるという考え方です。

5-4.置き場所は固定

爪とぎの位置が毎回変わると、猫にとっては“安心する場所”として認識しづらくなります。
壁の代わりとして定着させるには、同じ位置で継続して使わせることが大切です。
固定すると、「ここが爪とぎをしていい場所だ」と学習し、壁やその他の場所の優先度が下がります。
気持ちの良い場所の記憶をつくることが、家を守る習慣につながるという考え方です。

6.自分でできる対策(建築に頼らない壁の守り方)

建築的な工事をしなくても、壁を守る方法は十分にあります。
私自身、動物が苦手な立場だからこそ実感しているのは、「家の対策は、まず低コストで試した方が良い」ということです。
猫の習性は強く、一気に変えることは難しいため、壁を守りながら、猫の“好きな行動先”を誘導したり確認することがポイントになります。
大がかりな手段が悪いわけではないですが、余計な出費に繋がる可能性もあるので、手軽で調整しやすい対策から始めて、効果を見ながら徐々に強化していく方がうまくいくと思います。

6-1.マスキング+保護シート

保護シートを直接壁に貼ると、剥がす際に壁紙が破れたり、糊が残ったりします。
そこで先にマスキングテープを貼り、その上から保護シートを重ねる二層貼りが有効です。
この方法だと貼り直ししやすく、“失敗してもリセットできる”という安心感があります。
特に壁紙の素材によって粘着力の相性も変わるため、まず小さい面で粘着テストをするのが理想です。
このひと手間が、数万円の修繕費を防ぐことにつながります。

6-2.賃貸でも貼りやすい素材選び

はがせる弱粘着タイプや、静電気で吸着する保護フィルムもあります。
粘着剤を使わない素材は、賃貸だけでなく、持ち家でも「やってみて調整できる柔軟さ」がメリットです。
さらに、交換式にすると、傷んだ場所だけを取り替えられ、長期的な維持がしやすくなります。
“貼ること”より大切なのは、「退去時・張り替え時に困らない選び方」をすることです。
賃貸を理由に諦める必要はなく、守りながら暮らしやすさを試す住まい方が実践できます。

6-3.家具で壁を隠す

爪の届く範囲を物理的に塞ぐのも有効です。棚やソファ、収納ボックスなどを壁際に密着させることで、爪が届かなくなります。
ただし、隙間があると、逆に境界部分が狙われやすくなるため注意が必要です。
猫は「角」「境目」に爪を立てたがる特性があるため、家具は壁にしっかり近づけ、高さも猫の立ち上がり高さより高くすることがポイントです。
この方法は、費用がかからない上、生活導線を変えずに済むケースも多く、特に面積の狭い賃貸では活躍します。

家具を置くことは爪とぎに効果があります

家具を置くことは爪とぎに効果があります

7.失敗しにくいポイント(優先順位)

猫の行動は、壁を守りたい人間の都合では止まりません。
そこで大切なのは、「行動を変えようとする前に、まず家の被害を止める順番」です。
特に、費用・手間・効果のバランスを考えると、以下の優先順位で進めると、無駄が少なく失敗しにくくなります。

7-1.① 壁の保護 → ② 誘導 → ③ しつけ

いきなりしつけや注意をしても、効果が続かないケースが多いです。
最初に壁を守り、次に爪とぎ場所へ誘導し、それでも足りない部分に対してしつけを補助的に行う。
この順番は、猫に振り回されず、“家を先に守れる”現実的な方法です。

7-2.猫の“お気に入り”を知ってから対策

保護シートも爪とぎも、適当な場所に貼っても無意味です。
猫は壁の素材、高さ、角の形状などに好みがあるため、被害部分から行動のクセを読み取ることが先決です。
建築でも、状態を把握せずに工事することはありません。それと同じで、分析してから対策が本当の節約になります。

7-3.全てを一気に変えない

壁全体を一度にガードすると、逆に別の壁や家具に攻撃が移ることがあります。
少しずつ対策範囲を広げることで、猫の動きも観察でき、誘導もしやすくなります。
自然に今までの爪とぎの場所をつまらない場所にする流れを作ります。

7-4.家族の行動もそろえる

家族の誰かが叱ったり、誰かが甘やかしたりすると、猫は行動を変えず、対策が進みません。
大声で叱る必要はありませんが、「壁を守る行動を、全員が同じ方向でとる」ことは家づくりと同じくらい重要です。
住まいは人の手で作られるので、人側がバラバラでは、良い住環境は維持できなくなります。

猫テラスを備えた住宅

猫テラスを備えた住宅

8.まとめ(猫が苦手な建築士の視点)

猫との生活は“コントロール”ではなく、“環境づくり”で上手く馴染めるという点です。
壁の被害を防ぐには、猫の性質を受け入れたうえで、あえて家が壊れにくい環境へ導くことが大切です。

しつけが悪いわけではないですが、家側が猫の行動を促す仕組みを先に整える。

そしてそれがまずは安く始めて、あとでしっかり対策をする。
これが家を守りたい飼い主にとって、もっとも合理的で、長期的に負担の少ない方法です。

猫は意見を言ってくれませんので、好みに気づかない限り、同じことを繰り返す可能性があります。
それぞれの習性が干渉せずに暮らせるよう、当社のペット共棲住宅の展示場などを参考に住まいを構築していくと良いでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

8-1.執筆者プロフィール

野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員

富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。

 

投稿日 2026年2月14日

 

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