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それ、危険 猫のキッチン 設計で防ぐ 一級建築士が考える怪我をしにくいキッチンとは

猫と暮らす住まいの中で、「キッチンだけは少し神経を使う」そう感じている方は多いのではないでしょうか。
火を使い刃物があり、食材や洗剤が並ぶキッチンは、小さなお子さんがいても注意が必要な場所です。
ましてや行動が予測しづらい猫にとっては、事故のリスクが集中する空間でもあります。
ここで大切なのは、「猫をどう教育するか」ではありません。
人の生活空間として、猫にとって“危険になりにくい条件”を建築側がどうつくるか。
この視点でお伝えをしたいと思います。

1.キッチンの危険

1-1.火傷事故

猫にとって、火や熱は非常に分かりづらい存在です。
炎は見えたとしても、熱そのものは視認できません。
・ガスコンロを消した直後の五徳
・余熱が残るIH
・調理後に置かれた鍋やフライパン
人間なら「まだ熱い」と理解できますが、猫にはその判断材料がありません。
特に問題なのは、調理が終わった“直後”の時間帯です。

人は片付けに気を取られ、猫は静かになったキッチンを「安全」と誤認します。
その結果、「乗る・触る・歩く」という行動につながります。
ここで考えるべきは、「近づかせない」よりも「触れても大事故になりにくい状態」をつくることです。

1-2.誤食誤飲

キッチンでは人にとっては些細なものが、猫にとっては危険物になります。
ネギ類、チョコレート、調味料、包装のビニールや輪ゴム。
多くの場合、「わざと食べた」のではなく、床・天板・カウンターに残ったものを舐めた、かじったというケースです。
誤食の原因は、猫の問題ではありません。
・作業途中で置いた
・あとで片付けようと思った
・一時的に仮置きした
こうした人の生活動線が、そのままリスクになります。

1-3.刃物洗剤

包丁やピーラー、洗剤類は、猫が「危険だ」と学習できる対象ではありません。
特に猫は、
・転がる
・揺れる
・音が出る
ものに反応します。
シンクに置いた包丁、引き出しの隙間、床置きの洗剤ボトル。
どれも猫にとっては触れて確認したくなる存在です。
重要なのは「使ったらしまう」という意識よりも、そもそも触れられない配置・高さ・収まりを前提に考えることです。

2.侵入理由

2-1.匂い興味

猫がキッチンに入る理由の多くは、好奇心です。
キッチンは匂い・音・動きが常に変化する場所。
猫にとっては、非常に「情報密度の高い空間」になります。
ここで誤解されがちなのが、「食べ物を狙っている=悪いこと」という捉え方です。
実際には、匂いを確認しているだけというケースがほとんどです。

2-2.高所欲求

猫は本能的に高い場所を好みます。
これは習性であり、しつけで消えるものではありません。
対面キッチンや腰壁カウンターは、
・視界が開ける
・人の動きが見える
・着地しやすい
という条件が揃っています。
つまり、設計上「登ってください」と言っているような形になっていることも多いのです。

2-3.構って欲求

料理中、人は長時間キッチンに立ち続けます。
猫にとっては、「人が集中している場所=気になる場所」。
構って欲しい、存在を確認して欲しい、ただ近くにいたい。

これらが重なり、キッチンへの侵入につながります。
叱ることで解決しない理由は、猫の動機が悪意ではないからです。

3.侵入動線

3-1.カウンター経路

猫の侵入は、無秩序に起きているわけではありません。
多くの場合、決まったルートがあります。
カウンター → 天板 → キッチン内部。
この経路は、
・段差が少ない
・滑りにくい
・一気に跳ばなくていい
という、猫にとって非常に合理的な動線です。
ここを理解せずに部分的な対策をしても、別ルートを探されるだけになります。

 

3-2.家電の背面回り

人があまり意識しない場所ほど、猫はよく見ています。
冷蔵庫横、家電の裏、収納と壁の隙間。
これらは人の目が届きにくく、猫にとっては安心できる侵入口です。
「見えない動線」ほど危険という意識が必要です。

3-3.開口条件

キッチンの侵入を左右するのは、扉の有無だけではありません。
・開口幅
・腰壁の高さ
・視線の抜け
これらが揃うと、猫は「行ける」と判断します。
特にオープンキッチンでは、視覚的な開放感そのものが猫の行動を後押しします。
人にとっての「明るい・広い・抜ける」は、猫にとっての「入りやすい・逃げやすい」でもあります。

4.コンロ対策

キッチンの中でも、最も事故につながりやすいのがコンロ周りです。
猫にとって、
・火
・高温
・操作スイッチ
は、危険として認識しづらい要素が重なっています。
ここでは「入らせない」ではなく「万が一触れても、事故になりにくい」という視点で整理します。

4-1.ガスコンロとIH

ガスコンロとIHでは、猫にとってのリスクの性質が異なります。
ガスの場合は
・炎が立ち上がる
・五徳が高温になる
・元栓操作が必要
といった要素が重なります。

元栓を占める事で不慮の事故(誤作動で火が付く等)はが起きない点は良い部分です。

 

しかしどちらかといえばIHの方が、安全性は高いと言えます。
IHは火は存在せず、鍋を外せば加熱が止まる構造です。
熱い部分もフライパンの熱が移ったガラストップの部分だけで、平面的です。

これは五徳の様に立体的ではない分、火傷のリスクは下がります。

完全に安全とは言えませんが、火傷リスクを一段階下げられるのは事実です。

4-2.ロック機能

IHの場合、スイッチ操作の問題は残ります。(ガスコンロは元栓を占めれば誤作動はほぼないため)
ここでのポイントは、「使い勝手」よりも誤作動しにくさです。猫は
・足で踏む
・体重をかける
・物を落とす
といった行動をします。
そのためチャイルドロックや押し込み式でない操作パネルは、必須条件になります。

4-3.コンロカバーは必須

ガスコンロであろうと、IHであろうと、コンロカバーは必須です。
・調理後すぐに覆える
・物理的に乗れなくなる
・視覚的に“使っていない”と伝えられる
こうした効果があります。
特に重要なのは、調理直後〜完全に冷めるまでの時間を安全にやり過ごせる点です。
日常動作として“被せる”この運用は猫を火傷から守る重要な行動になります。

5.シンク対策

 

シンク周りは、一見安全そうに見えて、実はトラブルが起きやすい場所です。
水・洗剤・刃物・生ゴミなど、これらが同時に集まる場所だからです。

5-1.シンクふた

猫がシンクに入る理由は、
・水がある
・囲まれている
・ひんやりしている
といった要素です。
シンクふたを使うことで、これらの魅力をまとめて消すことができます。
また人にとっても作業台が一時的に増えるため、キッチンを広く使える場面がある利点があります。

 

5-2.水切り位置

水切りラックの位置は、猫の侵入を左右します。
シンク上に渡すタイプは、
・足場になる
・奥へ誘導する
という側面もあります。
「水切りをどこに置くか」は、単なる好みではなく、猫の動線設計でもあります。

5-3.洗剤管理

洗剤は
・匂い
・容器の形
・倒れやすさ
で猫の興味を引きます。
ここで大切なのは、「猫が嫌がる匂い」ではなく、そもそも触れない場所に仕舞えるかどうかです。
匂いで遠ざける方法は、効果が不安定で、人にも負担になります。

6.収納対策

キッチン収納は、誤食・誤飲を防ぐ最後の砦です。

6-1.扉収納

オープン収納は見た目が良く、取り出しやすい反面、猫にとっては探索対象になります。
猫と暮らすキッチンでは、「見せる収納」より「閉じる収納」が基本になります。

どうしても見せたい場合は、猫がジャンプしても届かないような設計が必要となります。

6-2.開閉ロック

扉があっても、猫は開けてしまう場合があります。
軽い引き戸、指をかけられる取っ手。
赤ちゃん用のロックでもいいですが、開閉ロックまでしておくと安全といえそうです。

6-3.放置禁止

最終的には、収納だけでなく人の運用も関わってきます。
・仮置きしない
・使ったら戻す
・床に置かない
これはしつけではなく、事故を起こさない生活手順です。

7.ゴミ対策

キッチンの中で、清潔面と安全面が最も重なり合うのがゴミ箱です。

猫にとってゴミ箱は、
・匂いが強い
・中身が変わる
・音がする

という、非常に魅力的な存在です。

一方で、人にとっては「後でまとめて処理する場所」になりがちです。

このズレが、トラブルの原因になります。

7-1.ゴミ箱

まず前提として、蓋のないゴミ箱は選択肢から外す必要があります。

袋が見える、中身が見える、匂いが漏れる。

これらはすべて、猫を誘導する要素になり、呼び込んでしまう要素をこちらが提供してしまっています。

重要なのは、「踏んだら開く」タイプより手動で確実に閉じられる構造です。

蓋つきであっても、センサー式ゴミ箱は注意が必要です。

便利そうに見えますが、

・近づくだけで開く
・動きに反応する
・音が出る

これらは猫の好奇心を強く刺激します。

結果として
「開く → 覗く →触る」
という行動を誘発することがあります。

7-2.臭気管理

猫は匂いに非常に敏感です。

生ゴミを
・その日のうちに処理する
・密閉容器に入れる

といった運用は、清潔のためだけでなく侵入動機を減らす行為でもあります。

ここは設備よりも、生活リズムの設計が効いてきます。

また富山県黒部市の様に、自治体が支援するディスポーザー(生ごみ粉砕して、下水道又は浄化槽に流す)仕組みがあれば、積極的に採用したいところです。

7-3.置き場設計

ゴミ箱の置き場所も重要です。

通路上、カウンター横、冷蔵庫の隣。

これらは猫が回遊しやすい場所です。

理想は
・壁際
・角
・人の目が届く位置

「どこに置くか」は、単なるスペースの問題ではなく、猫の行動範囲の制御でもあります。

カップボードの中にゴミ箱が収納できる商品などもあり、このようなものは見た目も統一できて、お勧めの商品になります。

8.仕切り対策

ここまでの対策は、「入っても事故になりにくい」という考え方でした。

一方で、どうしても入ってほしくない場合もあります。

その場合は、感情ではなく物理的に分けるしかありません。

8-1.ゲート設置

ペットゲートは、猫を止めるためのものではなく、人の安心を確保する装置です。

調理中、目を離す瞬間、来客時。

一時的にキッチンを分離できることが、大きな安心につながります。

8-2.カーテン仕切り

常設の扉が難しい場合、カーテンやロールスクリーンは有効な選択肢です。

重要なのは、
・完全遮断ではない
・視線を切れる

という点です。

猫は「向こうが見えるかどうか」で行動を変えます。

9.間取り解決

猫との暮らしでは、後付けで何かを取り付ける対策よりも新築時の間取りが有効な場合が多いです。

9-1.独立キッチン

完全な独立型キッチンは、猫対策としては最も分かりやすい方法です。

ただし、視線が遮断されることで猫のストレスになる場合もあります。

そのため「完全に閉じる」ではなく、出入りできないような制御できる開口をつくることが重要です。

9-2.室内窓や仕切り戸

室内窓は、人と猫の両方にとって非常にバランスの良い選択肢です。

キッチンを完全に閉じてしまうと、猫にとっては「中で何が起きているか分からない場所」になります。
これは不安や執着を生みやすく、結果として侵入欲求を強めることもあります。

その点室内窓は
・音
・匂い
・視線

これらを完全に遮断せず、部分的に共有できます。

格子戸で仕切ると、気配を感じながら作業ができて安心。

格子戸で仕切ると、気配を感じながら作業ができて安心。

9-3.収納追加

キッチン周辺に猫用品の収納場所をつくることは、単なる片付けの話ではありません。

これは猫の行動範囲を再編成する行為です。

フード、トイレ用品、おもちゃ、爪とぎ。
これらがキッチンとは別の場所にきちんと収まっていると、猫の意識も自然とそちらへ向きます。

10.人間側の運用手順

ここまで設備・間取り・収納と物理的な対策を整理してきました。

ただし、どれだけ整えても最後に残るのは人の使い方です。

ここでいう運用は、しつけではありません。

事故を起こしにくい生活の組み立て方その話です。

10-1.調理隔離

調理中だけ、一時的に行動範囲を分ける。

これは猫を閉じ込めるという意味ではありません。

事故が起きやすいのは、
・火を使っている
・刃物を扱っている
・足元に注意が向きにくい

この短い時間帯です。

10-2.片付け習慣

使ったら戻す。仮置きしない。

これは猫対策というより、人の安全管理です。

10-3.猫の定位置

猫には「ここにいれば安心」という定位置が必要です。

それは人が頻繁に出入りせず、見晴らしがよく、落ち着ける場所です。

猫の居場所

猫の居場所

10-4.クレートの使用

猫がクレートを喜ばないのは、そもそもでクレートに入ったときに嫌な場所に連れていかれることが多いからではないでしょうか。

病院や、災害などしか使っていないと、楽しい思い出が無く、どうしても入ってくれません。

楽しい場所になるよう、何かしらの工夫を試してほしい所になります。

11.まとめ

猫と暮らすキッチンで大切なのは、「清潔か」「安全か」をどちらか一方で考えないことです。

火傷、誤食、誤飲、衛生。
これらはすべて、猫の行動だけが原因ではなく、人の生活と空間のつくり方が重なって起きるものです。

どうしても個体差が出てしまうところですので、家族の行動がどのようなものかちゃんと見てあげて、適した方法を見つけることがストレスの少ない日常を送れるヒントになるはずです。

今回の文章が少しでも参考になりましたら幸いです。

11-1.執筆者プロフィール

野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員

富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。

 

投稿日 2026年2月7日

 

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