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犬の臭い対策は消臭より換気の高さ 一級建築士が考える換気のコツ

家の中の「犬の臭い」。飼い主にとっては毎日の生活の一部ですが、来客は意外と敏感に感じ取っています。

実際「犬と暮らしている家 = 独特の臭いがあるもの」と思われがちで、来客時に気になる…という声は少なくありません。

臭いは強烈というより、じわじわと空気中に溜まりやすく、空気の流れによって拡散しにくい構造の住宅ではこもりやすくなる傾向があります。
特に冬の閉め切った時期や、24時間換気の使い方が正しくない場合には、臭いが室内に滞留しやすくなります。

今回のブログでは、そのあたりの原因や軽減する方法についてまとめてみてみました。

 

1.犬の臭いがこもりやすい原因

1-1.慣れてしまう臭いと来客が感じるギャップ

飼い主さんは毎日の生活の中で少しずつ臭いに慣れていきます。
例えば新しい家やアパートに入ったときに、最初はその臭いを感じても、数週間もしたら臭いを感じなくなります。

しかし久しぶりに来た友人や宅配業者などは、「玄関を開けた瞬間の空気」で印象が決まることが多くあります。

住宅設計では住みやすさは当然ですが、臭いのケアも現代の日本では必要な事です。
臭いが集中しやすい場所(玄関・リビング入り口・トイレ・犬の定位置)は、空気の流れを論理的かつ計画的につくることで印象が大きく変わります。

1-2.犬本来の臭いの要因(体臭・排泄物など)

私は動物が苦手なので、ここでは学んだことに関して話をいたします。

学んでみてわかったのは、犬の臭いにはいくつかの原因があるということです。たとえば、

  • 体表の皮脂や汗
  • 排泄物・マーキング
  • 耳・皮膚・口腔内のコンディション
  • 湿った被毛(雨の日やシャンプー後)

これらは飼い主さんの日々のケアで軽減できますが、「家側でコントロールできる部分」と「犬側のケアが必要な部分」を切り分けることが大切だと感じました。

しかし犬側のケアに関しては自分よりもっと詳しい方がたくさんいらっしゃいますので、ここでは「住宅で臭いをケアする仕組み」に焦点を当てていきます。

2.臭い対策の考え方

2-1.日本人は「臭い」に敏感な文化

日本では「無臭=清潔」という価値観が根づいています。
実際、海外から来た方が「日本人はほとんど香水をつけない」「体臭が少ない」と感じるケースも多く、日本人の嗅覚は比較的敏感だといわれています。

そのため、犬と暮らす家では「臭いに気づかれたくない」という心理が働きやすいのが特徴です。
住宅の設計では、その文化背景を理解しつつも過剰に無臭を追い求めないことが重要になります。

2-2.「完全無臭」は犬にはストレス

ただし犬は人間の数千倍の嗅覚を持っています。
人間の「心地よい香り」や「強めの消臭剤」であっても、犬にとっては強すぎる刺激となる場合もあります。

つまり「無臭の家」を目指すのではなく「臭いが溜まりにくく、自然に空気が流れる家」を目指すことが大切です。

臭いを消すというより、こもらせない・滞留させないという考え方が、ペットと暮らす家づくりでは欠かせません。

3.室内に臭いがたまりやすい場所を整理

臭い対策を効果的に考えるには、まず「どこに臭いがたまりやすいのか」を整理することが大切です。
犬自身の体臭や生活臭だけでなく、空気の流れや素材との相性によって、「臭いが定着しやすい場所」が決まってしまうケースが多くあります。

3-1.ケージ・トイレ・寝床

犬の体臭・排泄物・湿った被毛が集まりやすい場所です。
特に、ケージの奥やトイレシートの周辺・巾木まわりには空気の流れが滞留しやすく、「臭いの溜まり場」になりやすい傾向があります。

さらにケージの背面やトイレの周辺は吸気口・排気口から離れていることが多く、換気が効きにくい場所です。
設置位置・換気経路・掃除しやすい床材をセットで検討することが大切です。

3-2.布製品(ソファ・カーテン・カーペット)

布製品は臭いや湿気を吸収しやすく、時間が経つほど「臭いの貯蔵庫「になりやすい素材です。
特にソファやカーテンは面積が大きく、空気の通り道と近いため、

空気が通るたびに、臭いを再放出してしまう現象が起こります。
布製品の周辺には換気口を近づけすぎないことができると良いでしょう。

3-3.壁紙などに付着した臭い

多くの方が見落としてしまうのが、壁紙・巾木・建具への臭いの付着です。

  • 壁の表面は細かな凹凸が多く、臭いや油分が付着しやすい
  • 巾木や建具の「細い隙間「は拭き取りづらく、汚れの堆積ポイントになる
  • 換気経路の「中間点「にあるため、臭いが溜まっても気づきにくい

臭い対策では、「掃除しやすい環境」が非常に重要です。
巾木の設置方法や壁紙の選び方次第で、5年後・10年後の暮らしの快適性が大きく変わります。

3-4.掃き出し窓・勝手口などの外との境目

掃き出し窓・勝手口は、臭いの出口になりそうですが、実は「臭いの停滞ポイント「になることがあります。

理由は以下の3つです。

  1. サッシのレール部分に汚れ・毛・湿気が溜まりやすい
  2. 換気の動線上に入っておらず、空気がよどみやすい
  3. 外からの風が直接犬に当たり、興奮やストレスにつながるケースもある

そのため勝手口や掃き出し窓は、意図的に空気の流れをつくることが重要です。
掃き出し窓や勝手口のそばに換気口・サーキュレーターを設置するだけで、臭いの停滞は大きく改善されます。

4.建築士が考える換気の基本

ここからは住宅の専門視点です。
換気の方法は実は何種類もあり、「何を選ぶか」だけではなく「どこに配置するか」も重要です。

特に高さに注目をして選ぶようにすると、換気計画は上手くいきます。

4-1.「一種・三種の違い」より「排気の高さ」が換気では重要

換気方式を考えるとき、一般的には「三種換気(排気のみ機械を使用)」「一種換気(排気も給気も機械を使用)」という分類だけが注目されますが、臭いに関して「排気口が床面に近いかどうか」が最も重要です。

 

例えば掃除機は、床に直接吸い込み口を接触させてハウスダストを効率的に集めます。
一方で換気扇は床から2mも離れた位置(天井付近や壁面)にあることがほとんどです。

先ほどの掃除機の論理が正解ならば、細かな粉塵・抜け毛・臭気を積極的に吸い込むことは床から排気口が離れれば離れるほど不利であることは誰もが理解できます。

 4-1-1.臭気やハウスダストは “空気より重い”

・ハウスダスト
・抜け毛
・犬の排泄物由来のアンモニア・臭気成分
これらは空気より比重が重く、床付近に滞留する傾向があります。

つまり天井付近の換気扇では、細かな粉塵・抜け毛・臭気を積極的に排気することが難しいと誰もが理解できます。

 4-1-2.臭い対策なら床面排気

ここまで説明をさせてもらいましたが、臭い対策は床面排気が良いと言えます。

実のところ三種換気でも一種換気でも構いません。

臭いにできる限り近いところを排気することができればいいだけです。

もちろん三種換気は外気の温度が直接室内に入ってくるので、熱交換器付きの一種換気の方が人にも動物にも優しいとはいえるでしょう。

 4-1-3.床面排気の注意点

床面排気のいい部分ばかり取り上げましたが、大きな問題もあります。

汚れ(ハウスダスト・抜け毛等)に近い部分を換気するという事は、換気扇そのものが目詰まりしやすいという事です。

言い換えるなら換気扇回りを、こまめに掃除することが必要といえます。

これができないと換気扇の効果は全くなくなってしまい、むしろ臭いはこもりやすく換気がされない住空間になってしまいます。

4-2.ペットスペースそばに排気口を配置

空気は一番弱い場所・隙間にたまります。
そのため臭いの発生源となる場所近くに排気口を配置することが、最も効果的です。

これは空気清浄機との併用でさらに効果UPします。

しかし機械の運転音がうるさい場合は、犬にとってストレスになって今いますので、その点は注意が必要です。

4-3.サーキュレーターや窓の開放

実のところ換気扇だけでは、空気の流れをコントロールすることは不可能だと自分は考えています。

そのため、サーキュレーターや窓の換気を併用して空気の通り道あえてを作る事をお勧めします。

  • サーキュレーターは直接犬に当たらない位置に
  • 窓を2カ所開けて風の通り道を確保

住宅を建てる時には、風のシュミレーションなどできる場合もありますので、必要に応じて参考にしてもいいかもしれません。

ただし平面的に考えるだけでなく、高さの視点を忘れないようにして3次元で風の流れを考えるようにしましょう。

面倒くさいと思われる場合は、このような事に詳しい専門家に相談すると良いでしょう。

5.臭いが家につかない素材

臭い対策は「後から消す」よりも、「つきにくい素材にしておく」ほうが長期的にはラクです。
素材の選び方・巾木の設計は、新築やリフォームをする際には気にしておきたい項目の一つになります。

5-1.壁紙:消臭・分解・吸着機能のある商品

近年の壁紙には、臭いを吸着・分解してくれるタイプが増えています。

タイプ 特徴 注意点
吸着タイプ 臭いの粒子を吸着 飽和すると効かなくなる
分解タイプ 光や空気を利用して分解 光が届かない場所では弱い
消臭タイプ 化学反応で臭いを軽減 犬の体臭には効果が薄い場合も

重要なのは「犬の生活位置(床〜30cm)付近にこそ性能が必要」という点です。
壁の上部だけ機能性素材を貼っても効果が薄く、床に近い高さほど臭いが溜まりやすいと感じます。

5-2.床材:拭き取りやすい素材・滑りにくさとの両立

床材は「ふき取りやすさ」と「滑りにくさ」の両方が重要です。
例えばタイルカーペットやクッションフロアなどが候補として挙げられます。

ただし個体差が必ず出るところなので、様々なサンプルをもらい、実際に体感する方が間違いないと言えそうです。

5-3.巾木・建具:掃除しにくい隙間を作らない

臭いは「隙間」に溜まります。
特に巾木(壁の一番下の細い木)や、建具との境目は汚れが溜まりやすい場所になります。

  • 巾木は出っ張らせず 、フラット又は凹んだ位置に設置する
  • 建具はなるべく吊り戸等でっぱりを減らす

特に巾木の設置方法は、目立たない部分ですが、実は10年後に大きな差を生むと感じています。

6.日々の暮らしでできる「空気の整え方」

6-1.犬側のケア:ブラッシング・濡れ拭き・排泄物処理

住宅の工夫だけでなく、犬側のケアも軽めに続けることが大切です。
この辺りは専門ではないので簡潔にまとめると、

  • ブラッシングをすると皮脂や抜け毛が減り、臭いの発生源が少なくなる
  • 濡れタオルでの拭き取りは手軽な入浴代わりになる
  • 排泄物はすぐ片付けるだけでも空気環境は大きく違う

住宅の換気と組み合わせることで、ケアしすぎない自然な臭いの軽減ができると感じています。

またペット共棲住宅の様に、壁をふき取りやすいブラッシングスペース(下の写真参照)などがあると、日常のケアはもっとしやすくなるでしょう。

6-2.布製品の洗濯&定期消臭

ソファ・カーテン・ラグなどの布製品は、臭いの再放出装置になりやすいため、
定期的な洗濯と、風を通すスペースづくりが効果的です。
そしてできることなら、まとめて洗う日を決めておくと暮らしがラクになります。

6-3.空気清浄機・脱臭機

  • 空気清浄機は「空気中の臭い対策」
  • 脱臭機は「壁に付着した臭い対策」

という違いがあるそうです(勉強しました)。
どちらかではなく、「置き場所」「空気の流れ」とセットで考えることが大切です。

6-4.香りでごまかさい

香り付きのスプレーや芳香剤で臭いを覆う方法は、犬にとっては強い刺激になることもあります。
住宅視点では、「香りを足す」のではなく「空気の通り道をつくる」ことが本質的と考えています。

7.まとめ

臭い対策は「消臭のテクニック「ではなく、住宅設計・素材選び・空気の流れ・日常の習慣が組み合わさった「暮らし方の設計」だと思っています。

一つ一つの工夫は小さくても、「臭いがつきにくい家・こもらない家」は、建て方次第で確実に実現できます。

ただしこまめに続けていかないと、臭いはついてしまいます。

日々の努力こそが、最も重要な臭い対策なのかもしれません。

 

今回のブログが皆様のお役に立てれば、これほどうれしいことはありません。

最後まで目を通して頂き、ありがとうございました。

7-1.執筆者プロフィール

野島建設株式会社 代表取締役社長 野島比呂司

一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員

 

富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒

地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。

会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。

2024年の能登の震災による仮設住宅建設にも尽力。その際に人と愛玩動物とのかかわりについて考え、ペット共棲住宅の重要性を実感。

 

投稿日 2025年12月20日

 

~温かい人が集まる暖かい家 NOJIMAのゼロ・ハウス~

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