シロアリとは シロアリ駆除とシロアリ対策 一級建築士が推奨する長期保証とは
2025年03月01日
シロアリは虫歯と同じようなもので、対策をしておけば本来は恐れるものではありません。
しかし対策が不十分であるとか、無知であることで大きな問題に発展することがあります。
今回の内容が少しでもお役に立てるのであれば幸いです。
1.シロアリとは
1-1.語源
シロアリの語源については諸説あり、以下の説が有力と言われています。
「アリのような生態系を持ち、見た目が白いアリに見えるから」
シロアリはアリと同様に社会性の昆虫で、集団で生活し、働きアリや兵隊アリなどの階級に分かれます。
アリと同様に巣を作り、木材などを食べて生活する様子が似ていることから、「白いアリ」という意味で「シロアリ」と呼ばれるようになったと考えられています。
1-2.シロアリとアリ(黒蟻)の違い
シロアリとアリ(黒蟻)は、名前が似ているので同じような系統だと思われますが、実は全く異なる種類の昆虫です。
主な違いは以下の通りです。
【分類】 シロアリはゴキブリ目、アリはハチ目
【体の特徴】 シロアリは胴体がくびれておらず、触角が直線状であることが多い。アリは胴体がくびれており、触角が曲がっていることが多い。(下図参照)
【食性】 シロアリは木材を主食とする。アリは様々なものを食べる。
【巣】 シロアリは土中や木材の中に巣を作る。アリは土中や樹上に巣を作る。
【羽生の時期】シロアリは主に4~5月。アリは主に6~7月。
シロアリとアリのイメージ図
1-3.巣
シロアリは土中や木材の中に複雑な巣を作り、その中で生活します。
巣の中には、女王アリの部屋、卵室、幼虫の部屋など、様々な部屋が作られています。
1-3-2.コロニー
コロニーとは、家族単位という事になります。
そしてコロニーが集まったものが、巣になります。
シロアリの一つのコロニーによる生息範囲は、シロアリの種類や、そのコロニーの大きさ、周辺の環境などによって大きく異なります。
一般的に、シロアリのコロニーの生息範囲は、数メートルから数十メートル程度とされています。
特に大きなコロニーの場合には、数百メートルに及ぶこともあると言われています。
◇シロアリのコロニーの広がり方
シロアリは、巣から放射状に蟻道を作り、食料となる木材を求めて移動します。
蟻道は土中や木材の中に作られ、目に見えないため、シロアリの活動範囲を把握するのは困難といえます。
1-4.生息範囲
シロアリの生息範囲は家の付近だけと、一般的には思われています。
しかし生息範囲は数mから数百mになる事もあり、広範囲で生息をする場合があります。
そして生息範囲を知ることは、以下の点で重要です。
◇被害の拡大を防ぐ
シロアリの活動範囲を把握することで、被害の拡大を防ぐための適切な対策を講じることができます。
◇駆除範囲を決める
シロアリの駆除を行う際には、活動範囲全体に薬剤を散布する必要があります。
◇予防対策を立てる
シロアリの侵入経路を特定し、予防対策を立てることができます。
1-5.好きな環境
湿気を好み、暗く静かな場所を好んで生活します。そのため、家屋の床下や壁の中など、人が気づきにくい場所で活動することが多いです。
逆の表現をすると、シロアリが嫌いな環境を作り出すことができれば、シロアリは住み着きにくくなります。
1-6.社会性と寿命
シロアリはミツバチのように女王とその他大勢とが分かれ、社会性を持って生活しています。また寿命も異なり、女王アリは長生きする傾向があります。
【女王アリと王アリ】
群れのリーダー的存在で、産卵と繁殖を担当します。女王アリは生涯にわたって卵を産み続け、コロニーを拡大させます。
女王アリの寿命は非常に長く、10年~20年、場合によっては30年近く生きる個体もいます。女王アリは、コロニーの繁殖を担う重要な役割を担っているため、長生きすることで、コロニーを安定的に維持することができます。
王アリの寿命は、女王アリほど長くはありませんが、数十年生きる個体もいます
【働きアリ】
巣作り、食料の調達、幼虫の世話など、コロニーの維持に必要なあらゆる仕事を担います。寿命は五年ほど
【兵隊アリ】
大きな顎や突き出た頭を持ち、外敵から巣を守る役割を担います。寿命は5年ほど

30年以上生き続ける場合がある女王アリ
1-6-2.寿命が長い理由
シロアリの寿命が一般的なアリや昆虫と比較して長い理由は、以下の点が考えられます。
◇安定した環境
の中で、一定の温度と湿度が保たれた安定した環境で生活しているため、寿命が長くなると考えられています。
◇役割分担
各個体がそれぞれの役割を分担することで、効率的に活動し、長生きできるようになっていると考えられます。
◇遺伝的な要因
シロアリは、長生きするために適応した遺伝子を持っていると考えられます。
シロアリの寿命が長いということは、一度家屋に侵入されると、長期間にわたって被害が拡大する可能性があることを意味します。
1-7.フェロモンの種類
シロアリは目があまり発達しておらず、視覚よりも化学物質であるフェロモンを頼りに生活しています。フェロモンは、シロアリの種類や状況によって、様々な役割を果たしています。
シロアリはフェロモンを出し、仲間とのコミュニケーションをとっています。
◇性誘引フェロモン
羽アリが交尾相手を探すために出すフェロモンです。
◇道しるべフェロモン
働きアリが餌場や巣への道を仲間へ知らせるために出すフェロモンです。
◇警報フェロモン
危険を感知した際に、他のシロアリに知らせるためのフェロモンです。
◇階級分化調節フェロモン
シロアリの社会では、女王や王、働きアリなど、それぞれの役割が決まっています。
このフェロモンがその役割分担を維持するのに役立っています。

フェロモンで効率良くコロニーを管理します
1-7-2.フェロモンの役割
◇効率的なコミュニケーション
シロアリはフェロモンによって、視覚に頼ることなく、迅速かつ正確に情報を伝達することができます。
◇社会性の維持
シロアリの高度な社会性はこのフェロモンによるコミュニケーションがあってこそ成り立っています。
◇コロニーの拡大
新しい巣を作る際や、食料を探す際など、コロニーの拡大に重要な役割を果たしています。
◇フェロモンを使用したシロアリ駆除
シロアリのフェロモンは、駆除の際に利用されることもあります。
例えば、フェロモンを模倣した物質を使って、シロアリをおびき寄せたり、逆にフェロモンを遮断することで、シロアリの行動を妨害したりするといった方法が研究されています。
1-7.シロアリの羽化
シロアリはある時期(4月から5月ごろ)になると、女王アリと王アリになるための新しい巣を作るために、羽を生やして飛び立ちます。
この現象を「羽アリの発生」と言います。
羽化する理由は2つあります。
【新しいコロニーを作るため】
羽化したシロアリは、新しい女王アリと王アリとなり、別の場所で新たな巣を作り、コロニーを拡大します。
【遺伝子を広げるため】
新しいコロニーを作ることで、遺伝子をより広範囲に広げることができます。
1-7-2.シロアリとアリ(黒蟻)の羽化の違い
あまり知られていませんが、アリも羽が生えます。
そのため家の中で羽アリを見ると、シロアリと思われることが多々あります。
小さいので区別がつきにくいですが、いくつかの違いがあります。
【体のつながり】シロアリは羽が体から簡単に外れる。アリは羽が体としっかりつながっている。
【体の色】シロアリは白っぽい。アリは黒っぽい。
【体の形状】シロアリはくびれがない。アリはくびれがある。
【羽の長さ】シロアリは体に対して長い。アリは体に対して短い。
【羽生の時期】シロアリは主に4~5月。アリは主に6~7月。

上がシロアリの羽化したイメージ図。下が黒蟻が羽化したイメージ図。
1-8.蟻道(ぎどう)
シロアリは、地中から木材へと移動する際に、土や分泌物を固めて作ったトンネル状の道(蟻道)を作ります。壁や床などに、写真のような土の盛り上がりや線状の跡が見られることがあります。シロアリが蟻道を作るのは、乾燥を嫌い、暗くて湿った環境を好むという習性と深く関係しています。
またイエシロアリの蟻道はヤマトシロアリの蟻道と比較し、幅が広いことも特徴の一つです。
蟻道は、シロアリにとって以下の役割を果たしています。
【乾燥を防ぐ】
蟻道は、土や木片などを混ぜて作られます。この蟻道を通ることで、シロアリは乾燥した空気から身を守り、常に湿った状態を保つことができます。
【光を遮断する】
シロアリは光を嫌い、暗闇で活動します。蟻道は、光を遮断する役割を果たし、シロアリが安全に移動できる環境を提供します。
【外敵から身を守る】
蟻道は、シロアリの巣と食害する木材の間を繋ぐトンネルのようなものです。この蟻道の中にいれば、他の昆虫や鳥などの外敵から身を守ることができます。
【湿度を保つ】
蟻道は、シロアリが活動するのに適した湿度を保つ役割も果たします。
蟻道を作ることで、シロアリは効率的に食料にたどり着くことができ、安全かつ効率的に到達するための通路となります。
【コロニーを拡大する】
新しい食料源を見つけたり、新しい巣を作ったりする際に、蟻道はコロニーの拡大に役立ちます。
蟻道があることで、シロアリは多くのメリットを享受します。シロアリの拡大を防ぐためにも、蟻道を見つける事は重要といえます。
しかしシロアリは専門家でないと、簡単に見つける事はできません。
定期的に専門家のチェックをしてもらうことが望ましいと言えます。

基礎部分のコンクリートに土が張り付いている部分が蟻道
1-9.食害
シロアリは木材を主食とし、セルロースを分解する能力を持っています。
そのため、家屋の柱や梁などを食い荒らし、大きな被害をもたらすことがあります。
これが一般的に考えられるシロアリの被害になります。
【木材の内部が空洞化】
シロアリは木材の柔らかい部分(年輪の間など)を好んで食べ、内部を空洞化させます。そのため、木材を叩くと空洞音がすることがあります。
1-9-2.シロアリの食害似た被害
シロアリの食害と、木材の腐朽や他の害虫による被害を混同してしまうことがあります。以下の点を参考に、見分けるようにしましょう。
◇カビや菌による木材の腐朽
水分が多い環境で、木材がカビや菌によって分解される現象です。シロアリのように内部が空洞化するわけではありません。
◇カメムシやゴキブリ
他の害虫も木材を食い荒らすことがあります。
しかし、シロアリのように大規模な被害を与えることは少ないのが特徴です。
当然蟻道を作ったりしませんし、内部を空洞化させたりすることはありません。
2.ヤマトシロアリ
現在日本には外来種(アメリカカンザイシロアリ)など多くのシロアリが生息していると考えられていますが、基本的に大きく分けて二種類のシロアリが存在します。
その一つ目であるヤマトシロアリについて解説をしていきます。
2-1.生息分布
ヤマトシロアリは寒さに強く、ほぼ日本全国に分布します。
北陸地方で見つけられるシロアリは、基本的にこのヤマトシロアリになります。
2-2.巣の範囲と構造
◇生息範囲
一般的に直径1メートル前後と考えられ、生息範囲はあまり広くはありません。
この後説明するイエシロアリと比べて、生息範囲は狭いと言われています。
◇巣の構造
イエシロアリの巣と比較して、巣は比較的単純な作りをしています。
2-3.蟻道の特徴
ヤマトシロアリの蟻道は小指程度の細いものです。
イエシロアリのように蟻道の中に複数の道があるのではなく、蟻道1本に対し1つの道しかありません。
2-4.食害の特徴
ヤマトシロアリの食害は、木材に湿った土や砂がついたような汚い見た目になる事が特徴です。
その理由の一つとして、ヤマトシロアリはイエシロアリと比較して、水分の持ち運び能力が低いからと考えられます。
そのため、エサとなる木材そのものに水分や湿気がある状況を好みます。

食害を受けた大黒柱の根本の写真
3.イエシロアリ
3-1.生息分布
イエシロアリは、主に暖かい地域に分布し、乾燥した木材も食べることができます。
以前は北陸地方には存在しないと考えられていましたが、温暖化の影響もあり、生息地の北限が北陸地方や東北地方まで上がってきたともいわれています。
3-2.巣の範囲と構造
◇生息範囲
一般的に直径1メートルを超え、場合によっては直径数メートルに達する場合があります。
◇巣の構造
イエシロアリの巣の構造は、その複雑さから「シロアリの地下宮殿」とも呼ばれることがあります。
本巣と分巣があり、それらを蟻道で繋いだ大きな構造になっています。
【本巣】
地中に作られる、コロニーの中心となる巨大な巣です。
女王アリや王アリが住み、卵を産み育てる場所であり、コロニーの生命線となります。
巣材は、シロアリの唾液と土、排泄物を混ぜ合わせたもので、非常に硬く丈夫な構造になっています。
巣の中には、育児室、貯蔵室、通路などが複雑に張り巡らされています。
【分巣】
本巣から伸びる蟻道(ぎどう)の途中に作られる、小さな巣です。
食料となる木材の近くに作られ、働きアリが生活し、木材を食べて巣に持ち帰ります。
3-3.蟻道の特徴
イエシロアリの蟻道は幅が広いことが一般的です。
蟻道の中に複数の道があり、シロアリの行き来が容易な作りになっていることが特徴です。
3-4.食害の特徴
ヤマトシロアリの食害は、ヤマトシロアリのように水分を含んだ食害ではなく乾燥しています。
そのため見た目はバームクーヘンの茶色い部分を残し、白い部分を食べたような見た目になります。
これが可能な理由は、イエシロアリは水分の持ち運び能力が高いためと考えられます。
4.シロアリ対策
シロアリは非常に強い生き物のように想像されますが、苦手なものが多く、様々な対策法があります。
誰でもできるものから、専門性が高いものまで様々あり、それらを紹介いたします。
4-1.苦手な環境
シロアリは、いくつかのものに強い嫌悪を示します。
◇光と乾燥
シロアリは暗く湿った場所を好みます。
逆の言い方をしたら光があふれ、乾燥している空間は苦手といえます。
◇高温
シロアリは高温に弱く、50℃以上の高温では死滅します。
◇特定の香り
シロアリは、以下の香りを嫌うと言われています。木材や土壌に散布することで、シロアリの侵入を防ぐことができます。
【ハッカ】
ハッカに含まれるメントールは、シロアリの忌避効果があると言われています。ハッカ油を薄めてスプレーしたり、ハッカの植物を近くに置くことで、シロアリを寄せ付けにくくすることができます。
【シナモン】
シナモンに含まれるオイゲノールやシナムアルデヒドは、防虫効果があります。シナモンオイルを薄めてスプレーしたり、シナモンの粉末を散布したりすることで、シロアリを忌避することができます。
【唐辛子】
唐辛子のカプサイシンは、シロアリを忌避する効果があると言われています。
4-2.住宅におけるシロアリ対策の3つのキーワード
日本の住宅のシロアリ対策は「エサ(木材)」「風」「湿気」の3つがキーワードになり、これらの条件をうまく組み合わせシロアリ対策をすることになります。
例えばシロアリが好きな「風が無く、湿気のある空間」であっても、「エサが無い」条件では生息できません。
ここでは一般的な木造住宅におけるシロアリ対策を詳しく説明させていただきます。
ただし、シロアリは光に関しても苦手ですが、住宅の場合どうしても日陰を無くすことは不可能ですので光に関しては除外しています。
4-3.換気による対策
シロアリは湿気のあるところを好みます。
住宅における湿気のある場所は、特定された場所(風呂とか床下等)ではなく、実は空気が動かない場所が大きな問題になります。
そのため空気が常に動いている状況は、湿気対策ができている事とほぼ同義になります。
下記には住宅における一般的な床下の換気について改正つをしていきます。
4-3-2.自然換気(基礎パッキン・床下換気口)
基礎回り(床下)の換気は、自然の風を使うことが一般的です。
その中でも一般的に採用されている二つについて紹介していきます。
◇基礎パッキン
図のように基礎と土台の間にパッキンとよばれる樹脂板を挟み込み、通気層を確保する方法です。
しかしこの工法は
・風が弱い地域や時期は換気が進まない
・一部の空気は動きにくく淀みやすい
このようなことが発生するため、後述する機械換気なども併用する方が安全な基礎回りの環境をつくり出せます。

木材とコンクリートの間に見える黒いものが基礎パッキン材
◇床下換気口
基礎を見ると、写真のように立ち上がり部分に設けられた開口部から空気を出し入れする方法です。
比較的安価な方法ですが、しかし図を見ると分かるように、
・周囲の影響で風が複雑な動き方をする場合があり、換気が不足する場合がある
・一部の空気は動きにくく淀みやすい
・換気口が風化した場合、ネズミなどの害虫が出入りできる
以上のような問題点があります。

雪国にはあまり適さない床下換気口
三次元的に考えると、基礎パッキンも床下換気口も対策としては不十分な場合があります。
各住宅の条件(風や家の大きさ等)によって気にする個所は異なりますので、日々の点検を怠らないようにすることが望ましいと言えそうです。
4-3-3.機械換気(強制換気)
基礎断熱などをしている住宅では、機械を使用した換気が一般的です。
また先ほどの自然換気だけでは不十分な場合には、家の吹き溜まりを無くすための空気循環機械を取り付けて対策をします。
空気をかくはんするための専用の換気扇を取り付ける場合もあれば、ただの換気扇を取り付けている場合もあります。
換気量が計算できる点がメリットですが、自然換気と比べ電気代や換気扇購入費用が必要になる点がデメリットといえそうです。
4-4.薬剤が不要な木材
シロアリは全ての木材を食べるわけではなく、苦手な木材も存在しています。
一般的に流通量が多く、入手しやすい木材2種類について解説をしていきます。
◇ヒバ
建築業界ではヒバは一般的なものですが、建築業界以外の方にはアスナロと呼ぶ方がピンと来るかもしれません。
強度が高いだけでなく、ヒノキチオールと呼ばれるシロアリが苦手とする成分を含んだ木材であることも特徴です。
能登ヒバや青森ヒバなどが国産では有名ですし、米ヒバと呼ばれる北米からの輸入材も多く流通しています。
◇ヒノキ
高級木材のイメージがありますが、実はそこまで高級木材ではなく一般的な価格帯の木材です。
価格の面や強度の面でバランスが取れた木材といえます。
国産では木曾ヒノキなどがブランドとして有名です。
4-5.シロアリ用薬剤
住宅ではヒバやヒノキ以外でも、杉やホワイトウッド等多くの木材が住宅用として流通しています。
それらはシロアリが好む木材であることが多く、対策をした場合に限り住宅用として許可されています。
その方法はシロアリが苦手とする薬剤をするもので、
◇薬剤塗布
◇木材に浸透(乾式・湿式)
◇土壌処理
これらがあります。
しかし木材に薬剤を注入する方式は、過去20年現場を見てきた人間から言わせれば
▲木材は施工後割れる事もあり、結局薬剤がついていない部分が露出することが多々ある
▲現場での作業中傷がついたり切ったりすることもあるため、薬剤がついてない部分が露出することが多々ある
▲薬剤が必要な木材は基本的に密度が低く、家を支えるための強度不足になりやすい木材を使用されることが多い
▲薬剤が半永久的に続くわけではないので、10年後や20年後有償のメンテナンスが必須になる
以上のように問題が複数もあり、結局のところ写真のようにシロアリに食べられてしまう土台を見ることが何度もありました。
自分としては望ましい方法とは決して言えないと思っていますが、工法として存在し法律上OKとなっているため、これらについて説明させていただきます。

シロアリ用の薬剤が注入されていても食害を受けた木材
4-5-2.薬剤噴霧(薬剤塗布)
ひと昔前ならこれが最も一般的なシロアリ対策でした。
しかし施工ムラが発生しやすく、自分が知る限りですが現在はほぼ採用されていないと思います。
ただし施工ムラが無く工事できるのであれば、安価に対策ができる特徴があります。
4-5-3.乾式加圧防蟻処理
木材の防蟻処理は乾式と湿式の二つがあります。
どちらも大きな窯で圧力をかけて、あらかじめ加工した木材に薬剤を注入します。
湿式と比較して、乾いた状況で木材に薬剤を注入するため木材の乾燥が保たれます。
しかし薬剤の効果に大きな違いは無く、保証も同じ程度になっています。
4-5-4.湿式加圧防蟻処理
乾式の防蟻処理と同じように、木材を窯に入れてシロアリ用の薬剤を注入します。
薬剤の注入時が湿っているか乾いているかの違いくらいしか違いはありません。
しかし実際に乾式より湿式の防蟻処理の方が薬剤の色が付くので、どこまで薬剤が注入されたかわかりやすいと言えます。
4-5-5.土壌処理
土壌処理はシロアリの侵入経路となる土壌に直接薬剤を散布し、シロアリの活動を阻止する方法です。
土壌処理のメリットとしては、予防効果が高く比較的安価に広範囲の処理ができる点が挙げられます。
デメリットとしては雨が降るような外気の場所の場合は、薬剤の効果が薄れやすいため頻繁に処理が必要になる点が挙げられます。
◇ベイド工法
ベイト工法はシロアリの生態を利用した駆除方法です。
シロアリが好むセルロース(木材成分)を主成分としたベイト剤(毒餌)を特殊な容器に入れて土中に設置し、シロアリに食べさせます。
シロアリはベイト剤を巣に持ち帰り、仲間と共有することで、巣全体に薬剤が拡散され、最終的にコロニーごと駆除できるという仕組みです。
また薬剤を噴霧するわけではないため、健康被害が少ない点も特徴です。
デメリットは効果が出る(シロアリの駆除)までに時間がかかる点が挙げられます。
4-6.薬剤の健康被害
シロアリ用の薬剤を用いる事で、最も怖いことが健康被害だと思います。
昔は亜ヒ素を使っていて、昔は町内の祭りのカレーにこれを入れ社会問題になったことがありました。
しかし最近のシロアリ用の薬剤は、農薬取締法に基づいて登録されています。
人体への影響が少なく、安全性が高いものが使用されます。
ただし人体に全く無害というわけではありません。
施工業者からの指示に従い、換気など、必要な注意事項を守ることが重要です。
特に小さなお子様やペットがいるご家庭では、十分に注意してください。
健康被害を気にされる方は薬剤を使用しない木材の方が無難と言えます。
ただしヒバやヒノキの自然素材も、環境によって毒性を持つことがあるので過信は禁物です。
※ 実際に新品のヒノキ風呂に入って、ヒノキの成分で目が刺すように痛くなるなどの症状が出る事を聞いたことがあります
4-7.AIR LOOP SYSTEM(基礎一体打ち+壁体内通気)
一般的な基礎回りや木材周りの話をさせていただきましたが、これらを包括的にクリアしているのが野島建設の独自工法のAIR LOOP SYSTEMです。
この工法はシロアリ対策として安全な基礎一体打ちと呼ばれる基礎を使用し、そのうえで床下も壁の中も室内と同様の空気が動く仕組みです。
この工法により、シロアリが生息するために必要な湿気が排除され、シロアリが生息しにくい環境が創られています。
本来はAIR LOOP SYSTEMは、効率的に家を暖めたり冷やしたりするために考えられた工法なのですが、副産物としてシロアリの生息にしにくい仕組みになりました。
これはシロアリの薬を使わずに対策ができるため、薬剤汚染の心配もない工法になります。
具体的な説明は旧名のSRシステムの動画がありますし、さらに詳細に聞きたい場合は野島建設の担当者にご確認ください。
AIR LOOP SYSTEM(旧名:SRシステム)の解説動画↓
5.シロアリを見つけてしまったら
シロアリを見つけてしまったら、家がすぐに食い荒らされ、家が倒壊するイメージを持たれる方もいます。
しかしそのようなことはなく、まずは落ち着いて対応することが重要です。
ただしシロアリを見つけてしまった場合、虫歯と同様に放置をしていても状況は改善はされません。
そのため駆除が必須であることも、合わせて覚えておきたいことになります。
5-1.現状把握をする
シロアリを発見したら、気が動転するかもしれませんし、とても気持ちが悪くなることは理解できますが、まずは現状を把握しましょう。
日常生活を送っていてシロアリを発見するのは、ほとんどの場合羽化して床上(一般的に水回り)に現れたことによる発見です。
それ以外には、床下の点検をしていてたまたま蟻道を発見した等が考えられます。
シロアリがいると分かった場合は、駆除が必要です。
5-2.自分で駆除する場合
前提としてシロアリの駆除は、自分で駆除することも不可能ではありません。
自分で駆除する場合のメリットは、圧倒的に費用が安く済みます。
しかしデメリットは複数あり、ちゃんと駆除できることは難しいと認識しましょう。
◇自分で駆除する際のデメリット
【被害の全容把握が難しい】
シロアリは、木材の中や土中に巣を作るため、目に見えない部分にまで侵食していることがあります。
素人では被害の全容を把握するのが難しく、駆除が不完全になってしまう可能性があります。
【適切な薬剤選定が難しい】
シロアリの種類や被害状況によって、使用する薬剤が異なります。
適切な薬剤を選べないと、駆除効果が得られないばかりか、家屋に悪影響を及ぼす可能性もあります。
【作業が困難】
床下や壁の中など、作業しにくい場所での駆除が必要になる場合もあります。
専門的な知識や技術が求められるのに、薬剤用の防護服なども必要となるため、素人には難しい作業です。
【再発のリスク】
駆除が不完全な場合、再びシロアリが発生する可能性があります。
5-3.専門家に駆除を依頼する
専門家と言っても、詳しく分類すると複数の依頼先があります。
その際に選定の基準になる事として挙げられるのは、「使用する薬剤」「工期」「駆除の方法」「保証」「費用」「直接依頼か間接依頼」このようなものが選定基準になります。
各項目について解説をいたします。

費用面で高ついてもプロに任せるほうが安心です
5-3-2.薬剤と有効期間
薬剤に関しては、「ピレスロイド系薬剤」「フロプリストロール系薬剤」「ネオニコチノイド系薬剤」などがあります。
依頼する業者さんの得意とする薬剤や、被害状況によって使用する薬剤は変わってきます。
そのため簡単に概要を示しますが、詳しくは専門家の推薦する方法にて駆除をする方が望ましいと言えそうです。
【ピレスロイド系薬剤】
ピレスロイド系の薬剤は、即効性がありシロアリに対して強力な殺虫効果を持っています。
この薬剤は木材に直接注入することができ、内部に潜むシロアリにも効果を発揮します。
ただし持続性には限界があるため、再処理が必要になる場合があります。
◇工事期間
一般的な戸建て住宅の場合は削除完了まで、1〜2日程度で完了することが多いです。
多くの被害や構造の複雑な建物の場合:3〜4日かかることもあります。
【ネオニコチノイド系薬剤】
ネオニコチノイド系薬剤は、シロアリの神経系に作用してゆっくりと駆除するため、即効性はありませんが、長期的な効果が期待できます。
木材内部に浸透したシロアリにも効果的です。
残効性が高いことから、木材の防虫対策にも適しています。
【フロプリストロール系薬剤】
新しいタイプの薬剤で、シロアリの活動を阻害し繁殖を防ぐ効果が期待されています。 この薬剤も木材内部に浸透しやすく、持続的な効果を発揮する特徴があります。
【薬剤注入木材の有効期間】
使用する薬剤の種類や量、被害状況によって、効果の持続期間は異なります。
一般的に10年程度が薬剤の効果が期待できる期間として考えられていますが、状況によって異なりますので目安としておく方が良いと言えます。
5-3-3.駆除後の保証
シロアリの駆除をした後、ほぼ保証がついてきます。
一般的には5年の保証が多いようですが、業者さんによって内容が異なる場合がありますので、その業者さんに確認をした方が良いでしょう。
また長期保証を売りにしている場合は、数年後の有償の点検が必要などの条件を付けている場合がありますので、注意が必要です。
5-3-4.費用
費用面は「被害の程度」「構造」「駆除の方法」「業者の種類」「追加工事の有無」によって異なります。
◇被害の程度
被害の範囲が広いほど駆除に時間がかかり、使用する薬剤も多くなるため、費用も高くなります。
◇建物の構造
木造か鉄筋コンクリートか、築年数などによって施工方法が異なり、費用も変わってきます。
◇施工方法
薬剤散布、土壌注入、ベイト工法など、様々な施工方法があり、それぞれ費用が異なります。
◇業者の種類
大手業者、地域密着型業者など、業者によって料金体系が異なります。
またホームセンターが窓口になっていて、結局シロアリ専門業者が来る場合などもあります。
可能であればだれが作業をするかを確認すると、良いかもしれません。
◇追加工事の有無
床下点検口の設置や、被害部分の補修が必要な場合、追加費用が発生します。
【一般的な費用相場】
一般的にシロアリ駆除の費用は一階の床面積で大きく異なりますが、10万円から30万円と結構幅があります。
しかも実際の費用は、被害の状況によって大きく異なってしまいます。
気になる場合は複数の見積りを取った方が、安心と言えるかもしれません。
5-3-5.費用を安くするには
複数の業者から見積もりを取り、価格に関して質問をする方法があります。
後はあまり知られていない方法として、秋や冬に工事を依頼する方法です。
シロアリ駆除の専門業者になると、春から夏にかけて仕事が多く(シロアリが羽化し発見されやすいため)秋や冬は閑散期になります。
そのためしっかり工事もしてくれますし、値段の交渉もしやすいと考えられます。
【安すぎる業者を選ぶのは危険】
ただし安すぎる業者を選ぶと、以下のリスクがあります。
・施工が不十分で、再発する可能性がある
・使用される薬剤が劣悪である可能性がある
・アフターサービスが不十分である可能性がある
・工事を始めてから(または工事完了後)追加請求をしてくる
費用と品質のバランスを考え、信頼できる業者を選びましょう。
特に地元で10年以上シロアリ駆除を専門にしている会社であれば、悪徳であることはないと考えられるので、比較的安心と言えるかもしれません。
6.新築時の保証
下記の情報は、住宅を新築した場合の保証について説明になります。
6-1.長期保証の詳細
長期保証は具体的には数個に分類されます
◇家全体の保証
新築住宅の場合、家全体に長期保証(10年保証等)が必ずついています。
有償で延長できるなど、会社によって取り扱いは大きく異なるので、気になる場合は確認すると良いでしょう。
◇薬剤処理した木材の保証
薬剤処理した木材のみの保証は、木材を加工した会社が保証することになります。
しかし窓口は新築住宅の場合は、家を建てた会社になりますので、あくまでこのような場合がある事だけ知っておけば十分だと思います。
◇点検の有無
長期保証を受ける場合には、点検を必須としている場合がほとんどです。
そしてその点検で修繕が必要と判断された場合、全て修繕しないと保証の延長をしてくれません。
無料の長期保証部分が何年で、それ以降は有償点検であるかなどは、新築する会社に確認すると良いでしょう。
6-2.野島建設の20年の長期保証
野島建設は点検不要かつ追加工事不要の、シロアリ被害20年保証を実施しています。
多くの場合有償の点検やメンテナンスが10年後必要なのですが、お客様の負担が出ないよう追加工事不要の20年保証を標準としています。
それが実現できるのは、日本だけではなく世界的に安全性が担保された商品を間違いなく施工できることによって実現されています。

全国的に見ても珍しいシロアリ20年の長期保証
7.最後に
冒頭に書いたようにシロアリは虫歯と同じで、対策をしておけばそこまで恐れるものではありません。
しかし対策が十分だからと言って、点検をおろそかにしていいわけでもありません。
万が一もありますので、年に一度は床下の確認や基礎回りの点検がお勧めです。
ぜひこの内容が皆様にとって、少しでも何かの役に立つようであれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
7-1.執筆者プロフィール
野島建設株式会社 代表取締役社長
野島比呂司
一級建築士 宅地建物取引士 増改築相談員
富山県出身 近畿大学理工学部建築学科卒
地元のハウスメーカーに就職後、2007年野島建設に入社。
会社の2代目として仕事をするだけでなく、自分でも会社を創業。野島建設として1000棟を超える施工実績があり、富山県の市町村単位では複数回の着工数1位の獲得経験あり。
今回使用した写真の大半は、執筆者の撮影によるものであり、実際に目にしたシロアリ被害の状況になります。
投稿日 2025年3月1日
~温かい人が集まる暖かい家 NOJIMAのゼロ・ハウス~
野島建設 YouTubeチャンネル↓
https://www.youtube.com/channel/UC8SrIw-v-S3d1F0ZXz_P0A?view_as=subscriber
野島建設HP https://nojima-k.jp/
野島建設TEL 0765-24-6330
野島建設住所 937-0806 富山県魚津市友道390-1